年金受給者の医療費控除|確定申告不要制度の誤解で損していませんか?

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年金受給者の医療費控除は、確定申告不要制度を利用していても申告する権利があり、還付を受けられる可能性があります。多くの年金受給者が「確定申告不要制度の対象だから何もしなくてよい」と誤解していますが、これは申告義務が免除されるだけであり、医療費控除などによる還付申告の権利まで失われるわけではありません。この誤解により、本来受け取れるはずの還付金を逃している高齢者が数多く存在しています。

本記事では、年金受給者が知っておくべき医療費控除と確定申告不要制度の正しい関係、広く信じられている誤解の実態、そして住民税や社会保険料への影響について詳しく解説します。適切な申告を行うことで、税金の還付だけでなく、住民税の軽減や社会保険料の抑制にもつながる可能性があることを理解していただけるでしょう。

公的年金等に係る確定申告不要制度とは

公的年金等に係る確定申告不要制度は、平成23年分(2011年分)の所得税から導入された仕組みです。この制度は、高齢者の事務負担を軽減することを主な目的として創設されました。年金受給者の多くが高齢であることを考慮し、確定申告という煩雑な手続きを省略できるようにしたものです。

この制度を利用できるのは、二つの要件をいずれも満たす場合に限られます。第一の要件は、その年中の公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であることです。ここでいう「収入金額」とは、税金や社会保険料が差し引かれる前の額面金額を指します。「公的年金等」には、国民年金、厚生年金、共済年金などの公的な給付に加え、適格退職年金契約に基づいて支払われる企業年金なども含まれますが、生命保険会社などが販売する個人年金保険の給付は含まれません。

第二の要件は、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であることです。これには、給与所得、個人年金保険に係る雑所得、配当所得、不動産所得、一時所得などが含まれます。シルバー人材センターからの配分金や、個人年金の受取額、生命保険の満期金などがこれに該当します。

「申告不要」の言葉に潜む重大な誤解

確定申告不要制度における最大の問題点は、「申告不要」という言葉が一般市民の感覚では「手続きの完全免除」や「税務の終了」と同義に解釈されやすいことです。制度が「申告を要しない」としているのは、あくまで国税である所得税の確定申告義務についてのみとなります。これは申告をする権利、つまり還付申告まで剥奪するものではなく、また地方税である住民税の申告義務を免除するものでもありません。

多くの年金受給者は、毎年1月に日本年金機構などから送付される「公的年金等の源泉徴収票」を受け取った際、「自分は年金収入が400万円以下であり、他に所得もないから何もしなくてよい」と即断してしまう傾向にあります。しかし、この判断が本来受け取れるはずの税金の還付を放棄することに繋がったり、住民税の算定において不利な扱いを受ける原因となったりするケースが後を絶ちません。

公的年金等からは、原則として所得税が源泉徴収されています。この徴収額は、受給者が提出した「扶養親族等申告書」に基づいて計算された概算額です。しかし、現役世代の給与所得における「年末調整」のような年間の最終的な税額を精算する仕組みは、公的年金には存在しません。したがって、源泉徴収された税額が本来納めるべき税額よりも多かった場合、受給者自身が確定申告を行わない限り、その差額は永遠に精算されず、国庫に帰属することになります。

年金受給者の医療費控除における「10万円神話」の真実

医療費控除は、納税者本人または生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に受けられる所得控除です。高齢期においては、持病の治療や入院、介護サービスの利用などにより医療費支出が増加する傾向にあるため、この控除の適用可否は家計に大きな影響を与えます。

一般に「医療費が年間10万円を超えたら申告が必要」という認識が広く定着していますが、これは正確ではありません。所得税法では、医療費控除の対象となる金額について、「10万円」または「その年の総所得金額等の5%」のいずれか低い方の金額と規定しています。

年金受給者の多くは現役時代に比べて所得が低下しています。公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を差し引いた「雑所得」の金額が、総所得金額等の大部分を占めることになります。この総所得金額等が200万円未満である場合、足切り額は10万円ではなく、総所得金額等の5%となります。

具体的な数値で説明すると、65歳以上で年金収入のみが200万円の単身者の場合、公的年金等控除額は110万円であるため、雑所得は90万円となります。この90万円に対する5%は「4万5,000円」です。つまり、このケースでは年間の医療費負担が10万円に達していなくとも、4万5,000円を超えた部分について医療費控除が適用可能となります。

さらに所得が低いケース、例えば年金収入が150万円の場合を考えると、雑所得は40万円となり、その5%はわずか「2万円」となります。この場合、年間2万円を超える医療費があれば控除の対象となります。この「5%ルール」の看過は、年金受給者における最大の機会損失の一つであり、実際には数万円単位の還付を受けられるにもかかわらず、10万円に満たないという理由で申告を諦めている高齢者が多数存在すると推測されます。

介護施設利用料と医療費控除の複雑な関係

高齢者の医療費控除においては、何が「医療費」として認められるかの判断が複雑化しやすい傾向があります。特に介護保険制度との交差領域においては、施設の種類やサービスの内容によって控除の可否が異なるため、専門的な知識を要します。

介護施設における費用の控除対象範囲は、その施設が「医療提供施設」としての性格をどの程度有しているかによって決定されます。特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)の場合は生活施設としての性格が強いため、施設サービスの対価として支払った額の「2分の1」相当額のみが医療費控除の対象となります。領収書には通常、医療費控除対象額が記載されているため、確認が必要です。

一方、介護老人保健施設(老健)、介護医療院の場合は医療提供施設としての性格が強いため、支払った施設サービス対価の「全額」が医療費控除の対象となります。ただし、日常生活費や特別なサービス費用は対象外です。有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの「特定施設」においては、原則として施設利用料そのものは医療費控除の対象外となります。ただし、外部の医療機関による訪問診療や訪問看護を受けた場合の費用は対象となります。

居宅サービスにおいても、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション(デイケア)などの「医療系サービス」は単独で控除対象となります。一方で、訪問介護や通所介護(デイサービス)などの「福祉系サービス」は単独では控除対象とならないものの、医療系サービスと併せてケアプランに基づいて一体的に利用する場合には、一部が控除対象となる特例が存在します。

おむつ代と通院費用の医療費控除における取り扱い

排泄ケアにかかる費用である紙おむつ代は、通常の日用品費として扱われ医療費控除の対象外ですが、傷病によりおおむね6ヶ月以上寝たきりの状態にあり、医師が治療上おむつの使用が必要と認めた場合に限り、例外的に対象となります。

この適用を受けるためには、初年度は必ず医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要となります。しかし、おむつ代の医療費控除を受けるのが2年目以降である場合には、介護保険法の要介護認定を受けている一定の要件を満たせば、市町村長等が発行する「おむつ使用確認書」などで代用することが可能となっています。この確認書は無料で発行される自治体が多く、事務負担と費用負担の双方を軽減する措置として重要です。

通院費用についても注意が必要です。バスや電車などの公共交通機関の運賃は、通院のために必要なものであれば全額が控除対象となります。これらは領収書が発行されないことが多いため、乗車区間、日付、運賃を家計簿などに記録しておくことで証拠資料として認められます。

タクシー代については取扱いが厳格であり、「病状からみて急を要する場合や、電車・バス等の利用が困難な場合」に限定して控除が認められます。単に「バス停まで歩くのが面倒だから」という理由だけでは否認されるリスクがあります。しかし、要介護度が高く単独での歩行が困難である場合や、認知症により公共交通機関の利用が危険である場合など、客観的にタクシー利用の必然性が認められる場合には控除対象となる余地があります。自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場代は、一切控除の対象とならない点も誤解が多いポイントです。

セルフメディケーション税制との選択適用を考える

平成29年(2017年)から導入されたセルフメディケーション税制は、健康の維持増進及び疾病の予防への取組を行っている個人が、特定のスイッチOTC医薬品を年間1万2,000円以上購入した場合に、その超える部分を所得控除できる制度です。上限は8万8,000円となっています。

この制度は従来の医療費控除との「選択適用」であり、両方を同時に利用することはできません。したがって、納税者はどちらの制度を利用する方が有利かを判断する必要があります。年金受給者において、年間の医療費総額が「5%ルール」の足切り額にも満たない場合であっても、対象となる市販薬の購入額が多ければ、セルフメディケーション税制を選択することで減税が可能となる場合があります。

具体例として、年金収入200万円(所得90万円)の人が、通院医療費は2万円だが対象OTC医薬品を5万円購入していたケースを考えます。通常の医療費控除の場合、医療費合計2万円は足切り額4万5,000円を下回るため控除額は0円となります。一方、セルフメディケーション税制の場合、購入額5万円は足切り額1万2,000円を上回るため、控除額は3万8,000円となります。大きな病気による通院はないものの、慢性的な関節痛などでドラッグストアで湿布薬を頻繁に購入している高齢者にとっては、検討に値する選択肢です。

住民税における「20万円ルール」は存在しないという真実

年金受給者が税務に関して最も誤解しやすく、かつ不利益を被りやすい点が住民税における申告義務の有無です。所得税の確定申告不要制度における「公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下なら申告不要」というルールは、あくまで国税である所得税特有の規定であり、地方税である住民税には適用されません。

住民税は地域社会の会費的な性格を持つ税金であり、所得の多寡にかかわらず広く負担を求める均等割と、所得に応じて負担する所得割から構成されます。このため、住民税には所得税のような「少額不追求」の免除規定は存在しません。

具体例を挙げると、年金を受給しながらシルバー人材センターで働き、年間15万円の配分金を得ている場合や、生命保険の満期金で一時所得が5万円発生した場合などがこれに該当します。この場合、所得税については確定申告不要制度により申告義務はありませんが、住民税についてはその15万円や5万円の所得を含めて申告する義務が生じます。この申告を怠ると、市区町村は正確な所得情報を把握できず、所得証明書が正しく発行されなかったり、国民健康保険料や介護保険料の算定において正しい所得割額が計算されなかったりする恐れがあります。

確定申告不要制度と住民税申告の関係

確定申告不要制度を利用して所得税の確定申告を行わなかった場合でも、住民税の申告が必要、あるいは申告した方が有利になるケースが存在します。それは、公的年金等の源泉徴収票に記載されていない「各種控除」を追加したい場合です。

源泉徴収票には、社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除などは記載されていますが、個人で直接納付した社会保険料、生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除、雑損控除などは反映されていません。所得税の確定申告をした場合、そのデータは税務署から市区町村へ自動的に転送されるため、改めて住民税の申告をする必要はありません。しかし、確定申告をしない場合、これらの控除情報は市区町村に一切伝達されません。

その結果、住民税の計算においてこれらの控除が適用されず、本来よりも高い住民税が課されることになります。「自分は所得税がかからないから関係ない」と考えていても、住民税には均等割と所得割があり、控除の適用によって所得割が非課税になったり、均等割のみの負担になったりする場合があるため、家計への影響は無視できません。

住民税非課税世帯になることの大きなメリット

年金受給者にとって、「住民税非課税世帯」に該当するか否かは、単なる数千円から数万円の税負担の有無以上の極めて大きな社会的意味を持ちます。日本の社会保障制度や福祉施策においては、「住民税非課税世帯」であることを要件として、様々な負担軽減措置や給付が行われているからです。

主なメリットとして、高額療養費制度における自己負担限度額の引き下げ、介護保険料の所得段階区分の引き下げによる保険料の減額、入院時の食事代の減額、さらには自治体独自のインフレ対策給付金や高齢者向け福祉パスの交付などが挙げられます。これらは年間で見ると数十万円規模の経済的価値を持つ場合があります。

住民税の非課税限度額は、生活保護基準の級地区分に基づき自治体によって異なります。東京23区の場合を例にとると、単身世帯では「合計所得金額」が45万円以下であれば非課税となります。これを年金収入に換算すると、65歳以上の場合、公的年金等控除額(110万円)に45万円を加えた「155万円」が非課税のボーダーラインとなります。夫婦世帯の場合、世帯主の年金収入が「211万円」以下であれば非課税となる計算になります。これがいわゆる「211万円の壁」と呼ばれるものです。

医療費控除などの「所得控除」を申告しても、住民税の均等割の非課税判定には影響しません。均等割の非課税判定は「合計所得金額」を用いるため、医療費控除をいくら積み上げても判定基準となる所得金額自体は変わりません。一方で、所得割については各種所得控除を差し引いた後の金額に税率をかけるため、医療費控除を申告することで所得割がゼロになる可能性はあります。

還付申告という権利と5年間の猶予期間

確定申告不要制度の対象者であっても、源泉徴収された所得税がある場合、確定申告を行うことで税金が戻ってくる可能性があります。特に医療費控除や寄附金控除は年末調整では対応できないため、確定申告が必須の手続きとなります。

還付申告は、通常の確定申告期間である2月16日から3月15日にかかわらず、対象となる年の翌年1月1日から「5年間」行うことができます。つまり、過去に遡って「申告し忘れていた医療費」を申告することも可能です。例えば、2022年分の医療費控除を忘れていた場合、2027年12月31日まで申告が可能です。この「5年間の猶予」は、体調不良や入院などで申告時期を逃しやすい高齢者にとって重要なセーフティネットとなっています。

社会保険料への影響を正しく理解する

年金受給者が確定申告を行う際、最も懸念すべきは「税金はわずかに戻ってきたが、それ以上に翌年の社会保険料が上がってしまい、トータルで損をした」という事態です。このいわゆる「申告貧乏」のリスクを正しく理解するためには、社会保険料の算定基礎となる「所得」の定義を知る必要があります。

国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料の「所得割」は、基本的に「総所得金額等から基礎控除43万円を差し引いた金額」をベースに算定されます。公的年金のみの受給者が医療費控除や生命保険料控除を受けるために確定申告をする場合、このリスクは基本的に発生しません。医療費控除は「所得控除」の一種であり、これを適用しても課税所得金額等が増加することはないためです。控除の追加で保険料が上がることは構造上あり得ません。

一方、重大なリスクが潜んでいるのは、特定口座(源泉徴収あり)で運用している株式の譲渡益や配当所得を申告する場合です。これらの所得は通常、申告不要を選択できます。しかし、株式の譲渡損失と配当所得の損益通算を行って還付を受けたり、配当控除を受けたりするために確定申告を行うと、その株式等の所得が「合計所得金額」や「総所得金額等」に算入されることになります。その結果、保険料の算定基礎額が増加し、保険料が跳ね上がる可能性があります。

例えば、配当所得が100万円あり、配当控除を受けるために申告をしたとします。所得税・住民税で数万円の還付を受けられたとしても、国民健康保険料の所得割率が10%程度であれば、保険料が10万円近く跳ね上がり、還付額を上回る負担増となる「逆転現象」が発生します。令和6年度(2024年度)からは所得税と住民税の課税方式を一致させる改正が適用されており、かつてのような使い分けはできなくなりました。

後期高齢者医療制度の窓口負担割合への波及

75歳以上の後期高齢者医療制度において、医療機関の窓口負担割合は住民税の課税所得金額などに基づいて判定されます。株式譲渡益などを申告して「合計所得金額」や「課税所得金額」が増加すると、「現役並み所得者」として3割負担や「一定以上所得者」として2割負担の基準に抵触するリスクがあります。

課税所得が145万円以上になると3割負担となりますが、株式等の利益を申告したことでこのラインを超えてしまうと、日々の医療費負担が大幅に増加するという甚大な影響が生じます。医療費控除を受けるための申告そのものが窓口負担を上げることはありませんが、申告に伴って他の所得を顕在化させる場合には細心の注意が必要です。

よくある誤解と具体的な対策

「400万円以下だから医療費控除も受けられない」という誤解を持つ方が多くいます。確定申告不要制度は「義務」の免除であり、「権利」の行使を妨げません。源泉徴収票の「源泉徴収税額」の欄に金額が入っていれば、医療費控除によってその税金を取り戻せる可能性が高いです。

「医療費が10万円いかないから諦める」という方も多いですが、所得が200万円未満であれば「5%ルール」が適用されます。年金収入180万円で所得70万円の場合、医療費控除の足切り額は所得の5%、すなわち「3万5,000円」となります。8万円の医療費であれば、4万5,000円分が控除対象となります。

「申告したら保険料が上がって損をする」と心配される方もいますが、医療費控除の追加のみであれば、これは課税対象となる所得を「減らす」手続きです。国民健康保険料や介護保険料が上がる要素はありません。このリスクは株式譲渡益の申告の場合であり、医療費控除とは異なります。

「住民税の申告など知らなかった」という方は、所得税の確定申告をしない場合でも毎年3月15日までに市区町村へ「住民税の申告書」を提出する習慣をつけることが重要です。特に、源泉徴収票に記載されない控除がある場合は必須です。

2025年以降の制度改正と年金受給者への影響

後期高齢者医療制度の保険料において、少子化対策としての財源確保などを背景に、賦課限度額の引き上げや所得割率の変更が行われています。これにより、一定以上の所得がある年金受給者の保険料負担は増加傾向にあります。医療費控除による所得の圧縮は、こうした保険料負担増に対する数少ない対抗策となり得ます。国民健康保険料についても上限額の引き上げが続いており、中間所得層以上の負担感は増しています。

手続き面では、2025年からマイナンバーカードを利用したe-Taxの利便性が向上し、スマートフォンでの申告がより簡便になりました。高齢者にとってはデジタルデバイドの壁があるものの、代理送信やサポート体制の拡充により、自宅から医療費控除を申告できる環境が整いつつあります。マイナポータル連携を利用すれば、医療費通知情報が自動入力されるため、領収書の集計作業から解放されるメリットがあります。

インフレと年金額改定がもたらす新たな課題

物価上昇に伴い、公的年金の支給額もマクロ経済スライド等により改定される傾向にあります。しかし、年金収入が増加することは受給者にとって必ずしも手放しで喜べることばかりではありません。額面収入が増えることで、同時に税や社会保険料の負担増も招くからです。

特に深刻なのは、年金収入が非課税限度額の境界線上にある層です。単身で155万円前後、夫婦で211万円前後の方が該当します。わずかな年金増額によって、これまでの「住民税非課税世帯」から「課税世帯」へと転落し、介護保険料が数段階跳ね上がったり、高額療養費の限度額が上がったり、各種給付金を失ったりする「年金の壁」問題が顕在化する恐れがあります。

このような状況下において、医療費控除や扶養控除、雑損控除などの「使える控除」を漏れなく申告し、課税所得を抑制することの重要性はかつてないほど高まっています。単なる節税ではなく、社会保障上の地位を守るための戦略として確定申告を捉え直す必要があります。

年金受給者が実践すべき3つの原則

年金受給者が自身の資産を守り、適正な社会保障負担で生活を送るためには、三つの原則を徹底することが重要です。

第一に、源泉徴収票の「精読」と「疑念」です。送られてきた源泉徴収票をただ保管するのではなく、税金が引かれているか、適用されていない控除がないかを必ず確認します。「何もしなくてよい」という思い込みを捨てることが大切です。

第二に、医療費の「記録」と「5%ルール」の意識です。領収書を保管し、年間支出額を把握します。自身の所得が低い場合は、10万円ではなく5%ルールで控除可能かを常に念頭に置きます。

第三に、住民税の「意識」と「分離」です。確定申告不要イコール税務手続き終了と考えず、住民税の申告が必要かどうかを自治体の窓口やホームページで確認します。特に、所得税は申告不要でも住民税は申告すべきケースを見逃さないことが重要です。

制度の誤解を解き、適切な申告行動をとることは、単なる数百円、数千円の節税にとどまらず、老後の経済的安定性を確保し、インフレや負担増の波から家計を守るための能動的な防衛手段となります。確定申告のシーズンに限らず、5年間の還付申告期間を活用し、過去の医療費についても今一度見直しを行うことが推奨されます。

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