なぜ発火する?モバイルバッテリー事故の原因を徹底解説

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スマートフォンやタブレットを日常的に使用する現代社会において、モバイルバッテリーは私たちの生活に欠かせない存在となっています。しかし、その便利さの裏側には、見過ごすことのできない重大な危険性が潜んでいることをご存知でしょうか。近年、モバイルバッテリーの発火事故が急増しており、電車内や航空機内、自動車内など、さまざまな場所で深刻な被害が発生しています。製品評価技術基盤機構の調査によれば、リチウムイオン電池を搭載した製品の事故件数は年々増加の一途をたどり、その多くが火災事故という極めて危険な形態で発生しています。なぜモバイルバッテリーは発火するのか、どのような原因が事故を引き起こすのか、そして私たちはどのようにして身を守ることができるのか。本記事では、モバイルバッテリーの発火事故に関する最新の情報をもとに、その原因と対策について徹底的に解説していきます。大切な命と財産を守るため、ぜひ最後までお読みください。

モバイルバッテリー発火事故の深刻な現状

モバイルバッテリーによる発火事故は、もはや他人事ではありません。製品評価技術基盤機構、いわゆるNITEの調査によれば、2020年から2024年までのわずか5年間で、リチウムイオン電池を搭載した製品の事故件数は驚くべき数字を記録しました。その総数は1,860件にも達し、さらに深刻なことに、そのうちの約85パーセントにあたる1,587件が火災事故として報告されているのです。この数字は、リチウムイオン電池を使用する製品の危険性がいかに高いかを如実に物語っています。

製品カテゴリー別に詳しく見てみると、モバイルバッテリーは事故件数が最も多い製品群の一つとして位置づけられています。2020年から2024年度にかけて、モバイルバッテリーによる発火・発熱事故は約300件も発生しており、これはスマートフォンの約350件、電動アシスト自転車の約300件と肩を並べる高い水準です。日常的に持ち歩く小さなデバイスが、これほど多くの事故原因となっている事実は、私たちに警鐘を鳴らしています。

特に注目すべきは、2024年の事故急増です。2024年は6月末時点で107件もの事故が発生しており、前年同期と比較するとなんと35.4パーセントもの増加率を記録しています。この急激な増加傾向の背景には、モバイルバッテリーの普及拡大という側面と、品質管理が不十分な粗悪品の流通増加という問題が複雑に絡み合っています。インターネット通販の発達により、海外製の安価な製品が容易に入手できるようになった一方で、安全基準を満たさない製品も市場に出回りやすくなってしまったのです。

興味深いことに、モバイルバッテリーの発火事故には季節性という明確な傾向が認められます。統計データを分析すると、春から夏にかけて気温が上昇する時期に事故が集中して発生しており、特に6月から8月の暑い時期に最も多くの事故が報告されています。この傾向は、高温環境がリチウムイオン電池の化学的安定性に大きな影響を与えることを示唆しており、夏場の使用や保管には特別な注意が必要であることを教えてくれています。猛暑日が続く日本の夏季において、モバイルバッテリーの取り扱いには細心の注意を払わなければなりません。

衝撃的な実例から学ぶ発火事故の恐ろしさ

実際に発生した事故事例を知ることは、危険性を具体的に理解するために極めて重要です。ここでは、社会に大きな衝撃を与えた主要な事故事例を詳しくご紹介します。

2025年7月20日、首都圏の重要な交通動脈であるJR山手線の車内で、極めて深刻な発火事故が発生しました。ある乗客がcheero製の「Flat 10000mAh」というモバイルバッテリーを使用してスマートフォンを充電していたところ、突然バッテリーが発火し、5名の乗客が負傷するという重大事態となりました。この事故では12名もの乗客が車外への緊急避難を余儀なくされ、複数の乗客が煙を吸い込むなどの健康被害を受けました。電車という密閉された空間での発火事故は、多くの乗客を危険にさらし、鉄道の運行にも大きな支障をきたしました。

この事故で特に問題視されたのは、発火したモバイルバッテリーが2023年6月からリコール対象となっていた製品だったという点です。製造元は自主回収プログラムを実施していましたが、リコール情報が該当製品の所有者全員に十分に届いていなかったため、危険な製品が市場に残り続けていたのです。この事例は、定期的にリコール情報を確認することの重要性を強く訴えかけています。あなたが今使っているモバイルバッテリーも、もしかしたらリコール対象製品かもしれません。

航空機内での発火事故も深刻な問題です。北海道の新千歳空港を離陸したばかりのSKY732便において、離陸直後に乗客のモバイルバッテリーから煙が発生するという事故が発生しました。この事故では2名の乗客が軽度の火傷を負い、機長は安全のため午前0時45分に緊急着陸の判断を下しました。上空を飛行中の航空機という逃げ場のない密閉空間での発火事故は、乗客全員の生命を脅かす極めて危険な状況を生み出します。この事故を受けて、航空会社や航空当局は、モバイルバッテリーの機内持ち込みや使用に関するルールの周知徹底を強化しています。

2023年8月に熊本県で発生した車内での発火事故も、高温環境の危険性を示す典型的な事例です。40代の男性が夏場の車内にモバイルバッテリーを放置していたところ、突然発火し、車両が全焼するという甚大な被害が発生しました。真夏の車内は、直射日光を浴びると60度以上、場合によっては70度を超える高温状態になることがあります。この極端な高温環境がリチウムイオン電池の熱暴走を引き起こし、制御不能な発火に至ったと考えられています。車内にモバイルバッテリーを置きっぱなしにするという何気ない行動が、車両の全損という取り返しのつかない結果を招いたのです。

さらに、2025年6月には業界に衝撃が走る出来事がありました。モバイルバッテリー市場で高いシェアを持つ大手メーカーAnkerが、約478,000台という大規模なリコールを実施したのです。これほど大量の製品リコールは異例の事態であり、製品の安全性に関する重大な欠陥が発見されたことを意味しています。この事例は、たとえ信頼性の高い大手メーカーの製品であっても、製造上の欠陥や設計上の問題が発生する可能性があることを示しています。ブランド名だけで安心せず、常にリコール情報をチェックする習慣を持つことが、いかに重要であるかを教えてくれる事例です。

消費者庁や東京消防庁が公表している事故データベースには、さらに多様な事故事例が記録されています。就寝中に布団の上でモバイルバッテリーを使って充電していたところ発火し、布団に火が燃え移って火災となったケースや、リュックサックに入れて持ち歩いていたモバイルバッテリーが突然発火し、背負っていた人が背中に火傷を負ったケースなど、日常生活のあらゆる場面で事故が発生しています。これらの事例が示しているのは、モバイルバッテリーの発火は決して特殊な状況下でのみ起こる稀な出来事ではなく、誰にでも起こりうる身近な危険であるという事実です。

リチウムイオン電池が発火するメカニズム

モバイルバッテリーの発火事故を防ぐためには、なぜ発火が起こるのか、そのメカニズムを正しく理解することが不可欠です。モバイルバッテリーに使用されているリチウムイオン電池の内部構造と発火のプロセスについて、詳しく解説していきましょう。

リチウムイオン電池の内部は、正極負極、そしてその間を隔てるセパレーターという薄い膜から構成されています。このセパレーターは、正極と負極が直接接触することを防ぐ重要な役割を担っており、通常の使用状態では、この絶縁膜のおかげで安全に電気を蓄えたり放出したりすることができます。正極には主にコバルト酸リチウムなどの材料が使われ、負極にはグラファイト(黒鉛)が使用されており、両極の間には電解液と呼ばれる液体が満たされています。この電解液は、リチウムイオンの移動を可能にする媒体として機能していますが、同時に可燃性という危険な特性も持っています。

しかし、何らかの原因でこの繊細な構造バランスが崩れ、セパレーターが破損すると、正極と負極が直接接触して内部短絡、いわゆるショート状態が発生します。内部短絡が起こると、本来制御されていた電流の流れが制御不能となり、大量の電流が一気に流れ始めます。この異常な電流の流れにより、急激かつ大量の熱が発生するのです。

この過程で特に危険視されているのが、デンドライトと呼ばれる樹枝状のリチウム結晶の形成です。デンドライトは、過充電や低温環境での充電、急速充電の繰り返しなどが原因で、負極の表面にリチウムの結晶が樹木の枝のような形状で成長する現象です。このデンドライトが時間をかけて成長し続けると、やがてセパレーターを物理的に突き破り、正極にまで到達してしまいます。デンドライトによる内部短絡は、外部からは全く分からないまま電池内部で静かに進行するため、予兆なく突然発火事故が起こる原因となります。

内部短絡が発生すると、リチウムイオン電池は熱暴走と呼ばれる極めて危険な状態に陥ります。熱暴走とは、発生した熱がさらなる化学反応を促進し、その反応がさらに多くの熱を生み出すという連鎖反応が制御不能になった状態を指します。一度熱暴走が始まると、この反応を外部から止めることは非常に困難であり、電池内部の温度は急激に上昇を続けます。研究データによれば、熱暴走状態のリチウムイオン電池の内部温度は、1000度以上にまで達することがあるとされています。

この異常な高温により、電池内部に満たされている可燃性の電解液が気化し、大量の可燃性ガスが発生します。この高圧の可燃性ガスが電池の筐体を破裂させ、外部の酸素と接触すると同時に、1000度以上の高温により瞬時に引火し、激しい炎とともに発火します。熱暴走による発火は、開始から数秒から数十秒という極めて短時間で進行するため、異常を察知してから対処するまでの時間的余裕がほとんどありません。また、燃焼時には有害なガスも大量に放出されるため、火災だけでなく、煙による健康被害のリスクも高まります。

モバイルバッテリー発火を引き起こす主要な原因

モバイルバッテリーの発火事故には、複数の要因が複雑に絡み合っています。それぞれの原因について、詳細に見ていきましょう。

過充電による危険性

過充電は、モバイルバッテリー発火事故の最も主要な原因の一つとして認識されています。リチウムイオン電池は、製品設計で定められた容量を超えて充電され続けると、電池内部の化学的バランスが崩れ、可燃性ガスが発生し始めます。このガスは電池内部に蓄積され、内圧を高めていきます。そして、このガスが何らかのきっかけ、例えば高温や物理的衝撃により爆発的に燃焼すると、発火事故につながるのです。

品質の高い正規品のモバイルバッテリーには、過充電保護回路という安全装置が内蔵されています。この回路は、バッテリーが満充電状態に達したことを検知すると、自動的に充電電流を遮断し、それ以上の充電を防ぐ仕組みになっています。しかし、粗悪品や品質管理が不十分な製品では、この重要な保護回路が正常に動作しなかったり、そもそも搭載されていなかったりすることがあります。そのような製品を使用すると、過充電による事故のリスクが飛躍的に高まってしまいます。

また、充電したまま長時間放置する使用習慣も、過充電のリスクを高める要因となります。特に、夜寝る前に充電を開始し、朝まで接続したままにするという使用方法は、多くの人が行っている一般的な充電方法ですが、もし保護回路が故障していた場合には、長時間の過充電状態が続き、発火の危険性が高まります。満充電になったらできるだけ早く充電器から外すという習慣を身につけることが重要です。

高温環境がもたらす深刻なリスク

高温環境は、リチウムイオン電池の化学的安定性を著しく低下させる重大な要因です。夏場の車内、直射日光が当たる窓際、暖房器具の近くなど、高温になりやすい環境でモバイルバッテリーを使用したり保管したりすることは、極めて危険な行為です。

リチウムイオン電池の内部温度が上昇すると、電解液の化学的分解が促進され、ガスが発生しやすくなります。また、高温は電池全体の劣化を加速させ、セパレーターの物理的強度を低下させたり、内部短絡のリスクを高めたりします。電池の動作保証温度は一般的に0度から45度程度とされており、この範囲を大きく超える環境での使用は、メーカーも推奨していません。

前述の統計データで、6月から8月の夏季に事故が集中している事実は、外気温の上昇が発火事故に直接的な影響を与えていることを明確に示しています。真夏の車内は、エアコンを切った状態で駐車すると、わずか数十分で60度以上の高温に達し、場合によっては70度を超えることもあります。このような極端な高温環境では、たとえ正常な製品であっても熱暴走が発生するリスクがあります。また、スマートフォンと一緒にポケットに入れて充電する場合も、体温と充電時の発熱が重なることで、想定以上の高温状態になる可能性があるため注意が必要です。

物理的衝撃や損傷の危険性

落下や強い圧力による物理的な衝撃は、電池内部の繊細な構造を損傷させる直接的な原因となります。モバイルバッテリーをバッグの中に無造作に入れ、その上に重い荷物を載せたり、誤って地面に落としたりすることで、内部のセパレーターが破損し、短絡のリスクが高まります。

特に危険なのは、膨張したモバイルバッテリーに外力を加える行為です。バッテリーが膨らんでいる状態は、内部でガスが発生している証拠であり、すでに異常な化学反応が進行していることを示しています。この状態のバッテリーに圧力を加えると、破損した内部構造がさらにダメージを受け、内部短絡が発生して突然発火する危険性が非常に高くなります。膨張したバッテリーを見つけたら、決して押したり曲げたりせず、すぐに使用を中止し、適切な方法で廃棄することが重要です。

また、外部ケースの破損やコネクタ部分の損傷も、内部への水分侵入や異物混入、あるいは直接的な短絡の原因となります。落下や衝撃により、外見上は小さな傷や亀裂であっても、そこから徐々に内部が劣化していく可能性があります。外観に明らかな損傷が見られる製品は、たとえまだ使用できる状態であっても、安全のためすぐに使用を中止すべきです。

水分侵入による化学反応の異常

モバイルバッテリー内部に水分が侵入すると、電解液の化学的性質が変化したり、予期しない電気化学反応が起こったりして、内部短絡の引き金となります。水分は電気の良導体であるため、本来絶縁されているべき部分に水分が付着すると、そこで短絡が発生する可能性があります。

雨に濡れた場合や、飲み物をこぼしてバッテリーにかかってしまった場合など、明らかに水分が付着したケースはもちろんですが、高湿度環境での長期保管にも注意が必要です。梅雨の時期や、湿度の高い場所にモバイルバッテリーを長期間放置すると、徐々に内部に湿気が浸透していく可能性があります。

特にコネクタ部分やUSBポートは、水分が侵入しやすい構造になっているため、使用しない時はキャップやカバーで保護することが推奨されます。また、万が一水に濡れてしまった場合は、すぐに乾いた布で拭き取り、十分に乾燥させてから使用する、あるいは安全のため使用を中止するという判断が重要です。

粗悪品・模倣品がもたらす深刻な問題

近年、モバイルバッテリー市場で特に深刻な問題となっているのが、品質管理が不十分な海外製の粗悪品や模倣品の流通です。これらの製品は、外見上は有名ブランドの正規品と見分けがつきにくいように巧妙に作られていることもありますが、内部の品質は著しく劣っており、安全性に重大な問題を抱えています。

粗悪品の最も危険な問題点は、過充電防止機能や温度管理機能、過電流保護機能などの安全装置が正常に機能しない、あるいは最初から全く搭載されていないことです。これらの安全機能は、異常な状態を検知して電池を保護するための重要な仕組みですが、製造コストを削減するために省略されている製品が多数流通しているのです。

また、粗悪品には虚偽の容量表示という問題もあります。例えば、パッケージには「20000mAh」と記載されているにもかかわらず、実際の容量は10000mAh程度しかない、あるいはそれ以下であるという詐欺的な製品が少なくありません。このような虚偽表示は、単に性能が低いというだけでなく、充電制御システムが正しく動作せず、過充電のリスクを高める原因にもなります。

さらに、粗悪品では内部部品の品質も極めて低く、セパレーターの強度が不足していて通常使用でも短絡しやすい構造になっていたり、電解液の純度が低く不純物が多いためにガスが発生しやすくなっていたりします。インターネット通販サイトで販売されている極端に安価な製品の中には、こうした粗悪品が多数含まれているため、価格だけで製品を選ぶことは非常に危険です。

避けられない経年劣化

リチウムイオン電池は、使用していなくても時間の経過とともに自然に劣化していくという特性があります。一般的に、モバイルバッテリーの寿命は2年から3年程度とされており、この期間を過ぎると性能が徐々に低下し始めます。劣化の主な症状としては、内部抵抗の増加、充電可能容量の減少、充電速度の低下などが挙げられます。

劣化した電池は、充電時や使用時に発熱しやすくなるという危険な特性を示します。内部抵抗が増加すると、同じ電流を流すために必要なエネルギーが増大し、その分が熱として放出されるためです。また、劣化によりセパレーターの物理的強度も低下していくため、短絡が発生するリスクも時間とともに高まっていきます。

注意すべきは、外見上は何の問題もなく使用できているように見えても、内部では確実に劣化が進行しているという点です。製造から数年が経過した製品や、充放電サイクルを数百回以上繰り返した製品は、たとえまだ使えていても、安全性の観点から交換を検討すべき時期に来ていると言えます。特に、使わなくなった古いモバイルバッテリーを他人に譲渡した後に事故が発生するケースも多く報告されており、中古品の取り扱いには細心の注意が必要です。

規制と安全基準で守られる消費者

PSEマークの義務化とその意味

日本国内では、モバイルバッテリーの安全性を確保するため、2019年2月1日から電気用品安全法、通称PSE法の規制対象となりました。これにより、PSEマークが表示されていないモバイルバッテリーの製造、輸入、販売が法律で禁止されています。この規制は、市場に流通する製品の最低限の安全性を保証するための重要な制度です。

さらに、2025年4月からは規制が拡大され、モバイルバッテリーに加えて、急速充電器や完全ワイヤレスイヤホンについてもPSEマーク表示が義務化されました。この規制強化は、リチウムイオン電池を使用する製品全般の安全性向上を目指す政府の姿勢を示しています。

PSEマークには2種類の形状があります。ひし形のPSEマークは、特に危険性が高いと判断された特定電気用品に該当し、国の登録を受けた検査機関による適合性検査が必要な製品に表示されます。一方、丸型のPSEマークは、一般的な電気用品に該当し、事業者が技術基準への適合性を自己確認して表示するものです。モバイルバッテリーは通常、丸型のPSEマークが表示される製品カテゴリーに分類されます。

PSEマークの確認と注意点

PSEマークは、製品本体またはパッケージに表示されています。購入時には必ず確認し、表示がない製品は絶対に購入を避けるべきです。しかし、ここで注意しなければならないのは、PSEマークがあるからといって、その製品が完全に安全であると保証されるわけではないという点です。

残念ながら、違法にPSEマークを偽造している製品も市場に存在します。特に、インターネット通販サイトで販売されている海外製の安価な製品の中には、PSEマークを不正に表示している悪質なケースが見られます。そのため、PSEマークの有無だけでなく、信頼できる販売店や製造元から購入することが極めて重要です。また、製品には製造元や輸入業者の正式な社名、連絡先情報が明記されているかも確認すべき重要なポイントです。

2025年3月には、大手電気機器メーカーのエレコムが、安全性は高いにもかかわらず、制度上の理由でPSEマークを表示できない製品を一部販売するというケースが報道されました。これは、PSE制度の複雑さや運用上の課題を示す事例ですが、一般消費者の立場としては、基本的にPSEマーク表示のある製品を選ぶことが最も安全な選択肢であることに変わりはありません。

業界団体によるMCPCマーク

PSEマークに加えて、MCPCマークという認証制度も、安全な製品を見分けるための有効な指標となります。MCPCとは、モバイルコンピューティング推進コンソーシアムという業界団体のことで、この団体が独自に設定した厳格な安全基準をクリアした製品に「モバイル充電安全認証」マークを付与しています。

MCPCマークが表示されている製品は、法律で義務付けられているPSE法の基準を満たすだけでなく、業界団体が定めた追加の安全性試験にも合格しているため、より高い信頼性と安全性が期待できます。製品選びで迷った際には、MCPCマークの有無も判断材料の一つとして考慮すると良いでしょう。

安全な使い方と実践的な予防策

購入時に確認すべき重要ポイント

モバイルバッテリーを購入する際には、以下の点を必ず確認してください。まず第一に、PSEマークが確実に表示されているかをチェックします。製品本体だけでなく、パッケージにも表示されているはずですので、両方を確認しましょう。

次に、製造元や販売元の情報が明記されているかを確認します。社名、所在地、連絡先電話番号やメールアドレスなど、具体的な連絡先が不明な製品は、何か問題が発生した際に対応を求めることができないため避けるべきです。有名メーカーのロゴがついていても、それが模倣品である可能性もあるため、正規の販売ルートから購入することが重要です。公式オンラインストアや、メーカーが認定した正規販売店での購入が最も安全です。

価格についても注意深く見る必要があります。市場の適正価格より極端に安い製品には要注意です。例えば、同等の容量と機能を持つ製品が一般的に3000円程度で販売されているのに、500円や1000円といった破格の値段で売られている場合、品質管理が不十分である可能性が極めて高く、過充電防止などの安全装置が省かれていることも考えられます。

購入前には、リコール情報も必ず確認しましょう。消費者庁が運営するリコール情報サイトや、各製造元の公式ウェブサイトで、該当製品がリコール対象になっていないかをチェックできます。特に、セールや在庫処分として販売されている製品は、リコール対象品が混ざっている可能性もあるため、型番をしっかり確認することが大切です。

また、中古品や開封済み製品の購入は避けるべきです。前述のとおり、多くの事故は2年から3年使用した後に他人に譲渡された製品で発生しています。中古品は、製造元の保証対象外となることが多く、経年劣化の状態も外見からは判断できません。フリマアプリやオークションサイトで安価に販売されている中古のモバイルバッテリーには、見えないリスクが潜んでいる可能性が高いのです。

充電時の安全な使用方法

充電時には、以下の点に細心の注意を払ってください。まず、風通しの良い場所で充電し、熱がこもらないようにすることが基本です。布団や枕、クッション、ソファの上など、柔らかい素材の上での充電は、放熱が妨げられて熱がこもりやすくなるため、絶対に避けてください。過去には、就寝中に布団の上で充電していたモバイルバッテリーが発火し、布団に燃え移って火災となった事例も報告されています。

充電したまま長時間放置することも避けるべきです。満充電になったら速やかに充電器から外す習慣をつけましょう。特に就寝時の充電は、過充電や異常発熱が発生しても気づきにくく、発見が遅れて重大事故につながる危険性が高いため、できる限り避けることが推奨されます。どうしても夜間に充電する必要がある場合は、タイマー付きコンセントを使用するなど、長時間の過充電を防ぐ工夫をすると良いでしょう。

モバイルバッテリーの中には、複数のデバイスを同時に充電できる製品もありますが、複数のデバイスを同時に充電する場合は、製品の仕様書を確認し、許容範囲内で使用することが重要です。許容電流を超えた過負荷状態は、バッテリー本体の異常発熱を引き起こし、発火リスクを高めます。

使用中や充電中に異常な発熱、膨張、異臭、異音などの異常を感じたら、直ちに使用を中止し、充電器やデバイスから外して、機器から離れた安全な場所に移動させてください。このとき、水をかけて冷却しようとする行為は、かえって危険な場合があるため避けるべきです。リチウムイオン電池の火災は、水をかけることで化学反応がさらに激しくなる可能性があります。異常を感じたら、まずは製造元のサポート窓口や、消防、消費生活センターなどの専門機関に相談してください。

保管時に守るべき重要事項

高温環境での保管は厳禁です。夏場の車内、直射日光が当たる窓際、暖房器具やストーブの近く、調理器具の周辺など、高温になりやすい場所は絶対に避けてください。真夏の車内の温度は、わずか30分程度で60度以上に達することもあり、リチウムイオン電池にとって極めて危険な環境です。車内に置き忘れただけで発火事故につながった実例もあるため、特に夏場は車から降りる際に必ず持ち出す習慣をつけましょう。

逆に、極端な低温環境も避けるべきです。低温環境での充電は、前述したデンドライト形成のリスクを高め、内部短絡の原因となります。冬場の屋外など、氷点下になるような環境から持ち帰ったモバイルバッテリーは、室温に戻してから充電を開始するようにしてください。

長期間使用しない場合は、50パーセント程度充電した状態で、涼しく乾燥した場所に保管するのが理想的です。完全に放電した状態での長期保管は、電池の深放電を招いて劣化を早め、場合によっては充電できなくなることがあります。逆に満充電状態での長期保管も、電池内部の化学反応を促進して劣化を加速させます。適度に充電された状態が、長期保管には最適です。

保管時には、金属製品と接触しないように注意することも重要です。鍵や硬貨、クリップなどの金属物とバッグやポケットの中で一緒になると、モバイルバッテリーの充電端子が金属によってショートし、突然発火する危険性があります。モバイルバッテリーは専用のポーチやケースに入れて保管し、金属物と分けて持ち運ぶようにしましょう。

異常のサインを見逃さない

以下のような症状が一つでも見られたら、すぐに使用を中止してください。本体が膨張している、変形している状態は、内部でガスが発生している明確な証拠であり、非常に危険な状態です。充電中や使用中に異常に熱くなる、持てないほど熱いと感じる場合も、内部で異常が発生しているサインです。

焦げ臭い、異臭がする場合は、内部の電解液や部品が高温で分解している可能性があります。煙が出ている場合は、すでに発火の初期段階に入っていると考えられるため、すぐに離れた場所に移動させ、消防に連絡してください。充電してもすぐに電池がなくなる、充電ができない、または充電に異常に時間がかかるという症状も、内部の劣化が進んでいるサインです。

本体から液体が漏れている場合は、電解液が漏出している可能性があり、非常に危険です。電解液は腐食性があり、皮膚に触れると炎症を起こすことがあるため、直接触らないようにしてください。また、充電中に異音がする、例えばジリジリという音やプシューという音がする場合も、内部で異常な反応が起きているサインです。

これらの症状が一つでも見られた製品は、絶対に使用を続けてはいけません。すぐに使用を中止し、製造元のサポート窓口に連絡するか、後述する適切な方法で廃棄してください。「まだ使えるから」と判断して使い続けることが、重大事故につながる可能性があります。

発火してしまった場合の対処法

万が一、モバイルバッテリーが発火してしまった場合、リチウムイオン電池の火災は通常の火災とは異なる特性があることを理解しておく必要があります。可能であれば、ABC粉末消火器を使用して消火を試みることができますが、一般家庭にリチウムイオン電池専用の消火器が常備されていることは少ないでしょう。

大量の水での消火も選択肢の一つですが、リチウムイオン電池の火災は内部で化学反応が起きているため、表面を水で冷やしても完全には消火できない場合があります。また、水をかけることで化学反応がさらに激しくなるケースもあるため、注意が必要です。

最も重要なのは、安全を最優先に行動することです。周囲に燃え移る危険がある場合や、煙が充満している場合は、無理に消火しようとせず、すぐに避難して消防に通報してください。119番に連絡する際には、「リチウムイオン電池のモバイルバッテリーが発火した」と明確に伝えることで、消防隊が適切な装備と知識を持って対応できます。

廃棄時の正しい手順と社会的責任

ゴミ処理施設での深刻な火災問題

使わなくなったモバイルバッテリーを一般ゴミとして捨てることは絶対にしてはいけません。全国のゴミ処理施設やゴミ収集車において、不適切に廃棄されたリチウムイオン電池が原因となる火災が多数発生しており、深刻な社会問題となっています。リチウムイオン電池を使用した製品の普及拡大に比例して、廃棄物処理現場での火災事故件数も急増しているのです。

2025年4月には、愛知県大口町のゴミ処理施設で大規模な火災が発生しました。搬入された廃プラスチックを破砕機で小さく圧縮する過程で、混入していたリチウムイオン電池が圧力により破損し、発火したと見られています。この火災により、施設は長期間の運転停止を余儀なくされ、周辺地域のゴミ処理に大きな影響が出ました。住民の生活に直結するゴミ処理が滞ることは、地域社会全体に深刻な影響を及ぼします。

ゴミ収集車の荷台でも、収集したゴミを圧縮する際の衝撃や圧力により、混入していたリチウムイオン電池が発火するケースが相次いでいます。これは収集作業員の安全を直接脅かすだけでなく、火災により収集車が全焼し、周辺地域の住宅や通行人にも危険が及ぶ可能性があります。一人ひとりの不適切な廃棄行動が、多くの人々を危険にさらすことになるのです。

適切な廃棄方法を知る

モバイルバッテリーは、家電量販店やホームセンターなどに設置されている回収ボックスに持ち込んで処分してください。一般社団法人JBRCという組織が、公共施設、家電量販店、ホームセンター、携帯電話ショップなど、全国各地に「小型充電式電池リサイクルBOX」を設置しており、製品から取り外されたリチウムイオン電池やモバイルバッテリー本体を無料で回収しています。

JBRCの公式ウェブサイトでは、お住まいの地域の回収協力店を検索することができます。最寄りの回収場所を事前に調べておくと、不要になった際にスムーズに処分できます。不要になったリチウムイオン電池やリチウムイオン電池を使用している製品をご家庭から出す場合は、お住まいの市区町村のルールに従って処分してください。自治体によって回収方法や分別区分が異なる場合がありますので、必ず確認が必要です。

横浜市では、2025年12月1日からリチウムイオン電池等の分別収集を開始するなど、自治体レベルでの専用回収システムの整備も進んでいます。今後、より多くの自治体で専用の回収システムが整備され、より身近な場所で安全に廃棄できる環境が整うことが期待されています。

廃棄前の安全対策

廃棄前には、必ず端子部分にテープを貼って絶縁してください。セロハンテープやビニールテープを使用し、充電端子やコネクタ部分を覆うことで、廃棄時や輸送時のショートを防止します。これは非常に重要な安全対策であり、この処理を怠ると、回収ボックス内や輸送中に他の金属と接触してショートし、発火する危険性があります。

膨張や破損がある製品は、特に慎重に取り扱う必要があります。個別にビニール袋などに入れて梱包し、他の製品と接触しないようにしてください。膨張している電池は、わずかな衝撃でも発火する可能性がある極めて危険な状態にあるため、絶対に圧力をかけたり、鋭利なもので突いたりしないでください。

製品から電池を取り外せるタイプの場合は、取り外してから廃棄することが推奨されます。ただし、無理に分解することは危険です。ネジで固定されている場合は取り外せますが、接着剤で固定されている場合や、分解に特殊な工具が必要な場合は、無理に分解せず製品ごと回収場所に持ち込んでください。分解時に内部を傷つけると、それが原因で発火する可能性があります。

リサイクルの重要性

適切に分別・回収されたリチウムイオン電池は、専門のリサイクル施設で安全に処理されます。まず、真空加熱炉などで高温処理され、可燃性の有機成分である電解液などを安全に除去する工程が行われます。その後、金属や構成材料ごとに分類される工程へと進みます。

リチウムイオン電池には、コバルト、ニッケル、銅、鉄、アルミニウムなどの貴重な金属資源が含まれています。これらの金属は、リサイクル工程を経て回収され、新しい製品の材料として再利用されます。適切にリサイクルすることで、限りある地球資源の有効活用と環境保護に貢献できるのです。日本は資源の少ない国であり、都市鉱山とも呼ばれる使用済み電子機器からの資源回収は、極めて重要な取り組みです。

事業者の廃棄責任

企業や事業所から出るモバイルバッテリーは、家庭ゴミとは異なり、産業廃棄物として処理する必要があります。専門の産業廃棄物処理業者に委託し、適正な処理を行うことが廃棄物処理法で義務付けられています。事業者が一般ゴミとして廃棄した場合、法律違反となり、罰則の対象となる可能性があります。

環境省は2025年3月31日に「市区町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策集」を作成し、自治体向けのガイドラインを提供しています。これにより、全国的に統一された適切な処理体制の構築が進められており、今後さらに安全で効率的な廃棄・リサイクルシステムが整備されることが期待されています。

メーカーの安全性向上への取り組み

信頼できる製造メーカーは、製品の安全性向上のためにさまざまな技術開発と品質管理の取り組みを行っています。Ankerなどの大手メーカーは、独自の安全技術を開発し、多重保護システムを製品に搭載しています。過充電保護、過放電保護、過電流保護、短絡保護、温度管理など、複数の安全機能を組み合わせた多層防御システムにより、一つの保護機能が失敗しても他の機能が作動して異常時の事故を防ぐ仕組みを構築しています。

また、製造工程での品質管理体制も強化されています。出荷前の全数検査や、定期的な抜き取り検査により、不良品が市場に流出することを防いでいます。使用される電池セル一つ一つの品質チェック、組み立て後の動作確認、温度試験、振動試験など、多段階の検査工程を経て、安全性が確認された製品のみが出荷されます。

万が一、製造上の欠陥や設計上の問題が発見された場合には、責任あるメーカーは迅速にリコール情報を公開し、無償での回収・交換対応を行っています。消費者への情報提供を重視し、公式ウェブサイト、SNS、メールマガジン、さらには店頭ポスターなど、複数の手段を通じて注意喚起を行い、事故の未然防止に努めています。

今後の課題と社会全体での取り組み

規制の実効性をさらに高める必要性

PSEマークの義務化は、モバイルバッテリーの安全性向上に向けた重要な一歩ですが、まだ多くの課題が残されています。偽造PSEマークの存在や、インターネット通販を通じた規制外製品の流入など、規制をくぐり抜ける製品が後を絶たない現状があります。

2025年には中国の制度改定もあり、海外からの輸入製品の品質管理がさらに複雑化しています。国際的な協力体制の構築や、税関などでの水際での検査強化が求められています。オンライン販売プラットフォーム事業者の責任も重要な課題です。大手通販サイトでは、違法製品の販売を防ぐため、出品時のチェック体制強化や、消費者への注意喚起表示などの取り組みが進められていますが、さらなる強化が必要です。

消費者への効果的な啓発活動

多くの消費者は、モバイルバッテリーのリスクを十分に理解していないのが現状です。正しい使用方法や、異常時の対応について、より効果的な啓発活動が必要とされています。消費者庁は、モバイルバッテリーの事故防止に向けて積極的な啓発活動を展開しており、2013年6月から2019年6月までの間に162件の事故報告を受け、特に帰省や旅行の時期には、公共交通機関内での事故が危険であるとして注意喚起を強化しています。

2025年10月2日には、リチウムイオン電池使用製品による発火事故に関する特集ページが公開され、身に着ける製品や持ち歩く製品にもリチウムイオン電池が使用されていることへの注意を促しています。また、2025年7月30日には、モバイルバッテリーの発火実験映像を公開し、視覚的に危険性を伝える取り組みも行われました。実際の発火の様子を映像で見ることで、言葉だけでは伝わりにくい危険性のリアリティが強く印象づけられます。

公共交通機関への持ち込みについては、各交通機関が独自のルールを設定しています。航空機では、モバイルバッテリーの容量制限があり、預け荷物ではなく機内持ち込みが原則とされています。電車やバスでも、使用方法や保管方法に関する推奨事項があります。利用前に各交通機関のルールを確認し、遵守することが求められています。

特に若年層や高齢者など、技術的な知識が少ない層への情報提供を強化する必要があります。学校教育の中で、リチウムイオン電池の危険性と正しい取り扱い方法を学ぶ機会を設けたり、地域コミュニティでの安全講習会を開催したりするなど、多様な啓発手段が検討されています。リコール情報サイトでは、サムネイル画像付き一覧でリコール対象製品を探せるようになっており、消費者が視覚的に自分の製品を確認しやすい仕組みが整備されています。

次世代技術への期待

より安全性の高い電池技術の研究開発も進められています。全固体電池は、液体の電解液を使用せず、固体の電解質を使用する次世代の電池技術です。液体電解液が存在しないため、漏液の心配がなく、発火リスクを大幅に低減できる可能性があります。また、全固体電池は高温環境での安定性も高く、より過酷な条件下でも安全に使用できることが期待されています。

さらに、AIを活用した異常検知システムや、スマートフォンアプリと連携した温度監視システムなど、ITを活用した安全管理技術の開発も期待されています。リアルタイムでバッテリーの状態を監視し、異常の兆候を早期に検知してユーザーに警告するシステムが実用化されれば、事故の未然防止に大きく貢献するでしょう。

リコール情報の確実な周知

リコール対象製品が市場に残り続け、それが原因で事故が発生していることは、極めて深刻な問題です。2025年のJR山手線での事故も、2023年からリコール対象だった製品で発生しました。リコール情報を製品の所有者全員に確実に届ける仕組みの確立が急務です。

購入時の製品登録制度の普及や、SNSやプッシュ通知を活用した情報配信、QRコードを使った簡単な登録システムなど、新しい周知方法の確立が求められています。また、販売店での定期的なリコール情報の掲示や、レジでの案内なども有効な手段です。メーカー、販売店、行政が連携し、多層的な情報伝達ネットワークを構築することが重要です。

まとめとして私たちができること

モバイルバッテリーは、現代生活において欠かすことのできない便利なアイテムです。外出先でスマートフォンの充電が切れそうになったとき、モバイルバッテリーがあることで安心して使い続けることができます。しかし、その便利さの裏側には、使い方を誤ると重大な事故につながる危険性が潜んでいることを、私たちは常に意識しなければなりません。

事故を防ぐためには、まず購入時の段階から注意が必要です。PSEマーク表示のある信頼できる製品を選び、極端に安価な製品や出所が不明な製品は避けるという基本的な選択が、最初の重要なステップです。信頼できる販売店から、適正価格で、正規品を購入することが、安全への第一歩となります。

使用時には、過充電や高温環境を避け、物理的な衝撃や水分から保護することが重要です。充電したまま長時間放置しない、熱のこもる場所で使用しない、布団やクッションの上で充電しないなど、基本的な注意事項を守ることで、多くの事故は防ぐことができます。これらは決して難しいことではなく、少しの意識で実践できる簡単な対策です。

異常のサインを見逃さないことも極めて重要です。膨張、異常発熱、異臭、異音などの症状が見られたら、「まだ使えるから大丈夫」と判断せず、すぐに使用を中止し、適切に対処してください。小さな異常が、重大事故の前兆である可能性があります。

また、手元にある製品がリコール対象でないか、定期的に確認する習慣をつけましょう。メーカーの公式ウェブサイトや消費者庁のリコール情報サイトで、数分で簡単にチェックできます。少なくとも半年に一度、あるいは新しいニュースで大規模リコールが報道された際には、自分の製品を確認する習慣を持つことをお勧めします。

廃棄時も、決して一般ゴミとして捨てず、必ず指定された回収ルートを利用してください。不適切な廃棄は、ゴミ処理施設での火災など、自分だけでなく多くの人々を危険にさらす行為です。一人ひとりの正しい廃棄行動が、社会全体の安全につながります。

技術の進歩により、今後さらに安全性の高い製品が登場することが期待されますが、最終的に安全を守るのは、使用者一人一人の意識と行動です。どんなに優れた安全装置が搭載されていても、誤った使い方をすれば事故は起こります。正しい知識を持ち、適切に使用することで、モバイルバッテリーを安全に活用しましょう。

モバイルバッテリーの安全性向上には、製造者、販売者、規制当局、そして私たち消費者のすべてが協力して取り組む必要があります。メーカーは安全な製品を開発し、販売者は正規品のみを取り扱い、行政は適切な規制と啓発活動を行い、消費者は正しい知識を持って適切に使用する。この官民一体となった継続的な努力により、より安全な社会の実現を目指していくことが重要です。

あなた自身と、あなたの大切な人々の安全を守るため、今日からできることを始めてみませんか。手元のモバイルバッテリーのPSEマークを確認する、リコール情報サイトをブックマークする、高温の場所に置いていないか見直す、そんな小さな一歩が、重大事故を防ぐ大きな力となります。

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