採血で何がわかる?健康診断の血液検査項目と異常値の見方

健康

健康診断の採血検査は、私たちの健康状態を知るための最も重要で効果的な検査方法の一つです。血液は体内のあらゆる部分を循環し、各臓器の状態を詳細に反映するため、採血による血液検査によって多くの病気や健康上の問題を早期に発見することができます。現代医療において、血液検査は肝機能、腎機能、糖尿病、脂質異常症、貧血、感染症、炎症性疾患など、幅広い疾患のスクリーニングと診断に活用されています。血液に含まれる細胞や酵素、抗体、ホルモンなどの数値を測定し、基準値と照らし合わせることで、病気の診断や将来的な発症リスクを評価できるのが大きな特徴です。一年に一度の定期健診では同じ項目を継続的に検査するため、年齢による変化や生活習慣の影響も把握でき、早期発見・早期治療につながる貴重な情報源となっています。

Q1: 健康診断の採血検査ではどんな項目を調べるの?主要な検査項目を教えて

健康診断の採血検査では、肝機能検査脂質検査血糖値検査血球系検査(CBC)炎症反応マーカー電解質検査腎機能検査甲状腺機能検査腫瘍マーカーなど、多岐にわたる項目を調べることができます。

肝機能検査では、ALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPなどの酵素を測定し、肝臓の健康状態を評価します。これらの数値が高い場合は、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、アルコール性肝炎などが疑われます。特にγ-GTPはアルコールに反応しやすく、常飲者では値が高くなる傾向があります。総タンパクやアルブミン、総ビリルビンなども肝機能評価の重要な指標となります。

脂質検査は生活習慣病の代表的なスクリーニング検査で、中性脂肪、HDLコレステロール(善玉)、LDLコレステロール(悪玉)、Non-HDLコレステロールを測定します。これらの数値は動脈硬化の進行度や心血管疾患のリスクを評価する重要な指標となります。

血糖値検査では、空腹時血糖値とHbA1c(ヘモグロビンA1c)を測定し、糖尿病の診断や血糖コントロール状態を評価します。HbA1cは過去1~2ヵ月間の血糖値の平均を反映するため、検査当日の状態に左右されない優れた指標です。

血球系検査(CBC)では、赤血球数、白血球数、血色素量(ヘモグロビン)、ヘマトクリット値、血小板数などを測定し、貧血、感染症、血液疾患の有無を調べます。この検査は初診時に必ず行われるスクリーニング検査として位置づけられています。

Q2: 肝機能検査(ALT・AST・γ-GTP)の数値からわかることは?異常値の原因も知りたい

肝機能検査の主要項目であるALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPの数値から、肝臓の健康状態や様々な肝疾患を発見することができます。日本人間ドック学会によると、ALT・ASTともに30 IU/L以下が正常値とされています。

ALT(GPT)は主に肝臓に存在する酵素で、肝細胞が損傷を受けると血液中に漏れ出すため、肝臓特有の異常を示す指標として重要です。一方、AST(GOT)は肝臓のほか心臓や筋肉にも存在するため、これらの臓器の異常でも上昇します。両方の数値が高い場合は肝臓の問題が強く疑われますが、ASTのみが高い場合は心筋梗塞や筋肉の損傷なども考慮する必要があります。

γ-GTPは抗酸化物質グルタチオンを分解する酵素で、肝臓や胆道系の異常で上昇します。特にアルコールに非常に敏感に反応するため、飲酒習慣のある方では高値になりやすい特徴があります。禁酒により数値が改善することが多く、アルコール性肝障害の診断に重要な指標となります。

これらの数値が異常を示す主な原因として、急性肝炎慢性肝炎脂肪肝アルコール性肝炎肝硬変肝臓がん薬剤性肝障害などがあります。近年特に問題となっているのは、生活習慣の変化により増加している非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)です。

軽度な肝機能異常や脂肪肝だからといって軽視してはいけません。脂肪肝炎の場合、炎症が持続すると肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性があります。症状がないからといって安心せず、健康診断で肝機能の数値に異常があった場合は必ず医療機関で精密検査を受けることが重要です。早期発見・早期治療により、多くの肝疾患は進行を防ぐことができます。

Q3: 血液検査で生活習慣病(糖尿病・脂質異常症)はどのように発見できるの?

血液検査は生活習慣病の早期発見において極めて重要な役割を果たします。糖尿病脂質異常症は、自覚症状が現れる前に血液検査で異常値として検出できるため、定期的な健康診断が予防と早期治療の鍵となります。

糖尿病の発見には、空腹時血糖値HbA1c(ヘモグロビンA1c)の測定が基本となります。空腹時血糖値の基準値は70~99mg/dLで、100~125mg/dLは糖尿病予備軍(要注意)、126mg/dL以上は糖尿病の可能性が高いとされます。HbA1cは5.5%以下が基準値で、この検査の最大の利点は過去1~2ヵ月間の血糖値の平均を反映することです。検査当日の食事や体調に左右されないため、より確実な糖尿病の診断が可能です。

血液中のブドウ糖(血糖)は全身のエネルギー源として利用されますが、インスリンの働きが不十分になると血糖値が慢性的に高い状態が続きます。この状態が継続すると、血管や神経に深刻な損傷を与え、心筋梗塞、脳梗塞、腎不全、失明などの合併症を引き起こす危険性があります。

脂質異常症の発見には、中性脂肪(トリグリセリド)HDLコレステロール(善玉)LDLコレステロール(悪玉)Non-HDLコレステロールの測定が行われます。これらは動脈硬化の進行度を評価する重要な指標となります。

LDLコレステロールが過剰になると血管壁に蓄積して動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。一方、HDLコレステロールは血液中の悪玉コレステロールを回収する働きがあるため、この値が低いことも問題となります。中性脂肪は体内で最も多い脂肪で、糖質がエネルギーとして脂肪に変化したものです。

Non-HDLコレステロールは、すべての動脈硬化を引き起こすコレステロールを表す新しい指標として注目されています。これらの脂質検査により、将来の心血管疾患のリスクを予測し、適切な生活習慣の改善や治療につなげることができます。

Q4: 炎症反応マーカー(CRP・血沈)が高いときに疑われる病気とは?

炎症反応マーカーであるCRP(C反応性タンパク)血沈(ESR)は、体内で炎症や感染が発生している際に上昇する重要な指標です。これらの検査は非特異的な炎症マーカーとして、様々な疾患のスクリーニングと経過観察に活用されています。

CRP(C反応性タンパク)は、体内で炎症や感染が発生した際に肝臓で産生されるタンパク質で、正常値は0.3mg/dL以下とされています。CRPが高値を示す場合に疑われる疾患は多岐にわたります。

急性感染症では、細菌やウイルスによる感染症、肺炎、扁桃炎などでCRPが著明に上昇します。慢性炎症疾患として、関節リウマチや炎症性腸疾患(IBD)などの活動性を示す指標となります。特に関節リウマチなどの膠原病では、病気の活動度と相関してCRP値が変動するため、治療効果の判定にも使用されます。

近年注目されているのは、心血管疾患のリスク評価における CRPの役割です。高CRP値は動脈硬化の進行や心筋梗塞、脳卒中のリスク上昇と関連があることが明らかになっています。また、特定のがん(肝臓がん、大腸がんなど)でCRPが持続的に高値を示すことがあります。

血沈(ESR)の基準値は男性10mm/時以下、女性15mm/時以下です。血液に抗凝固薬を混ぜ、赤血球が沈む速度を測定します。沈降速度が15mm/時間以上の場合は感染症、貧血、心筋梗塞、がんなどが疑われ、50mm/時間以上では慢性関節リウマチなどの膠原病や肺結核、100mm/時間以上では多発性骨髄腫が疑われます。

血沈はCRPに比べてゆっくり上昇し、炎症がなくなると数日で正常化するという特徴があります。貧血などがあると数値が高くなるため、出血が多い場合は炎症の実態と数値が合わないこともあります。

これらの炎症マーカーは感染症に特異的なものではなく、悪性腫瘍や自己免疫性疾患、心筋梗塞などでも上昇するため注意が必要です。ただし、どの臓器や部位に炎症があるかはCRPや血沈の検査だけでは判断できないため、症状や他の検査結果と合わせて総合的に判断する必要があります。

Q5: 血球検査(赤血球・白血球・血小板)の異常値から何がわかる?貧血の診断方法も解説

血球検査(CBC)は、血液中の細胞成分を詳細に分析する基本的な検査で、赤血球白血球血小板の数や性質を調べることで、貧血、感染症、血液疾患、出血傾向など様々な病態を発見できます。

赤血球関連の検査では、ヘモグロビン(Hb)ヘマトクリット値(Ht)が貧血の診断に重要です。ヘモグロビンの基準値は男性13.1-17.9g/dL、女性12.1-15.9g/dLで、ヘマトクリット値は男性39.7〜52.4%、女性34.8〜45.0%です。

貧血の診断は、血液中の赤血球数やヘモグロビン濃度が低下した状態を指します。貧血の原因は多様で、過剰な出血赤血球の材料不足血液を作る機能の病気赤血球を破壊する病気などがあります。最も頻度の高い原因は、ヘモグロビンの材料となる鉄不足が原因の鉄欠乏性貧血です。

平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)などの指標により、貧血の種類を詳しく分類できます。鉄欠乏性貧血では小球性低色素性貧血(MCVとMCHCが低値)を示し、ビタミンB12や葉酸欠乏では大球性貧血(MCVが高値)を示します。

白血球の変動は感染症や炎症の指標として重要です。細菌感染による発熱時には白血球数が増加し、その分画では好中球が優位となります。一方、ウイルス感染では一時的に白血球が減少することが多いです。喘息や蕁麻疹などのアレルギー反応では好酸球が増加します。

白血球分画の基準範囲は、好中球40.0〜75.0%、好酸球0.0〜8.0%、好塩基球0.0〜2.0%、単球2.0〜10.0%とされています。これらの分画を詳しく調べることで、感染症の種類やアレルギー疾患、血液疾患の診断に役立てることができます。

血小板の役割は止血機能です。出血した際にその部分に粘着して出血を止める重要な働きをしています。血小板数が高い場合は本態性血小板血症などが疑われ、低い場合は再生不良性貧血などの骨髄での生産低下、特発性血小板減少性紫斑病などの免疫異常、血小板の再生を促すトロンボポエチンの低下などが考えられます。

血球検査は健康診断において最も基本的で重要な検査の一つであり、これらの結果を総合的に評価することで、多くの疾患の早期発見と適切な治療につなげることができます。

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