ロッテガム自主回収の理由とは?違反成分メチルパラベンとPEGエステル類を徹底解説

社会

2026年1月26日、株式会社ロッテは主力ガムブランドの一部製品から、日本で使用が認められていない食品添加物が検出されたとして自主回収を発表しました。検出された成分は「メチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル)」と「PEGエステル類(ポリエチレングリコールエステル)」の2種類であり、原材料として使用されていた「エンドウたんぱく」に由来するものでした。本件は食品衛生法に基づく指定添加物の使用基準に違反するものですが、検出された物質は国際的に安全性が確認されており、健康への影響は極めて低いとされています。

この記事では、ロッテのガム製品における食品添加物違反の詳細について、検出された成分の特性から回収対象製品、違反となった法的背景、そして消費者が知っておくべき安全性の情報まで、包括的に解説していきます。今回の事案がなぜ発生し、どのような影響があるのかを正確に理解することで、過度な不安を持つことなく適切に対応できるようになります。

  1. ロッテガム自主回収の経緯と回収対象製品
    1. 回収対象となった3製品の詳細
  2. 検出された成分「メチルパラベン」の詳細と特性
    1. メチルパラベンの物理化学的性質
    2. メチルパラベンが使用される理由と作用機序
    3. メチルパラベンの海外における使用状況
  3. 検出された成分「PEGエステル類」の詳細と特性
    1. PEGエステル類の機能と食品産業での役割
  4. なぜ「エンドウたんぱく」に問題の成分が含まれていたのか
    1. エンドウたんぱくが注目される背景
    2. ガム製造における「アラビアガム代替」としての役割
    3. 海外サプライチェーンにおける基準の相違
  5. 日本の食品衛生法における「違反」の法的根拠
    1. 食品衛生法第12条とポジティブリスト制度の仕組み
    2. メチルパラベンの日本における法的地位
    3. PEGエステル類の法的扱いと指定外添加物の問題
    4. キャリーオーバーの適用が認められない理由
  6. 健康への影響と安全性評価の科学的根拠
    1. JECFAによる安全性評価と一日摂取許容量
    2. 実際の摂取量と健康リスクの推計
    3. PEGエステル類の安全性について
  7. サプライチェーン管理の課題と食品業界への教訓
    1. 原材料トレーサビリティの限界と今後の対応
    2. ロッテの対応と危機管理コミュニケーション
    3. 食品業界全体が学ぶべきこと
  8. 消費者が知っておくべきポイントと今後の対応
    1. 過度な不安は不要という科学的事実
    2. 法的違反と科学的危険性の違いを理解する
    3. リコール対象製品への適切な対応
  9. まとめ

ロッテガム自主回収の経緯と回収対象製品

今回の自主回収は、2026年1月22日に原材料サプライヤーからロッテへ報告が入ったことがきっかけでした。サプライヤーから、特定の原材料ロットにおいて日本国内での使用が認められていない添加物が使用されている可能性があるとの連絡を受け、ロッテは直ちに社内調査と当該製品の成分分析を実施しました。その結果、問題の原材料である「エンドウたんぱく」を使用した製品から、食品衛生法で許可されていない成分が検出されることが判明したのです。

分析結果を受けてロッテは所管の保健所および関係省庁へ報告を行い、2026年1月26日にコンプライアンスの観点から対象製品の自主回収を決定し、プレスリリースおよび公式サイトを通じて公表しました。

回収対象となった3製品の詳細

今回回収の対象となったのは、ロッテの「フーセンガム」シリーズに属する3品目です。これらは主に子供から若年層をターゲットとした製品であり、市場での流通量は合計で約3万個に及びます。

一つ目の「めっちゃふくらむフーセンガムボトル」は、ボトル容器に入った大容量タイプで、家庭内やオフィスなどでのストック需要に応える製品形態となっています。二つ目の「めっちゃふくらむフーセンガムパウチ」は、携帯性に優れたパウチ包装の製品であり、コンビニエンスストアや駅売店などで購入されやすい形態です。三つ目の「ふ~せんの実ボトル ワクワクみっくす!」は、複数の味や食感が楽しめるアソートタイプで、エンターテインメント性を重視した製品となっています。

これら3製品に共通していたのは、製品の食感改良や製造工程上の安定化を目的として配合された「エンドウたんぱく」という原材料でした。この単一の原材料に起因する問題が、複数の主要製品ラインに波及する形となりました。

検出された成分「メチルパラベン」の詳細と特性

今回検出された成分の一つであるメチルパラベンは、正式な化学名を「パラオキシ安息香酸メチル」といいます。化学式C8H8O3で表されるこの物質は、パラオキシ安息香酸のエステル化合物の一種であり、広義の「パラベン類」に属します。パラベン類は安息香酸のパラ位に水酸基を持つ構造を基本とし、カルボキシ基にアルキル基がエステル結合しています。メチルパラベンはこのアルキル基が最も短い「メチル基」であるものを指します。

メチルパラベンの物理化学的性質

物理化学的には、メチルパラベンは無色または白色の結晶性粉末であり、無臭またはわずかに特異な臭いがあります。水への溶解度は低いものの、熱湯やエタノール、プロピレングリコールにはよく溶ける性質を持ちます。この「適度な水溶性」と「有機溶媒への溶解性」のバランスが、食品や化粧品の保存料としての使い勝手の良さにつながっています。

メチルパラベンが使用される理由と作用機序

メチルパラベンが添加される最大の理由は、その優れた「保存料」としての機能にあります。微生物であるカビ、酵母、一部の細菌の細胞膜に作用し、膜の透過性を変化させたり、細胞内の酵素活性を阻害したりすることで、微生物の増殖を抑制する静菌作用を発揮します。

特にパラベン類の特徴として、広いpH領域で効果を発揮することが挙げられます。安息香酸ナトリウムなどの他の保存料が酸性域でしか効果を発揮しにくいのに対し、パラベン類は中性付近でも抗菌活性を維持するため、食品や化粧品の処方設計において重宝されます。

メチルパラベンの海外における使用状況

世界的に見ると、メチルパラベンは食品添加物として広く認められている物質です。国連食糧農業機関と世界保健機関が合同で運営する食品添加物専門家会議であるJECFAは、1973年をはじめとする複数回の評価においてメチルパラベンの安全性を確認しています。国際的な食品規格であるコーデックス規格においても、多くの食品カテゴリーで使用が認められています。

特に米国ではFDA(食品医薬品局)により、一般に安全と認められる物質あるいは食品添加物として扱われ、飲料、菓子、調味料など多岐にわたる食品に使用されています。

検出された成分「PEGエステル類」の詳細と特性

今回検出されたもう一つの成分であるPEGエステル類は、ポリエチレングリコールと脂肪酸がエステル結合した化合物の総称です。ポリエチレングリコール部分は親水性を示し水になじむ性質があり、脂肪酸部分は親油性を示し油になじむ性質があります。このため同一分子内に水と油の両方になじむ部分を持ち、「界面活性剤」としての性質を発揮します。

PEGエステル類の機能と食品産業での役割

PEGエステル類の界面活性作用により、水と油のように本来混ざり合わない物質を均一に混合させる「乳化」、粉末を液体に分散させる「分散」、あるいは香料などの成分を溶かし込む「可溶化」といった機能が提供されます。

食品加工においては、PEGエステル類はプロセス効率の向上や品質保持のために使用されます。製造タンク内での泡立ちを抑える「消泡剤」として、あるいは粘度の高い原料の流動性を良くするための「加工助剤」として使われることがあります。今回のケースである「エンドウたんぱく」の製造においても、タンパク質の抽出・精製工程における泡立ちの抑制や、乾燥後の粉末の分散性を高めるために添加されていた可能性が考えられます。

なぜ「エンドウたんぱく」に問題の成分が含まれていたのか

今回の事案を深く理解するためには、原材料である「エンドウたんぱく」がなぜ使用され、そこにどのような背景があったのかを知ることが重要です。

エンドウたんぱくが注目される背景

近年、世界的な健康志向の高まりと環境負荷低減の観点から、植物性タンパク質の需要が急拡大しています。その中でもエンドウたんぱくは、大豆や小麦と異なり主要なアレルゲンに含まれないこと、遺伝子組み換えリスクが低いことなどから、次世代のタンパク源として注目されています。

ガム製造における「アラビアガム代替」としての役割

ガムやキャンディなどの菓子製造においては、別の重要な文脈があります。それは「アラビアガムの代替」という技術的課題です。アラビアガムはアカシア属の樹木から採取される天然の乳化剤であり、ガムの糖衣層や香料の安定化に不可欠な素材です。しかしその主産地はアフリカのスーダン周辺の「ガム・ベルト」と呼ばれる地域に集中しており、政情不安や気候変動による供給リスクを常に抱えています。

この供給不安を解消するため、食品業界ではアラビアガムに代わる乳化安定剤の開発が進められてきました。エンドウたんぱくとデキストリンをメイラード反応によって複合化させることで、アラビアガムと同等の優れた乳化分散能を持つ素材が開発されています。ロッテが今回の製品にエンドウたんぱくを採用した背景には、単なる栄養強化だけでなく、製品の安定化やサプライチェーンの強靭化を意図した高度な処方設計があったと推測されます。

海外サプライチェーンにおける基準の相違

問題となったのは、製造プロセスのグローバル基準と日本基準のズレでした。エンドウたんぱくの主要な製造地である北米や欧州、中国などでは、製造効率を高め保管中の微生物汚染を防ぐために、メチルパラベンやPEGエステル類を使用することが一般的であり、かつ合法的です。海外のサプライヤーにとってこれらの添加物は品質保持のために必要なものであり、製品のスペックの一部として当然のように使用されます。

ロッテに原料を供給したメーカーは、この海外仕様のエンドウたんぱくを日本向けの原材料として供給してしまった可能性が高く、グローバル調達における規制の非整合性がもたらした典型的なコンプライアンス事故と言えます。

日本の食品衛生法における「違反」の法的根拠

「米国で認められているなら、なぜ日本ではダメなのか」という疑問に対しては、日本の食品衛生法における「指定制度」の仕組みを理解する必要があります。

食品衛生法第12条とポジティブリスト制度の仕組み

日本の食品衛生法第12条は、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定めたもの以外の化学的合成品を食品に使用すること、およびそれを含む食品を販売することを原則禁止しています。これを「ポジティブリスト制度」と呼びます。

つまり、法律で「使ってよい」と明記されたリストにあるもの以外は、たとえ安全であっても、たとえ海外で広く使われていても、一切使用してはならないというのが日本のルールの根幹です。

メチルパラベンの日本における法的地位

日本において、パラオキシ安息香酸エステル類自体は食品添加物として指定されています。しかしその使用は極めて限定的です。具体的には、しょうゆ、酢、清涼飲料水、シロップ、果実ソース、果実および果皮など、特定の食品カテゴリーに対してのみ使用が許可されており、それぞれに使用量の上限が定められています。

今回の「ガム」というカテゴリーは、パラベン類の使用が認められている対象食品には含まれていません。したがって、たとえ微量であっても、ガムからメチルパラベンが検出された時点で「使用基準違反」となります。

PEGエステル類の法的扱いと指定外添加物の問題

PEGエステル類に関しては、日本の指定添加物リストにおいて「ポリエチレングリコール」や特定の脂肪酸エステルは存在しますが、今回検出された特定の化学構造を持つ物質の認可が存在しなかった、あるいはガムへの使用が認められていなかったと考えられます。これにより、指定外添加物の使用と判断されました。

キャリーオーバーの適用が認められない理由

日本の食品表示基準には「キャリーオーバー」という概念があります。これは原材料の加工に使用された添加物が最終食品には微量しか残らず効果を発揮しない場合に「表示」を免除する規定です。しかしこれはあくまで「表示」の話です。

そもそも日本で使用が認められていない添加物については、キャリーオーバーの概念を適用して使用を正当化することはできません。日本国内で流通する食品である以上、原材料の段階から最終製品に至るまで、すべての工程で使用される添加物が日本の法令に適合している必要があります。これが今回の自主回収に至った法的根拠です。

健康への影響と安全性評価の科学的根拠

消費者が最も懸念するのは「食べてしまったが大丈夫か」という点です。結論として、今回の事例における健康リスクは無視できるほど極めて低いと考えられます。

JECFAによる安全性評価と一日摂取許容量

食品添加物の安全性評価における世界的な権威であるJECFAは、メチルパラベンを含むパラベン類について詳細な毒性試験データを基に評価を行っています。1973年の評価において、JECFAはメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンの合計摂取量として、体重1kgあたり0から10mgという一日摂取許容量を設定しています。

一日摂取許容量とは、人間が一生涯にわたって毎日摂取し続けても健康に悪影響が出ないと考えられる一日あたりの量のことです。動物実験で有害な影響が出なかった最大量に対し、種差や個体差を考慮して100分の1の安全係数を掛けた値として算出されます。つまり一日摂取許容量自体がすでに非常に大きな安全マージンを持った数値なのです。

実際の摂取量と健康リスクの推計

今回のガムを食べることでどれくらいのメチルパラベンを摂取することになるのかを論理的に推計すると、リスクの低さが明らかになります。ガム1粒の重量は数グラムであり、その中に含まれる原材料の一つである「エンドウたんぱく」の配合率は多くても数パーセントから十数パーセント程度です。さらにそのエンドウたんぱくの中に不純物として混入していたメチルパラベンの濃度は、ガム全体に占める割合では極めて微量になります。

仮に体重50kgの人が一日摂取許容量の上限に達するには、メチルパラベンを毎日500mg摂取する必要があります。ガム1粒に万が一0.1mgのメチルパラベンが含まれていたと仮定しても、一日摂取許容量に達するには毎日5,000粒のガムを噛み続けなければなりません。これは物理的に不可能な量です。

また、メチルパラベンは体内に入ると速やかに加水分解され、パラオキシ安息香酸となって尿中に排泄されます。体内に蓄積することはありません。

PEGエステル類の安全性について

PEGエステル類についても同様です。JECFAはポリエチレングリコール類について安全性を評価しており、多くの国で食品や医薬品の添加剤として使用されています。体内での吸収率は低く、毒性は極めて低いことが知られています。今回の混入量は微量であり、急性毒性や慢性毒性が発現する懸念はありません。

ロッテが発表において「健康への影響は極めて低い」「現在までに健康被害の報告はない」と述べているのは、こうした確固たる毒性学的根拠に基づいています。

サプライチェーン管理の課題と食品業界への教訓

今回の事例は、ロッテ一社の不祥事というよりも、食品業界全体が直面する構造的な課題を浮き彫りにしました。

原材料トレーサビリティの限界と今後の対応

従来の原材料管理では、一次サプライヤーから提出される規格書や分析証明書を確認することで品質保証を行ってきました。しかし今回のように一次サプライヤーがさらにその上流から原料を調達している場合、情報のブラックボックス化が起こりやすくなります。

特に加工助剤のように最終製品に残存しないとされる物質や、海外では表示義務のない添加物については、規格書に記載されないケースも多々あります。今後はサプライヤーに対して使用している全ての物質の開示を求めると同時に、日本向け製品の専用ラインの確保や、輸入時の受入検査項目の拡充など、より深いレベルでのトレーサビリティ管理が求められることになります。

ロッテの対応と危機管理コミュニケーション

ロッテの今回の対応は、迅速かつ適切であったと評価できます。違反発覚から数日以内に自主回収を発表し、Webでの受付体制を整え、QUOカードによる返金という具体的かつ誠実な補償策を提示しました。

また消費者の不安をあおらないよう、法的な違反であることと科学的な危険性がないことを明確に分けて説明する姿勢は、リスクコミュニケーションの観点から重要です。冷静な受け止めが多く見られるのは、この初動対応の成果と言えるでしょう。

食品業界全体が学ぶべきこと

日本の食品メーカーは、人口減少による国内市場の縮小に伴い、海外展開や海外原料の調達を加速させています。その中で各国の食品規制の違い、特に添加物の認可状況は常に最大のリスク要因です。

今回のエンドウたんぱくのような新しいプラントベース素材は、今後ますます使用が増えるでしょう。新素材の導入にあたっては、機能性やコストだけでなく、法的な適合性を原材料の起源まで遡って検証するデューデリジェンス能力が、企業の競争力そのものになると言えます。

消費者が知っておくべきポイントと今後の対応

今回の事案について消費者として押さえておくべきポイントを整理します。

過度な不安は不要という科学的事実

今回検出された成分は国際的に安全性が確認されており、混入量も微量であるため、健康被害のリスクは無視できるレベルです。すでに製品を食べてしまった方も、健康上の問題が生じる可能性は極めて低いため、過度に心配する必要はありません。

法的違反と科学的危険性の違いを理解する

今回の自主回収は、日本の厳格なポジティブリスト制度において許可されていない用途での検出が明白な法違反となったことが理由です。法的な違反があったことと、実際に健康に危険があることは別の問題として理解することが大切です。

リコール対象製品への適切な対応

リコール対象製品がお手元にある場合は、ロッテの指定する方法で回収に協力することが推奨されます。それは自身の安全のためというよりは、社会全体の食品流通の適正化に寄与する行為です。ロッテはWebでの受付体制を整えており、QUOカードによる返金対応を行っています。

まとめ

2026年1月に発生したロッテのガム製品自主回収事案は、原材料である「エンドウたんぱく」に由来する、国内未承認の食品添加物の混入によるものでした。検出された「メチルパラベン」と「PEGエステル類」は国際的に安全性が確認されている物質であり、混入量も微量であることから、健康被害のリスクは無視できるレベルです。

しかし日本の厳格なポジティブリスト制度においては、許可されていない用途での検出は明白な法違反となり、回収は避けられない措置でした。今回の事案はグローバルなサプライチェーンと日本のローカルな規制の隙間で発生したものであり、今後の新素材活用における管理体制の厳格化を促す契機となります。

消費者としては過度な不安を抱く必要はありませんが、リコール対象製品をお持ちの場合は適切に対応することで、社会全体の食品安全に貢献することができます。

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