NTT固定電話の値上げはいつから?対象プランと基本料金・通話料の変更点を解説

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NTT固定電話の値上げは、2024年1月のIP網移行に伴う通話料の全国一律化、2025年7月からのユニバーサルサービス料の増額、そして将来的に予定されている紙請求書発行手数料の有料化という3つの要素で構成されています。対象となるプランは加入電話とINSネットが中心であり、基本料金は住宅用で月額約1,870円、事務用で月額約2,750円と高止まりしたままです。通話料については距離や時間帯を問わず全国一律3分9.35円(税込)に統一され、遠距離通話が多い方には値下げとなる一方、市内通話のみを利用していた方や深夜割引を活用していた方にとっては実質的な値上げとなっています。

この記事では、NTT固定電話の料金体系がどのように変わったのか、対象プランごとの基本料金と通話料の詳細、そして2026年以降に予定されている請求書発行手数料の有料化がどの程度家計に影響するのかを詳しく解説します。さらに、ソフトバンクやドコモが提供する代替サービスへの乗り換えで月額料金を半額以下に抑える方法についてもご紹介しますので、固定電話の維持費用を見直したい方はぜひ最後までお読みください。

NTT固定電話の値上げとは何を指すのか

NTT固定電話における「値上げ」という言葉は、単純に基本料金や通話料の単価が上がることだけを意味するものではありません。2024年から2026年にかけて進行している料金体系の変化は、複数の要素が複合的に絡み合った複雑なものとなっています。

まず理解しておきたいのは、NTT東日本およびNTT西日本が運営する固定電話網が、2024年1月に従来のアナログ回線(PSTN:公衆交換電話網)からIP網へと完全に移行したという事実です。この技術的な転換に伴い、通話料金の計算方法が根本から見直されました。かつては電話をかける相手との物理的な距離に応じて料金が変動する仕組みでしたが、IP網では音声データをパケットとして転送するため、距離によるコスト差がほとんど生じません。この特性を反映して、通話料は全国一律料金へと改定されたのです。

一方で、毎月発生する基本料金については、IP網への移行後も従来の料金体系がほぼ維持されています。これは、各家庭まで引かれているメタルケーブル(銅線)を維持するためのコストが依然として必要であるためです。さらに、2026年以降には紙の請求書を受け取る際に発行手数料がかかるようになる計画も発表されており、デジタル化に対応できない利用者にとっては「見えない値上げ」として家計を圧迫する可能性があります。

IP網移行で通話料はどう変わったのか

2024年1月1日以降、NTT固定電話の通話料金体系は劇的に変化しました。最も大きな変更点は、距離と時間帯による料金差が完全に廃止され、全国どこにかけても一律料金となったことです。

現在、加入電話およびINSネットから固定電話宛てに発信する場合の通話料は、3分あたり9.35円(税込)に設定されています。東京から隣の家に電話をかけても、北海道や沖縄に電話をかけても、この料金は変わりません。かつて県外通話が3分間で数百円もかかっていた時代を思えば、遠距離通話を頻繁に行う方にとっては大幅な値下げと言えます。

しかし、この変更がすべての利用者にとってメリットとなるわけではありません。以前の市内通話料金は3分あたり8.5円から9円程度に設定されていましたので、近距離通話のみを利用していた方にとっては、わずかながら単価が上昇したことになります。

さらに影響が大きいのは、深夜早朝割引やテレホーダイといった割引サービスが2024年1月をもって終了したことです。IP網においては、通話の時間帯によってネットワーク負荷に差が生じにくいため、夜間割引を設ける合理的な根拠がなくなりました。その結果、これまで深夜帯の通話を習慣としていた方や、夜間料金の恩恵を受けていた方は、全時間帯で一律料金が適用されることとなり、実質的な負担増を強いられています。

IP電話(050番号)への通話についても料金が整理されており、NTT東日本接続事業者宛てであれば3分あたり11.55円(税込)という設定になっています。従来の複雑な料金表と比較すると、現在の料金体系は非常にシンプルになったと言えるでしょう。

基本料金は値上げされていないが高止まりが続く

通話料金がフラット化される一方で、毎月固定的に発生する基本料金については、IP網移行後も従来の構造が維持されています。つまり、基本料金そのものは「値上げ」されていませんが、もともと高い水準のまま据え置かれている状態です。

NTTの加入電話には「級局(きゅうきょく)」と呼ばれる歴史的な区分が存在します。これは、その地域に収容されている電話回線の数に応じて、1級局、2級局、3級局と分類するものです。回線数が多い都市部は3級局、回線数が少ない地方部は1級局とされ、都市部ほど基本料金が高く設定されてきました。

住宅用の加入電話における基本料金は、3級局(大都市部)で月額1,700円(税抜・税込1,870円)となっています。事務用回線ではさらに高額で、3級局の場合は月額2,500円(税抜・税込2,750円)という水準です。これは住宅用の約1.5倍に相当します。

また、初期費用として施設設置負担金(約36,000円、かつての電話加入権)を支払わずに契約できる「加入電話・ライトプラン」を選択している場合は、基本料金がさらに割高になります。住宅用であっても3級局で月額1,950円(税抜・税込2,145円)程度の設定となっており、通常の加入電話と比較して月額250円(税抜)が上乗せされています。初期費用を抑えられる代わりに毎月のランニングコストが増えるこの構造は、長期間利用するユーザーにとっては累積的な負担となります。

このように基本料金が高止まりしている背景には、メタルケーブルという物理的なインフラを維持するコストがあります。光ファイバーが普及した現代においても、災害時の通話確保やインターネットを利用しない層へのユニバーサルサービス提供という観点から、メタル回線の維持には莫大なコストがかかり続けているのです。その結果、「使わなくても毎月約2,000円近くがかかる」という状況が続いています。

2026年に予定されている請求書発行手数料の有料化

NTT固定電話の料金に関して、現在最も注目すべきトピックは、通話料や基本料金そのものではなく、請求書発行や収納代行に関わる「付帯コストの有料化」です。これは、デジタルトランスフォーメーション推進やペーパーレス化という方針の下で計画されているものですが、デジタル機器に不慣れな高齢者層などにとっては事実上の強制的な値上げとなる可能性があります。

NTT東日本は当初、2026年1月より請求・収納業務に関する大規模な変更を実施すると発表していました。しかし、2025年10月時点の情報によると、これらの変更実施時期は「延期」されることが決定しています。延期の背景には、周知期間の不足やシステム移行に伴う混乱回避などが推測されますが、方向性として紙媒体の有料化が撤回されたわけではない点に注意が必要です。

延期前の計画に基づくと、将来的に実施される可能性が高い変更内容は以下のようなものです。これまでは個人名義のフレッツ光契約者などが主な対象であった「紙請求書の発行手数料」が、法人契約や加入電話(固定電話)単独契約者にも拡大される見込みです。

紙の請求書を希望する場合は、発行手数料として月額220円(税込)が加算される計画でした。また、口座振替のお知らせ(検針票)を紙で受け取る場合も月額165円(税込)の手数料が設定されていました。これらを合算すると年間で数千円規模の負担増となり、基本料金の1ヶ月分以上に相当するコストが発生することになります。

通話明細内訳書についても取り扱いの変更が予定されています。従来は請求書と同封されて無料で届いていた明細書が、Webでの確認を標準とする運用に切り替わり、紙媒体での送付を希望する場合は有料かつ請求書とは別送となる方針です。手数料案としては、発行手数料が1サービスあたり110円(税込)、郵送料として1通あたり110円(税込)がかかるとされており、合計で月額220円以上の負担増が見込まれていました。

ユニバーサルサービス料と電話リレーサービス料の変動

基本料金や通話料といった主要な費目に加え、毎月の請求額に上乗せされる「ユニバーサルサービス料」と「電話リレーサービス料」についても理解しておく必要があります。これらは1回線あたり数円という少額ですが、長期間の積み上げを考慮すれば無視できないコストとなります。

ユニバーサルサービス制度は、NTT東西が提供する加入電話、公衆電話、緊急通報といった不可欠な通信インフラを、採算の取れない過疎地や離島においても維持確保するために設けられた制度です。全通信事業者が応分の負担をし、その原資を利用者から徴収する仕組みとなっています。

2025年度の改定においては、このユニバーサルサービス料の単価が上昇することが発表されています。具体的には、2025年6月利用分までは月額2円(税込2.2円)であったものが、2025年7月利用分からは月額3円(税込3.3円)へと改定されます。わずか1円の増額ではありますが、これは固定電話契約数の減少に伴い、1番号あたりの負担コストが増加傾向にあることを示しています。

総務省の将来像に関する報告書では、2030年頃を目処にユニバーサルサービスの提供手段を固定網(メタル線)のみに依存せず、モバイル網やワイヤレス技術と組み合わせて効率化する方向性も議論されており、将来的にはこの負担金のあり方自体が抜本的に見直される可能性もあります。

電話リレーサービス料については、聴覚や発話に困難がある方が手話通訳オペレーターなどを介して電話を利用できるサービスを支援するためのものです。2025年度(2025年4月から2026年3月利用分)については、月額1円(税込1.1円)という設定が維持される見通しです。この制度は年度ごとの必要経費予算に基づいて単価が算定されるため、年によっては0円になることもあれば変動することもあります。

対象プランごとの影響範囲を整理する

ここで、NTT固定電話の値上げがどのプランにどのような影響を与えるのか、整理してみましょう。

加入電話は、IP網移行の直接的な対象となったプランです。通話料は全国一律化され、遠距離通話が安くなった一方で、深夜割引などが廃止されたため夜間通話が多い方には負担増となっています。基本料金は変更されていませんが、高止まりの状態が続いています。2026年以降に予定される紙請求書の有料化が実施されれば、追加コストが発生する可能性があります。

INSネットも加入電話と同様にIP網移行の対象となりました。特に注意すべきは、2024年1月にINSネット(ディジタル通信モード)が終了したことです。これはPOSレジや警備端末、企業間電子商取引などで利用されていたデータ通信機能であり、多くの企業がインターネットベースの通信手段への移行を余儀なくされました。2025年12月現在においても、システムの改修が完了していない企業や、代替手段での動作が不安定といった課題が残存している可能性があります。

ひかり電話は、もともとIP網をベースとしたサービスであるため、IP網移行による通話料の変更は受けていません。ただし、請求書発行手数料の有料化などの事務的な変更については、ひかり電話の利用者も対象となる可能性があります。

NTT固定電話の料金を他社サービスと比較する

NTT固定電話の料金構造を見直す上で、競合他社が提供する代替サービスとの比較は欠かせません。これらのサービスは物理的な電話線を必要とせず、携帯電話網(LTE/4G/5G)を利用して固定電話番号を提供するものであり、「工事不要」「基本料半額」といった特徴を持っています。

ソフトバンクが提供する「おうちのでんわ」は、LTE回線を利用した固定電話サービスです。最大の特徴は、NTT加入電話と比較して圧倒的に安価な基本料金設定にあります。単体契約でも月額1,078円(税込)と、NTTの3級局住宅用基本料金(約1,870円)と比較して4割以上安くなっています。さらに、ソフトバンクのインターネットサービス(SoftBank Airなど)やスマートフォンとセットで利用する場合は、月額基本料金が550円(税込)まで引き下げられます。

NTTドコモも「homeでんわ」というサービスを展開しています。これは同社のホームルーター「home 5G」などと組み合わせて利用することを想定したもので、月額基本料金(ライトプラン)は1,078円(税込)に設定されています。

これらの代替サービスは番号ポータビリティ(LNP)にも対応しているため、NTTで長年使ってきた電話番号をそのまま移行することができます。乗り換えのハードルが低くなっている点も見逃せません。

具体的なコストシミュレーションを行ってみましょう。NTT加入電話(3級局・住宅用)を維持し、仮に紙の請求書(220円)と通話明細(220円)を有料で受け取り続けた場合、月額コストは約2,300円を超える計算となります。一方で、代替サービスのセット割(550円)に移行すれば、月額コストは4分の1以下に圧縮されます。年間で換算すれば約2万円もの差額が生じることになり、この経済的格差が固定電話離れやNTT離れを加速させる大きな要因となっています。

固定電話料金改定に便乗した詐欺に注意

通信環境の大きな変化は、情報の非対称性を悪用する悪質業者にとって格好のターゲットとなっています。特に問題視されているのが、「2024年にアナログ回線が廃止される」「今の電話機が使えなくなる」といった虚偽の説明を用いて、不要な光回線契約や高額な機器販売を行う手口です。

また、逆に光回線を利用している高齢者に対して、「アナログ回線に戻せば料金が安くなる」と勧誘し、高額な代行手数料(数万円単位)を請求する「アナログ戻し」と呼ばれるトラブルも急増しています。

実際には、IP網への移行は電話局内の設備を切り替えるものであり、利用者の自宅にある電話機や配線が使えなくなるわけではありません。NTT東西や国民生活センターは、こうした便乗商法に対して強い警鐘を鳴らしています。

不審な勧誘を受けた場合は、「電話機はそのまま使える」「勝手に契約が変わることはない」という基本原則を理解し、毅然とした対応をとることが大切です。判断に迷った場合は、NTTの公式窓口や消費生活センターに相談することをお勧めします。

固定電話の料金を抑えるためにできること

ここまでの分析を踏まえ、NTT固定電話の利用者が料金負担を軽減するためにとるべき具体的なアクションを3つご紹介します。

第一に、請求スタイルのデジタル化です。2026年以降に予定される紙請求書の有料化を見据え、Web明細(@ビリング等)への登録を早期に済ませておくことが、無駄なコストを回避する最良の策です。クレジットカードや口座振替による支払い方法への移行も合わせて検討するとよいでしょう。

第二に、契約形態の最適化です。インターネット回線を契約している家庭であれば、ひかり電話や「おうちのでんわ」「homeでんわ」といった代替サービスへ移行することで、基本料金を大幅に削減できます。固定電話番号の維持のみが目的となっている場合は、そのコストパフォーマンスを改めて評価すべき時期に来ています。

第三に、正しい情報による自己防衛です。IP網移行やアナログ戻しに関する詐欺的な勧誘に対しては、正確な知識を持って対応することが求められます。不審な電話や訪問があった場合は、その場で契約せず、必ず公式窓口で確認するようにしましょう。

まとめ:NTT固定電話の値上げは複合的な要因で構成されている

NTT固定電話の「値上げ」は、単なる単価の上昇ではなく、通信インフラの維持コスト構造の変化とデジタル化への移行プロセスが複合的に影響したものです。基本料金の高止まり、紙媒体への課金計画、ユニバーサルサービス料の増額といった要素は、すべて従来型の利用形態を続ける場合にコスト負担が増えることを意味しています。

2024年1月のIP網移行により通話料は全国一律3分9.35円(税込)となり、遠距離通話は大幅に安くなりました。しかし、深夜割引の廃止や市内通話単価のわずかな上昇により、利用パターンによっては実質値上げとなるケースもあります。

基本料金は住宅用で月額約1,870円、事務用で月額約2,750円と高止まりしており、ライトプランを選択している場合はさらに割高となります。2025年7月からはユニバーサルサービス料が月額3円に増額され、2026年以降には紙請求書発行手数料として月額220円が加算される計画も控えています(実施時期は延期中)。

一方で、ソフトバンクの「おうちのでんわ」やドコモの「homeでんわ」といった代替サービスを利用すれば、月額550円から1,078円程度で固定電話番号を維持することが可能です。年間で2万円近い節約につながる可能性があるため、固定電話の維持費用を見直したい方は、これらのサービスへの乗り換えを検討してみてはいかがでしょうか。

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