2025年は多くの働く人々にとって、社会保険料の負担が軽減される年となります。介護保険料率や雇用保険料率の引き下げが実施され、特に雇用保険料率については8年ぶりの引き下げとなることから、企業や従業員の双方にとって朗報といえるでしょう。一方で、健康保険料率は都道府県ごとに改定内容が異なり、18都府県では引き下げとなる一方で、28道県では引き上げとなるため、お住まいの地域によって影響が変わってきます。本記事では、社会保険料の引き下げがいつから施行されるのか、具体的な改正内容はどのようなものか、そして企業や個人がどのような準備をすべきかについて、詳しく解説していきます。給与の手取り額に直接影響する重要な情報ですので、人事労務担当者の方はもちろん、すべての働く方々にとって必読の内容となっています。

2025年度社会保険料改定の全体構造
2025年度に実施される社会保険料の改定は、複数の保険料率が同時に変更されるという点で注目されています。主な改定項目として、介護保険料率の全国一律での引き下げ、健康保険料率の都道府県別改定、そして雇用保険料率の引き下げという3つの大きな変更が実施されます。これらの改定により、多くの企業や従業員にとって負担軽減が期待される一方で、健康保険料率が引き上げとなる地域では注意が必要です。社会保険料は毎月の給与から天引きされる重要なコストであり、企業にとっては人件費の一部として経営に直結する要素となっています。また、従業員にとっても手取り額に大きく影響するため、改定内容を正しく理解しておくことが大切です。
介護保険料率の引き下げ詳細と施行時期
介護保険料率は2025年3月分から全国一律で引き下げとなります。具体的には、2024年度の1.60パーセントから2025年度は1.59パーセントへと、0.01パーセントの引き下げが実施されます。この変更は2025年4月納付分から適用されるため、実際に給与明細に反映されるのは4月支給の給与からとなります。介護保険料の対象となるのは、40歳以上65歳未満の被保険者であり、該当する全ての従業員に適用されます。
介護保険料の負担は企業と従業員が半分ずつ負担する仕組みとなっており、標準報酬月額30万円の従業員の場合、月額の介護保険料は従業員負担分が2,385円、事業主負担分も2,385円となります。2024年度と比較すると、1人あたり月額15円の負担軽減となり、年間では180円の軽減効果が得られます。一見すると小さな金額に思えるかもしれませんが、企業全体で見れば従業員数に応じてより大きな額の負担軽減となるため、特に従業員数の多い企業にとっては経営上のメリットとなります。
介護保険制度は高齢化が進む日本において重要な社会保障の柱となっており、将来的には負担増が避けられないと予想されています。そのため、2025年度に引き下げとなることは珍しいケースといえるでしょう。介護保険料率の引き下げは、介護保険財政の一時的な改善を反映したものと考えられます。
健康保険料率の都道府県別改定内容と施行時期
健康保険料率は都道府県ごとに異なる料率が設定されており、2025年3月分から改定が実施されます。実際の納付は2025年4月からとなるため、企業の給与計算システムは3月分の給与計算から新しい料率を適用する必要があります。2025年度は大分県を除く46都道府県で料率の変更があり、引き下げとなる都府県が18、引き上げとなる道県が28、据え置きが1県という内訳になっています。
東京都では2024年度の9.98パーセントから2025年度は9.91パーセントへと0.07パーセントの引き下げとなり、標準報酬月額30万円の従業員の場合、月額105円の負担軽減となります。年間では1,260円の軽減効果です。大阪府でも10.34パーセントから10.24パーセントへと0.10パーセント引き下げられ、福岡県も10.35パーセントから10.31パーセントへと0.04パーセントの引き下げとなっています。
一方、引き上げとなる地域も多く存在します。北海道では10.21パーセントから10.31パーセントへと0.10パーセントの引き上げとなり、標準報酬月額30万円の従業員の場合、月額150円の負担増となります。長野県では9.55パーセントから9.69パーセントへと0.14パーセントの引き上げ、長崎県では10.17パーセントから10.41パーセントへと0.24パーセントもの大幅な引き上げとなっています。
全国の保険料率の平均は10.00パーセントとなっており、最も高い佐賀県の10.78パーセントと最も低い沖縄県の9.44パーセントでは、1.34パーセントもの差が生じています。この都道府県別の料率差は、各地域の医療費水準や加入者の年齢構成などによって生じるものであり、医療費が高い地域ほど保険料率が高くなる傾向にあります。企業の人事労務担当者は、自社が所在する都道府県の料率変更を確認し、給与計算システムの更新や従業員への周知を適切に行う必要があります。
雇用保険料率の8年ぶりの引き下げと施行時期
2025年度における最も注目すべき変更の一つが、雇用保険料率の8年ぶりの引き下げです。これは2017年度以来の引き下げとなり、雇用環境の改善を反映したものとなっています。引き下げ幅は0.1ポイントで、被保険者である従業員の負担分が0.05パーセント、事業主負担分も0.05パーセントずつ軽減されます。施行時期は2025年4月1日から2026年3月31日までの1年間となります。
業種別に見ると、一般事業では従業員負担が2024年度の0.60パーセントから2025年度は0.55パーセントに、事業主負担が0.95パーセントから0.90パーセントに引き下げられ、合計では1.55パーセントから1.45パーセントとなります。農林水産・清酒製造事業では合計1.50パーセント、建設事業では合計1.70パーセントとなり、それぞれ0.1ポイントの引き下げが実施されます。
月給30万円の従業員の場合、一般事業であれば従業員負担が月額1,800円から1,650円へと150円軽減され、年間では1,800円の負担軽減となります。事業主負担も同様に月額150円、年間1,800円の軽減となるため、従業員100人の企業であれば事業主負担だけで年間18万円もの軽減効果が得られます。
雇用保険料率の引き下げが実現した背景には、複数の要因があります。第一に、新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着き、雇用環境が改善していることが挙げられます。失業率の低下により、失業等給付の支給が減少しています。第二に、2023年度決算における雇用保険の積立金残高が回復したことで、保険料率を引き下げても制度の安定性を維持できる見通しとなりました。第三に、今回の引き下げは失業等給付および育児休業給付にかかる保険料率の変更であり、法改正を要することなく実施できるものである点も重要です。
厚生年金保険料率と労災保険料率の据え置き
社会保険料の中でも大きな割合を占める厚生年金保険料率については、2025年度も据え置きとなります。現行の18.3パーセントが維持され、従業員負担は9.15パーセント、事業主負担も9.15パーセントとなります。厚生年金保険料率は2004年の年金制度改革により段階的に引き上げられてきましたが、2017年9月を最後に引き上げが終了し、以降は18.3パーセントで固定されています。
標準報酬月額30万円の従業員の場合、従業員負担分は27,450円、事業主負担分も27,450円となります。厚生年金保険料は社会保険料の中でも最も負担額が大きいため、据え置きとなることで急激な負担増を回避できています。
労災保険料率についても2025年度は据え置きとなっています。労災保険料は全額を事業主が負担し、従業員の負担はありません。労災保険料率は業種によって異なり、危険度の高い建設業や製造業では比較的高い料率が、事務職が中心の業種では低い料率が設定されています。
社会保険適用拡大の動向と106万円の壁撤廃
保険料率の変更とは別に、社会保険の適用範囲の拡大も段階的に進んでいます。2024年10月からは、社会保険の加入条件の一つである従業員数の要件が、101人以上から51人以上へと変更されました。これにより、従業員数51人以上100人以下の企業も特定適用事業所に該当することとなり、短時間労働者の社会保険加入対象が拡大されました。
特定適用事業所に該当する場合、週の所定労働時間が20時間以上、所定内賃金が月額8.8万円以上、2か月を超える雇用の見込みがある、学生でないという要件を全て満たす短時間労働者は社会保険に加入する必要があります。
さらに重要な変更として、2025年6月13日に年金制度改正法が成立し、いわゆる106万円の壁が段階的に撤廃されることが決定しました。106万円の壁とは、年収が106万円を超えると一定の条件を満たす場合に社会保険への加入義務が生じることを指し、これまで多くのパート労働者が年収を106万円以下に抑えて働く原因となっていました。
改正法が全て施行された場合、月額賃金88,000円以上という賃金要件が撤廃されます。施行時期については、全国の最低賃金時給が1,016円以上になったタイミングで施行する予定であり、改正法の公布から3年以内の政令で定める日とされているため、遅くとも2028年6月までには施行される見通しです。
企業規模要件についても段階的に撤廃されていきます。2027年10月には従業員数36人以上の企業が対象となり、2029年10月には21人以上、2032年10月には11人以上、そして2035年10月には企業規模にかかわらず全面適用となります。最終的には、週20時間以上働く全ての労働者が社会保険の対象となるため、企業は長期的な視点で対応を検討する必要があります。
新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者で標準報酬月額が12.6万円以下の場合、3年間限定で保険料の本人負担を最大50パーセント抑える特例が設けられています。この負担軽減分は企業が負担し、国が支援する仕組みとなっており、手取りの減少を緩和する措置が講じられています。
2025年度社会保険料の具体的な計算例
実際の負担額がどのように変わるのか、具体的な計算例を見ていきましょう。東京都で働く45歳の従業員で、標準報酬月額が30万円の場合、健康保険料は介護保険を含めて17,250円となります。これは30万円に健康保険料率9.91パーセントと介護保険料率1.59パーセントを合計した11.50パーセントを掛けて2で割った金額です。厚生年金保険料は27,450円、雇用保険料は1,650円となり、従業員負担合計は46,350円となります。
事業主負担は健康保険料17,250円、厚生年金保険料27,450円、雇用保険料2,700円の合計47,400円となります。これに加えて労災保険料は事業主のみの負担となり、業種により異なる料率が適用されます。
大阪府で働く38歳の従業員で、標準報酬月額が25万円の場合、介護保険の対象外となるため健康保険料のみとなり12,800円です。厚生年金保険料は22,875円、雇用保険料は1,375円で、従業員負担合計は37,050円となります。このように、年齢や地域、報酬額によって社会保険料の負担額は大きく変わってきます。
標準報酬月額の仕組みと計算方法
社会保険料の計算には標準報酬月額という概念が用いられます。標準報酬月額は、毎月の給与を一定の幅で区切った等級のことで、実際の給与額をそのまま使うのではなく、一定の範囲ごとに区分された標準額を用いて保険料を計算します。これにより計算が簡素化され、給与額が多少変動しても保険料が毎月同じになるという利点があります。
健康保険の標準報酬月額は第1級の58,000円から第50級の1,390,000円まで50等級に区分されており、厚生年金保険の標準報酬月額は第1級の88,000円から第32級の650,000円まで32等級に区分されています。
標準報酬月額の算定基礎となる報酬には、基本給だけでなく、残業代や割増賃金、住宅手当、家族手当、通勤手当、役職手当、資格手当などの労働の対償として支払われる全ての報酬が含まれます。一方、慶弔見舞金、退職金、年3回以下の賞与、出張旅費や宿泊費などの実費弁償的なものは報酬に含まれません。
標準報酬月額は年1回の定時決定により決定されます。毎年4月、5月、6月の3か月間の報酬の平均額を基に、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額が決定されます。また、昇給や降給などにより報酬が大きく変動した場合は、随時改定により標準報酬月額が変更されます。この仕組みを理解しておくことで、昇給のタイミングなどを戦略的に検討することも可能になります。
企業が注意すべき実務上の対応ポイント
2025年度の社会保険料改定に際して、企業が注意すべき実務上のポイントは多岐にわたります。まず最も重要なのが給与計算システムの更新です。健康保険料率と介護保険料率は2025年3月分から変更されるため、4月支給の給与計算から新しい料率を適用する必要があります。雇用保険料率は2025年4月1日から変更されるため、5月支給の給与計算から新しい料率を適用します。給与計算ソフトウェアやクラウドサービスを利用している場合は、自動更新されるかどうかを確認し、手動での設定変更が必要な場合は早めに対応しましょう。
従業員への周知も重要な実務対応です。保険料率の変更により、従業員の手取り額が変動するため、特に健康保険料率が引き上げとなる地域では、従業員から質問が寄せられる可能性があります。事前に社内掲示板や給与明細への記載、メールなどで周知を行い、理解を得ることが重要です。なぜ保険料が変更になるのか、いつから適用されるのか、手取り額への具体的な影響はどの程度かなどを分かりやすく説明することで、従業員の不安や疑問を解消できます。
複数の都道府県に事業所がある企業は、都道府県別の料率確認が必要です。健康保険料率は都道府県ごとに異なるため、それぞれの事業所が所在する都道府県の料率を確認し、正確に適用する必要があります。給与計算システムが複数事業所に対応している場合でも、設定ミスがないか十分に確認しましょう。
社会保険適用拡大への対応も忘れてはいけません。2024年10月から従業員数51人以上の企業が特定適用事業所の対象となっているため、自社が該当するかどうかを確認し、該当する場合は短時間労働者の加入手続きを適切に行う必要があります。加入対象となる従業員の洗い出し、本人への説明、加入手続きの実施など、計画的に進めることが大切です。
年度が変わるタイミングでは標準報酬月額の見直しも行われます。4月から6月の報酬に基づく定時決定により、9月から新しい標準報酬月額が適用されるため、この期間の給与計算には特に注意が必要です。
従業員が押さえておくべき重要ポイント
従業員の立場から、2025年度の社会保険料改定について知っておくべきポイントをまとめます。最も直接的な影響は手取り額の変化です。介護保険料の対象者であれば小幅な負担軽減が、雇用保険料では月額150円程度の負担軽減が期待できます。健康保険料については、東京都や大阪府などの18都府県では負担軽減となりますが、北海道や長野県などの28道県では負担増となるため、お住まいの地域により影響が異なります。
年収400万円程度の方であれば、引き下げ地域では年間で数千円程度の負担軽減となる可能性があります。一方、引き上げ地域では他の保険料の引き下げ分が相殺され、トータルではわずかな負担増となるケースもあります。給与明細を確認して、実際にどの程度変化したかを把握しておくことが大切です。
社会保険料は、将来の給付の原資となる重要なものです。健康保険料は医療費の自己負担を軽減し、介護保険料は将来介護が必要になった際のサービス利用を支えます。厚生年金保険料は老齢年金、障害年金、遺族年金の給付につながり、雇用保険料は失業時の基本手当や育児休業給付、介護休業給付などに使われます。保険料の負担は、将来の自分自身や家族を守るための重要な制度であることを理解しておきましょう。
従業員数51人以上の企業で働くパートやアルバイトの方は、社会保険加入の要件を確認しておくことが重要です。週20時間以上の勤務で月額8.8万円以上の賃金があり、2か月を超える雇用の見込みがあり、学生でない場合は社会保険への加入が必要となります。加入することで将来の厚生年金が増え、健康保険の給付が手厚くなる傷病手当金や出産手当金などを受けられるメリットがある一方、手取り収入が減少したり配偶者の扶養から外れる可能性があるため、ご自身の働き方を見直す良い機会となります。
手取り額への影響シミュレーション
2025年度の社会保険料改定が年収別にどのような影響を与えるかを見ていきましょう。社会保険料や税金の負担により、給与の額面と手取り額には大きな差が生じます。一般的に、年収500万円程度までは手取り率が約80パーセントとなり、税金等で約20パーセントが徴収されます。年収800万円程度になると手取り率は約75パーセントに低下し、年収1000万円以上では手取り率が約70パーセント以下となります。年収が上がるほど、所得税の累進課税により税負担が大きくなるため、手取り率は低下していきます。
具体的な例として、年収400万円の場合、手取り額は約318万円で月額約26.5万円となり、社会保険料と税金で約82万円が徴収されます。年収600万円の場合は手取り額が約466万円で月額約38.8万円となり、社会保険料と税金で約134万円が徴収されます。
東京都で働く年収400万円の従業員の場合、2025年度の改定による年間の負担軽減額は、介護保険料が40歳以上であれば約200円、健康保険料が約1,400円、雇用保険料が約2,000円で、合計約3,600円の負担軽減となります。大きな金額ではありませんが、複数の保険料が同時に引き下げられることで、わずかながら手取り額が増加します。
事業主負担削減の戦略的アプローチ
社会保険料の事業主負担は企業にとって大きなコストとなるため、適切な方法で負担を削減することは重要です。まず検討すべきなのが昇給タイミングの調整です。社会保険料の標準報酬月額は毎年4月から6月の3か月間の報酬の平均額を基に決定されるため、昇給のタイミングを7月以降に設定することで、標準報酬月額の上昇を1年先送りすることができます。ただし、この方法は従業員の理解と協力が必要であり、慎重な説明と合意形成が重要です。
助成金の活用も効果的な方法です。2025年7月1日に新設されたキャリアアップ助成金の短時間労働者労働時間延長支援コースでは、パートタイマーなどの労働時間延長や賃金増額などを行い、新たに社会保険を適用させた場合に助成金が支給されます。対象となるのは短時間労働者を新たに社会保険の被保険者とした事業主で、1人あたり数十万円の支給を受けられる可能性があります。
従業員数50人以下の企業などで働き、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者で標準報酬月額が12.6万円以下の場合、3年間限定の特例措置により保険料の本人負担を最大50パーセント抑えることができます。この特例を活用することで、従業員の手取り減少を抑えつつ、社会保険への加入を促進できます。
健康経営の推進も長期的な視点では重要です。従業員の健康管理を積極的に行うことで、医療費の削減につながり、間接的に健康保険料率の上昇を抑制できます。健康経営優良法人の認定を受けることで、企業イメージの向上や採用力の強化にもつながるため、一石二鳥の効果が期待できます。
2025年問題と今後の保険料見通し
日本は少子高齢化が急速に進展しており、社会保険制度を取り巻く環境は厳しさを増しています。2025年問題とは、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、日本の高齢化が一層進展することを指します。2025年には国民の約5人に1人が75歳以上となり、医療費や介護費の急増が懸念されています。
75歳以上の後期高齢者の医療費は、65歳から74歳の前期高齢者の約2倍、現役世代の約5倍かかるとされています。2025年以降、後期高齢者が急増することで、医療費全体が大きく膨らむことが予想されます。このような状況を踏まえると、2025年度は一部の保険料率が引き下げられましたが、長期的には社会保険料の負担増が避けられない状況です。
健康保険料率は医療費の増加に伴い、今後も段階的に上昇する可能性が高く、介護保険料率も高齢化の進展により将来的には上昇が見込まれます。厚生年金保険料率は現在18.3パーセントで固定されていますが、年金財政の状況次第では将来的な見直しの可能性も完全には否定できません。
現役世代が取るべき対策と準備
社会保険料の負担増が避けられない中で、現役世代が取るべき対策として、まず自助努力による老後資金の準備が挙げられます。iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)などの制度を活用し、老後資金を計画的に準備することが重要です。これらの制度は税制優遇があるため、効率的な資産形成が可能です。
健康維持への投資も長期的には重要な対策です。医療費を抑えるためには、日頃から健康管理に気を配り、病気の予防に努めることが大切です。定期的な健康診断の受診、適度な運動、バランスの良い食事、十分な睡眠など、基本的な健康習慣を維持することで、将来的な医療費負担を抑えることができます。
働き方の見直しも検討すべきポイントです。可能な限り長く働き続けることで、年金受給期間を短くし、生涯収入を増やすことができます。定年後も再雇用や再就職により働き続けることで、経済的な安定を得られるだけでなく、社会とのつながりを維持し、健康寿命を延ばす効果も期待できます。
社会保険制度の理解を深めることも重要です。社会保険制度の仕組みを正しく理解し、受けられる給付を適切に活用することで、保険料負担に見合った恩恵を受けることができます。傷病手当金、出産手当金、育児休業給付、介護休業給付など、様々な給付制度があるため、必要な時に適切に利用できるよう知識を持っておきましょう。
最新情報の入手方法と信頼できる情報源
社会保険料の改定や制度改正は頻繁に行われるため、常に最新情報を確認することが重要です。全国健康保険協会(協会けんぽ)の公式サイトでは、健康保険料率や介護保険料率の最新情報が掲載されており、都道府県別の料率表も確認できます。協会けんぽで検索すれば、すぐに公式サイトにアクセスできます。
厚生労働省の公式サイトでは、社会保険制度全般に関する情報、法改正の内容、統計データなどが掲載されています。政策の方向性や将来的な制度改正の予定なども確認できるため、長期的な視点での対策を検討する際に有用です。
日本年金機構の公式サイトでは、厚生年金保険に関する情報や手続き方法などが掲載されています。年金の受給見込み額を試算できるツールなども提供されており、老後の資金計画を立てる際に役立ちます。
ハローワーク(公共職業安定所)の公式サイトでは、雇用保険に関する情報や助成金の情報などが掲載されています。失業時の給付手続きや育児休業給付、介護休業給付などの情報も詳しく説明されています。
給与計算ソフトやシミュレーションツールを活用することで、自分の社会保険料や手取り額を簡単に計算できます。マネーフォワード クラウド給与、社労士クラウド、アカウントエージェント、各種税金・社会保険料計算サイトなど、多くの無料ツールが提供されています。これらのツールでは、年収や都道府県を入力するだけで、社会保険料、税金、手取り額を自動計算できるため、2025年度の最新料率に対応したツールを選んで活用しましょう。
まとめと今後の展望
2025年度の社会保険料改定では、介護保険料率と雇用保険料率が引き下げられ、特に雇用保険料率については8年ぶりの引き下げとなりました。健康保険料率は都道府県により引き下げまたは引き上げとなり、全体としては負担軽減の傾向にあるといえます。施行時期は健康保険料率と介護保険料率が2025年3月分から、雇用保険料率が2025年4月1日からとなっており、企業は給与計算システムの更新や従業員への周知など、適切な対応が求められます。
また、2025年6月に成立した年金制度改正法により、106万円の壁の撤廃が決定し、2028年までに段階的に施行される見通しです。企業規模要件も2027年10月から段階的に撤廃され、2035年10月には全面適用となるため、企業は長期的な視点での対応が必要となります。
長期的には少子高齢化の進展により社会保険料の負担増が避けられない状況ですが、2025年度は一時的な負担軽減の年となっています。企業も個人も、この機会に社会保険制度への理解を深め、適切な対応を取ることが重要です。最新の情報は協会けんぽや厚生労働省の公式サイトで随時更新されていますので、定期的に確認することをお勧めします。社会保険料は私たちの生活に直結する重要な制度であり、正しい知識を持つことで、将来に向けた適切な準備ができるのです。

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