NHK ONE解約の完全ガイド:退会手続きの方法と注意点を徹底解説

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NHKの受信契約を解約したいと考える方は年々増加しています。テレビを見なくなった、引越しをする、受信機を処分したなど、解約を検討する理由は人それぞれです。しかし、NHK受信契約の解約手続きは一般的なサブスクリプションサービスの解約とは大きく異なり、独特のルールと厳格な証明手続きが求められます。放送法第64条という法的根拠に基づく契約であるため、単に視聴していないという理由では解約できず、受信設備が物理的に存在しなくなったことを客観的に証明する必要があります。この記事では、NHK受信契約の解約手続きについて、必要な書類、具体的な手順、注意すべきポイント、さらには解約が認められにくい場合の対処法まで、あらゆる角度から徹底的に解説します。解約を考えている方、手続きに困っている方にとって、この情報は必ず役立つはずです。

NHK受信契約の基本的な仕組みを理解する

NHK受信契約を解約するためには、まずその契約の性質を正しく理解することが不可欠です。NHKは日本の公共放送機関として、特定の株主や政府の直接的な管理下にない独立した組織です。その運営資金は、視聴の対価としての料金ではなく、公共放送という社会インフラを維持するための公平負担の理念に基づく受信料によって賄われています。この受信料制度の法的根拠となっているのが放送法第64条です。

この法律は、NHKの放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、NHKとその放送の受信についての契約をしなければならないと定めています。ここで重要なのは、契約義務が視聴の意思ではなく受信設備の設置という客観的事実に基づいているという点です。つまり、実際にNHKを見ているかどうかは関係なく、受信できる設備があるだけで契約義務が発生するのです。

2017年12月には最高裁判所がこの放送法第64条の合憲性を認める判決を下しました。この判決により、受信料制度がNHKの公共的使命を達成するために合理的かつ必要な制度であることが法的に確定しました。この判決以降、受信契約の法的拘束力はさらに強まり、契約を拒否し続けた場合には訴訟リスクも高まっています。

このような法的背景があるため、解約手続きも一般的なサービスとは全く異なる性質を持ちます。一般的なサブスクリプションサービスであれば、利用者の意思だけで自由に解約できますが、NHK受信契約の場合は受信設備がなくなったという客観的事実を証明することが絶対条件となります。したがって、単に見ないから解約したいという理由は法的には認められません。

解約手続きの基本的な流れ

NHK受信契約を解約するための手続きは、デジタル化が進んだ現代においても、基本的にはアナログな方法に限定されています。この制度設計には明確な意図があり、解約希望者の申し出る事由が正当なものかどうかを慎重に審査するためのプロセスとなっています。

解約手続きの第一歩は電話連絡です。インターネット上のフォームから解約を完結させることは原則としてできず、公式サイトから解約届のPDFファイルをダウンロードすることもできません。契約者はまず、NHKふれあいセンターに電話で連絡し、解約の意思と事由を口頭で伝える必要があります。

連絡先はフリーダイヤルの0120-151515または0120-222-000で、IP電話などでこれらが利用できない場合は有料の050-3786-5003に電話します。受付時間は午前9時から午後6時までで、土日祝日も受付していますが、年末年始の12月30日午後5時から1月3日までは休業となります。電話が繋がりやすい時間帯としては、平日の午前10時から午後4時頃が推奨されています。

電話の際には、オペレーターが契約者本人確認のため、氏名、住所、お客様番号などを尋ねます。お客様番号は請求書や領収証に記載されているため、事前に手元に用意しておくと手続きがスムーズに進みます。電話連絡で解約事由が正当なものであるとNHK側が一次的に判断した場合のみ、放送受信契約解約届という書式が契約者住所宛に郵送されます。

この解約届の到着には通常2週間から3週間程度を要します。解約届には届出日、契約者の個人情報、放送受信契約を要しないこととなった事由、届出人の署名押印、今後の受信設備の設置予定などを記入する必要があります。記入後は返送し、NHK側で内容が確認されて初めて解約が成立します。

原則として電話でのみ開始できる解約手続きですが、唯一の例外が世帯同居を理由とする解約です。例えば一人暮らしの子が実家に戻る場合や、結婚により二つの契約世帯が一つになる場合などが該当します。この場合に限り、NHK受信料の窓口ウェブサイトからオンラインで解約の申し出が可能です。ただし手続きはオンラインで完結するわけではなく、入力後にNHKから送付される確認書に署名捺印して返送する必要があります。

この電話連絡を必須とする手続き設計は、単なる技術的な制約ではなく、意図的な審査の仕組みとして機能しています。オペレーターとの対話を通じて、NHKは解約希望者の申し出る事由が正当なものか否かを直接聞き取り、審査する機会を得ているのです。検証が容易で不正のリスクが低い世帯同居という事由にのみオンライン手続きが用意されている事実は、その他の事由における電話での聞き取りが解約の妥当性を厳格に審査するための関門であることを示しています。

受信機を処分した場合の解約手続き

最も一般的な解約事由の一つが、テレビなどの受信機を全て処分した場合です。ここで重要なのは、単にテレビを廃棄するだけでなく、NHKの放送を受信できる全ての機器が対象となるという点です。ワンセグ機能付き携帯電話、カーナビゲーションシステム、チューナー内蔵パソコンモニターなど、受信可能な機器が一つでも残っていれば解約は認められません。

受信機をなくす方法としては、廃棄、故障、譲渡などが該当します。家電リサイクル法に基づいてテレビを適正に処分した場合、修理不能な故障により受信機が機能しなくなった場合、リサイクルショップへの売却や知人への譲渡などがこれに該当します。

しかし、自己申告だけでは解約が認められないケースが多く、客観的な第三者による証明が極めて重要となります。テレビを廃棄した場合、最も強力かつ確実な証明書類となるのが家電リサイクル券です。廃棄手続きの際に発行される排出者控のコピーを解約届に添付して提出する必要があります。

ここで多くの人が陥りやすい失敗があります。NHKに電話で相談した際にまずテレビを処分してくださいと言われ、その指示に従って処分した後に、証明としてリサイクル券が必要だと知らされるケースです。リサイクル券の控えを誤って捨ててしまうと、廃棄の事実を証明できなくなり、解約手続きが頓挫する可能性があります。そのため、廃棄を決断した時点からリサイクル券の控えは厳重に保管しなければなりません。

受信機を売却した場合は、買取店が発行した領収書や買取証明書が有効な証拠となります。これらの書類には処分日と品目が明記されているため、客観的な証明として認められやすくなります。故障の場合は口頭での説明で受理されることもありますが、証明力としては弱く、NHK側から追加の確認や証明を求められる可能性も否定できません。

この証明手続きの厳格さから、NHK解約用の廃棄証明書発行を謳う不用品回収業者も存在するほどです。これは、証明の負担が完全に契約者側に委ねられており、その要求レベルが高いことを物語っています。したがって、解約手続きは電話連絡から始まるのではなく、受信機を処分売却し、その確たる証拠を確保した瞬間から始まると考えるべきです。

転居や契約者の死亡による解約

契約住所における居住者がいなくなる場合も正当な解約事由となります。具体的には契約者の死亡、海外への転居、介護施設への入所などが該当します。

契約者が死亡した場合、遺族や相続人がNHKふれあいセンターに電話で連絡します。ここで非常に重要な区別があります。故人が単身世帯であった場合や、遺族がその住居を引き払って誰も住まなくなる場合は解約の対象となります。しかし、同居の家族が引き続きその住居に住み、受信機を使用し続ける場合は、解約ではなく名義変更の手続きが必要となります。この区別を誤ると手続きが正しく進まないため注意が必要です。

契約者の死亡による解約では、死亡を証明する公的書類のコピーが必要です。具体的には死亡診断書、死亡届の記載事項証明書、戸籍謄本または除籍謄本などが該当します。これらの書類を解約届とともに提出することで手続きが進められます。

海外への転居も解約事由として認められています。1年以上の海外赴任や移住など、生活の本拠が海外に移る場合が該当します。出国予定日の1ヶ月前を目安に、早めに手続きを開始することが望ましいとされています。必須ではない場合もありますが、転居の事実を証明できる書類を準備しておくと手続きが円滑に進みます。航空券のコピー、査証つまりビザ、そして市区町村役場で海外転出届を提出した際に発行される住民票の除票の写しなどが有効な証明書類となります。

高齢の親が介護施設や老人ホームに入所し、元の住居が空き家になった場合も世帯の消滅と見なされ解約の対象となります。手続きは契約者の死亡の場合に準じ、入所の事実を伝えることで進められます。なお、一部の社会福祉施設では受信料の免除制度が適用される場合もあります。

世帯同居による解約の特別な扱い

それぞれNHKと受信契約を結んでいた二つ以上の世帯が一つの世帯になる場合、いずれか一方の契約を解約することができます。結婚により二つの契約世帯が一つになる、単身赴任が解消される、一人暮らしの子が実家に戻るといったケースがこれに該当します。

世帯同居を理由とする解約は、唯一オンラインでの手続きが推奨されているケースです。NHK受信料の窓口ウェブサイトから手続きを開始できます。手続きの際には、解約する契約と継続する契約の両方の情報が必要となります。具体的には契約者名、住所、お客様番号などの情報を正確に入力する必要があります。

ここで注意すべきは、誤って継続すべき契約を解約申請しないことです。どちらの契約を残すか事前に決めておき、情報を慎重に入力する必要があります。手続きを怠ると、旧住所と新住所で受信料が二重に請求される可能性があるため、転居の際には確実に行うべき手続きです。

オンラインで入力を完了しても手続きはそこで終わりません。入力後にNHKから確認書が送付されるため、それに署名捺印して返送することで初めて解約が正式に成立します。完全にオンラインで完結するわけではない点に注意が必要です。

受信料の返金と未払い金の扱い

NHK受信契約の解約は単に契約関係を終了させるだけでなく、金銭的な精算を伴います。前払いしていた受信料の返金や、逆に未払い料金の請求といった問題が発生するため、その規定を正確に理解しておく必要があります。

NHK受信料は2ヶ月払い、6ヶ月前払い、12ヶ月前払いといった前払い制度が主流です。契約期間の途中で解約が成立した場合、未経過期間分の受信料は返金されます。ただし返金額の計算は日割りではなく月単位で行われます。解約が受理された月の受信料は支払う必要があり、その翌月以降の未経過分が返金の対象となります。

例えば4月に12ヶ月分を前払いし、8月15日に解約届が受理された場合、解約月である8月分までの受信料は支払済みと見なされ、9月から翌年3月までの7ヶ月分が返金されます。返金プロセスとしては、解約手続きが完了した後、指定した金融機関の口座に返金額が振り込まれます。解約届の提出から返金までには一定の期間を要します。

解約時に受信料の未払いがある場合、その支払い義務は解約によって消滅するわけではありません。NHKは未払い者に対し、支払督促や民事訴訟といった法的措置を講じることがあります。受信料債権の消滅時効は5年とされており、最後の支払いから5年以上経過した分については時効を援用することで支払い義務が消滅する可能性があります。

ここで極めて重要なのが、2017年の最高裁判決が示した時効の起算点に関する判断です。受信契約を締結している場合の時効は各支払期日から進行します。しかし、受信設備を設置しているにもかかわらず契約締結を拒否し続けている未契約者の場合、状況は大きく異なります。NHKが裁判を起こし、契約締結を命じる判決が確定した時点で初めて法的に契約が成立します。そして、その契約成立時点から、過去のテレビを設置した月からの全ての未払い受信料に対する消滅時効が進行を開始すると判断されました。これは契約を拒否し続けていれば時効によって支払い義務が自然消滅するわけではなく、裁判によって契約が成立した際に設置日まで遡った長期間の受信料を一括で請求されるリスクがあることを意味します。

2023年4月1日からは放送法改正に伴い割増金制度が導入されました。これは、正当な理由なく受信契約の締結を拒む者に対し、正規の受信料に加えてその2倍に相当する額を割増金として請求できる制度です。この制度は総務大臣の認可を受けており、2024年には東京地方裁判所がこの割増金の支払いを命じる初の判決を下しています。これにより、契約を不当に拒否した場合の金銭的負担は大幅に増大しました。

相続時の重要な注意点

契約者の死亡に伴う解約手続きには、相続法上の重要な注意点が存在します。故人に未払いの受信料があれば、それは相続財産における債務となります。逆に前払い分の受信料が返金される場合、その返金は資産として扱われます。

最も注意すべきは相続放棄を検討している場合です。故人が多額の負債を抱えていた等の理由で相続人が相続放棄を検討している場合、NHKからの受信料返金を受け取ってはなりません。たとえ少額であっても、この返金を受け取る行為は故人の資産を処分受領したと見なされ、法的に単純承認が成立してしまいます。

単純承認が成立すると相続放棄は認められなくなり、相続人は故人の全ての負債を引き継ぐ義務を負うことになります。これはNHK受信料以外の借金なども含む全ての債務です。これは解約手続きにおける最も重大な法的リスクの一つであり、細心の注意が求められます。相続放棄を検討している相続人は、NHKへの連絡時にその旨を明確に伝え、返金が発生しないよう事前に確認する必要があります。

家具付き物件や特殊な居住形態での解約

受信契約の解約や義務の有無は、居住形態や所有する機器の種類によって判断が複雑になる場合があります。特に家具付きアパート、寮、シェアハウスなどの特殊な居住形態では注意が必要です。

家具付きアパート、例えばレオパレスのような物件では、テレビが物件の備え付けである場合があります。この場合、その所有者は家主ですが、受信契約の義務は入居者にあるとされています。受信機を所有していない別の住居へ転居する際には、受信機を廃棄した証明は不要です。NHKの公式見解によれば、当該物件から退去したという事実が確認できれば解約は可能とされます。例えば転居先の賃貸契約書の提示などが有効な証明となります。

寮やシェアハウスの場合、契約の単位は世帯であり、世帯とは住居及び生計をともにする者の集まりと定義されています。したがって学生寮や社員寮のように各個室で独立した生計が営まれていると見なされにくい場合は、建物全体で一つの契約となることがあります。一方、各入居者が経済的に独立しているシェアハウスでは、各個人の専有スペースに受信機があれば、それぞれが契約単位となる可能性があります。共用リビングにのみテレビがある場合は、その共用スペースに対して一つの契約が必要となります。判断は個々の生活実態に依存するため複雑なケースとなります。

ワンセグ機能付き機器の扱い

スマートフォンやカーナビなどに搭載されているワンセグ機能についても、受信契約との関係を理解しておく必要があります。かつてはワンセグ機能付き携帯電話が受信設備に該当するかどうか見解が分かれていました。

しかし2019年3月12日の最高裁判決により、ワンセグ放送を受信できる携帯電話を所持していることは放送法上の受信設備の設置に該当し、受信契約の締結義務が生じるとの判断が確定しました。これにより、自宅にテレビがなくても、ワンセグ機能付きのスマートフォンや携帯電話を持っているだけで契約義務が発生することになりました。

会社支給の携帯電話についても注意が必要です。契約義務は機器の所有者ではなく占有者、つまり実際に利用できる状態にある者に生じます。そのため会社から支給された携帯電話であっても、それにワンセグ機能が付いていれば、その従業員の世帯が契約義務を負うことになるのが原則です。

したがって、テレビを処分して解約しようと考えている場合でも、手元にワンセグ機能付きのスマートフォンや携帯電話、カーナビなどが残っていれば、解約は認められません。全ての受信可能な機器を処分または譲渡する必要があります。

受信料免除制度の活用

経済的な理由などで受信料の支払いが困難な場合、解約以外の選択肢として受信料免除制度の活用も検討できます。特定の要件を満たす世帯は申請により受信料の全額または半額が免除されます。

全額免除の対象となるのは、生活保護などの公的扶助受給世帯、世帯構成員全員が市町村民税非課税でかつ身体障害者知的障害者または精神障害者のいずれかがいる世帯、社会福祉施設等の入所者、奨学金受給対象の学生などです。

半額免除の対象となるのは、世帯主が受信契約者であり視覚または聴覚に障害のある身体障害者である場合、世帯主が受信契約者であり身体障害者手帳1級から2級、療育手帳A判定、または精神障害者保健福祉手帳1級といった重度の障害者である場合などです。

これらの免除を受けるためには、市区町村の福祉担当窓口またはNHKへの申請手続きが必要となります。該当する可能性がある場合は、解約ではなく免除制度の利用を検討することも一つの選択肢です。

解約手続きにおける困難への対処

NHK受信契約の解約手続きは必ずしも円滑に進むとは限りません。NHK側からの確認要求や解約申請の不受理といった事態に直面した場合の対処法を理解しておくことは、自己の権利を適切に主張する上で不可欠です。

解約事由を申し出た際、NHKの職員または委託会社のスタッフが、その事実を確認するために自宅への訪問を要請することがあります。ここで知っておくべき重要な権利があります。NHK側には契約者の許可なく住居に立ち入る法的権限は一切ありません。家の中を見せるか否かは完全に居住者の任意であり、訪問を拒否する絶対的な権利があります。強制力は存在しません。

訪問による確認に不安や抵抗を感じる場合は、丁寧かつ明確に訪問を断ることが賢明です。その際、電話口で訪問による確認はお断りしますが家電リサイクル券のコピーなど必要な書類は提出いたしますと伝え、客観的な証拠による事実確認を代替案として提示することが有効です。

正当な事由と証明書類を提示しているにもかかわらず解約が認められない場合、段階的な対応が必要となります。最初の窓口であるNHKふれあいセンターは基本的にマニュアルに沿った定型的な対応を行うコールセンターです。ここで話が進まない場合や特殊な事情がある場合は、担当部署を地域のNHK放送局に変更し、個別対応を求めるよう要求することができます。

内部での交渉が膠着し、正当な解約が不当に拒否され続けていると判断される場合は、弁護士などの法律専門家への相談が次の選択肢となります。近年ではNHK受信料問題を専門的に取り扱う法律事務所や法務サービスも存在し、時効の援用や交渉代理などを依頼することができます。

個人と巨大組織であるNHKとの間の紛争において、第三者機関の活用も視野に入れることができます。NHK受信料問題を主要な政策課題とする政治団体が存在し、これらの団体はコールセンターを設置して解約に関する相談に応じたり、NHKとの間の仲介を行ったりするなどの活動を行っています。

また、放送倫理番組向上機構であるBPOは、主たる業務は放送番組の内容や倫理に関する審査ですが、放送局の業務全般に対する視聴者からの意見や苦情を受け付ける窓口も設けています。解約手続きにおける不誠実な対応など、NHKの業務姿勢に問題があると感じた場合に意見を申し立てることで、間接的に状況の改善を促す一つの手段となり得ます。

海外の公共放送と比較した日本の特徴

日本のNHK受信料制度が持つ特徴は、他国の公共放送の財源確保モデルと比較することで、より明確に理解できます。イギリスとドイツの事例を見てみましょう。

イギリスの公共放送BBCの財源であるテレビライセンス料は、日本の制度とは異なり視聴行為に義務の根拠を置いています。具体的にはチャンネルを問わずテレビ番組の生放送を視聴録画する場合、またはBBCのオンラインサービスであるBBC iPlayerを視聴する場合に、ライセンス料の支払い義務が発生します。

この視聴ベースのモデルであるため、解約の主要な理由として今後は生放送のテレビ番組を一切見ずBBC iPlayerも利用しないという自己申告が認められています。これは受信機の設置所有を義務の根拠とする日本の所有ベースモデルとの根本的な違いです。近年、Netflixなどのストリーミングサービスの普及に伴い、若者層を中心にライセンス料の支払いをキャンセルする世帯が急増しており、BBCは深刻な財源問題に直面しています。

ドイツの公共放送制度は放送負担金と呼ばれる、より強制力の強いモデルを採用しています。この負担金はテレビやラジオの所有利用の有無にかかわらず、ドイツ国内に住民登録をしている全ての世帯に対して一律に課されます。これは事実上全ての世帯を対象とした目的税に近い性格を持ちます。

義務が住民登録に紐づけられているため、解約は主にドイツから恒久的に出国する際の住民登録の抹消手続きと連動します。また既に負担金を支払っている別の世帯に同居する場合も重複を避けるために解約が可能です。手続きはオンラインや郵送の書式で行われ、官僚的ではありますが理由が明確であれば機械的に処理されます。

これらの国際比較から、日本のNHK受信料制度が持つ特異なハイブリッドモデルとしての性格が浮かび上がります。日本の制度はイギリスのような純粋な視聴ベースモデルでもなく、ドイツのような純粋な世帯税ベースモデルでもありません。受信機の所有という物理的な事実に義務の根拠を置きながら、その徴収を契約という民事上の枠組みで行うという両者の中間的な性質を持ちます。

このハイブリッド構造こそが日本の制度に特有の複雑さの根源です。所有が基準であるため見ないという理由は通用しません。一方で契約という形式を取るため、ドイツの税金のように自動的に徴収されるわけではなく、個別の契約締結行為が必要となり、未契約者に対しては訴訟という手段が取られます。この構造を理解することは、なぜ日本の解約手続きが受信機の物理的な不存在証明にこれほどまでに固執するのかを根本から理解する鍵となります。

解約手続きを成功させるための重要ポイント

NHK放送受信契約の解約手続きを円滑に進めるためには、いくつかの核心的な原則を理解し実践することが不可欠です。

まず義務の根拠は所有であり視聴ではないという原則を理解する必要があります。契約義務はNHKの放送を受信できる機器を設置所有しているという事実に起因します。したがって解約はその機器がなくなったという事実を客観的に証明することによってのみ可能となります。単に見ていないという理由では法的に解約は認められません。

次に証明責任は契約者にあるという点を認識する必要があります。解約事由が真実であることを証明する責任は全面的に契約者側が負います。NHK側が積極的に不存在を証明してくれるわけではありません。自己申告だけでは不十分な場合が多く、家電リサイクル券や公的書類など第三者が発行した客観的な証拠が手続きの成否を分けます。

解約を成功させるための具体的な行動として、まず全てのやり取りを記録することが重要です。NHKとの電話連絡は日時、オペレーターの氏名、会話の要旨を必ず記録しておきましょう。提出する全ての書類、特に放送受信契約解約届は郵送前に必ずコピーを取り手元に保管することが推奨されます。

証明書類を先に確保することも極めて重要です。解約の電話をかける前に、自身の解約事由を裏付ける確たる証拠を確実に手元に準備することが必要です。家電リサイクル券、死亡診断書のコピーなど、必要な証明書類を事前に揃えておくことが手続きの出発点となります。

電話連絡の際は明確かつ粘り強く交渉する姿勢が求められます。NHKが公式に認める解約事由に該当する旨を簡潔かつ明確に伝えることが重要です。オペレーターからの初期的な引き止めや不正確な説明に対しては、冷静に、しかし粘り強く正当な事由を主張し続けることが必要です。

自己の権利を認識することも忘れてはなりません。NHK職員による自宅への立ち入り確認には応じる義務がないこと、そして正当な解約申請が不当に拒否された場合には上級部署へのエスカレーションや法的手段を検討する権利があることを認識しておくべきです。

最後に、契約者の死亡に伴う解約において相続放棄を検討している相続人は絶対に受信料の返金を受け取ってはならないという点を強調します。この行為が相続放棄を無効にし、予期せぬ多額の負債を背負うリスクがあることは、手続き上の注意点というレベルを超えた重大な法的帰結を伴う警告です。

まとめ

NHK受信契約の解約手続きは、一般的なサブスクリプションサービスの解約とは全く異なる性質を持ちます。放送法という法的根拠に基づく契約であるため、解約には受信設備が物理的に存在しなくなったことを客観的に証明する必要があります。単に視聴していないという理由では解約できないという点が最も重要なポイントです。

解約手続きの基本的な流れは、まずNHKふれあいセンターへの電話連絡から始まります。世帯同居を理由とする場合を除き、原則として電話でのみ手続きを開始できます。解約事由が正当と認められれば放送受信契約解約届が郵送され、必要事項を記入して返送することで解約が成立します。

最も一般的な解約事由である受信機の処分では、家電リサイクル券などの客観的な証明書類が極めて重要です。これらの書類を確保せずに処分してしまうと解約手続きが頓挫する可能性があるため、処分を決断した時点から証明書類の確保と保管を意識する必要があります。

契約者の死亡や海外転居といった事由でも、それぞれ必要な公的書類を準備し、適切な手続きを踏むことで解約が可能です。特に相続が絡む場合は相続放棄との関係に細心の注意を払う必要があります。

解約が認められない場合や訪問確認を求められた場合には、自己の権利を認識し適切に対応することが重要です。NHK側には強制的に住居に立ち入る権限はなく、書類による証明を代替案として提示することができます。

この記事で解説した知識と手順を理解し実践することで、NHK受信契約の解約手続きを円滑に進めることができるはずです。解約を検討している方は、まず自身の状況がどの解約事由に該当するかを確認し、必要な証明書類を確保した上で、自信を持って手続きを進めてください。

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