マイナ保険証とおくすり手帳は、役割が異なるため併用することでより安全で効率的な医療を受けることができます。マイナ保険証は複数の医療機関の過去の処方履歴を一元管理できる一方、おくすり手帳は最新の処方情報や市販薬、サプリメントまで含めた総合的な情報管理が可能です。2025年12月1日をもって従来の健康保険証が有効期限を迎え、マイナ保険証を基本とする新しい医療制度への移行が本格化しました。しかし、マイナ保険証だけでは把握できない情報も多く、おくすり手帳との併用が推奨されています。この記事では、マイナ保険証とおくすり手帳それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説し、両者を併用することで得られる具体的なメリットについてお伝えします。

マイナ保険証とは何か
マイナ保険証とは、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたものです。医療機関や薬局に設置された顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードをかざすことで、保険資格の確認が行われる仕組みになっています。2024年12月2日をもって従来の健康保険証の新規発行が停止され、2025年12月1日には全ての公的医療保険で従来の健康保険証が有効期限を迎えました。これにより、マイナ保険証を基本とする新しい医療制度への移行が本格的に進んでいます。
マイナ保険証で確認できる情報の範囲
マイナ保険証を利用すると、過去1か月から5年の間に処方・調剤されたお薬情報を、自身のマイナポータルや対応する電子版おくすり手帳を通じて確認できます。電子処方箋対応の医療機関・薬局では、即時から5年の間の情報を確認することが可能です。また、マイナ保険証で情報開示に同意した場合、現在どのような薬を服用しているか、どこでどのような処方を受けたか、特定健診の情報や手術情報なども確認することができます。初めて受診する医療機関や薬局でも、患者本人が覚えていない情報を医師や薬剤師が確認できるため、より適切な医療を受けることが可能になります。
厚生労働省が掲げるマイナ保険証の4つのメリット
厚生労働省は、マイナ保険証の普及のために4つのメリットを掲げています。1つ目は、データに基づくより良い医療が受けられることです。患者本人の同意に基づき、過去の診療情報や薬剤情報を医師や薬剤師が確認できるため、より適切な診断や処方が可能になります。2つ目は、手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払いが免除されることです。従来は限度額適用認定証の事前申請が必要でしたが、マイナ保険証を利用すれば窓口での手続きが不要になります。3つ目は、マイナポータルで確定申告時に医療費控除が簡単にできることです。医療費の明細がデジタルで管理されるため、確定申告の手間が大幅に軽減されます。4つ目は、医療現場で働く人の負担を軽減できることです。保険資格の確認作業が自動化されることで、医療事務の効率化につながります。
マイナ保険証のデメリットと注意すべき点
マイナ保険証には多くのメリットがある一方で、いくつかの重要なデメリットや注意点も存在します。これらを正しく理解しておくことで、より適切な医療情報管理が可能になります。
情報反映のタイムラグという課題
マイナ保険証の最大の課題の一つが、情報反映のタイムラグです。マイナ保険証による薬剤情報は、原則として毎月11日に更新されます。一部の情報については12日から14日に更新される場合もあります。この仕組みが意味するところは、最新の受診や処方内容がすぐには確認できないということです。例えば、2、3日前に他の医療機関で処方された薬の情報は、マイナ保険証では確認できません。現在治療中の薬剤情報が見られないという点が、マイナ保険証の薬剤情報における最大の欠点と言えます。この約1か月のタイムラグは、制度導入当初から問題視されていましたが、2025年現在も改善されていない状況です。
マイナ保険証に記録されない情報
マイナ保険証では、いくつかの重要な情報が記録・確認できないことを理解しておく必要があります。まず、自分で購入した市販薬(OTC医薬品)の情報はマイナポータルで確認できません。ドラッグストアで購入した風邪薬や痛み止めなどは、マイナ保険証では把握できないのです。次に、保険適用外の診療で処方された薬の情報も反映されません。自由診療や労災、自賠責、混合診療などで処方された薬については、マイナ保険証では確認できません。また、サプリメントや健康食品の摂取情報も当然ながら記録されません。これらは医薬品ではありませんが、薬との相互作用を起こす可能性があるため、医療従事者に伝える必要がある重要な情報です。さらに、過去に薬で副作用やアレルギーを起こした経験についても、現在のところマイナンバーカードでは確認できません。
マイナ保険証のその他のデメリット
マイナ保険証には、タイムラグや記録されない情報以外にもいくつかのデメリットがあります。有効期限が切れると利用ができなくなるため、マイナンバーカード自体の有効期限を意識して、定期的な更新手続きが必要です。紛失した場合は、再発行までに1か月から2か月ほどかかります。この期間は今後短縮される予定ですが、従来の健康保険証と比べると時間がかかります。システム不具合が発生した際には、利用できない場合があります。通信障害やシステムメンテナンス時には、資格確認ができないケースが発生しています。
おくすり手帳とは何か
おくすり手帳とは、自分が使っている薬の名前、量、日数、使用方法などを記録できる手帳のことです。また、患者自身や家族、医療関係者など様々な方が自由に書き込めるノートでもあります。
おくすり手帳が導入された経緯
おくすり手帳の導入経緯は、1993年(平成5年)の「ソリブジン事件」にさかのぼります。この事件では、日本国内で15人の患者が別々の病院から抗ウイルス剤と抗がん剤の処方を受け、併用によって死亡しました。この痛ましい事件をきっかけとして、薬の重複投与や相互作用を防ぐためにおくすり手帳が導入されました。複数の医療機関を受診する患者が増える中で、薬の安全管理の重要性が再認識され、おくすり手帳は医療安全の観点から欠かせないツールとなっています。
おくすり手帳の果たす役割
おくすり手帳の目的は、医療従事者はもちろん、患者自身が服用している医薬品について把握するとともに正しく理解し、セルフメディケーション・健康増進につなげること、そして医薬品のより安全で有効な薬物療法につなげることです。複数の医療機関の医師や薬局の薬剤師が、患者のおくすり手帳を見ることで、各医療機関の処方を一元的かつ経時的に管理することができます。これにより、薬の相互作用のチェックや重複投与の防止、残薬調整など、医薬品のより安全で有効な薬物療法につなげることができます。
おくすり手帳に記録すべき情報
おくすり手帳には、処方された薬の情報として薬の名前、用量、服用方法、服用期間などを記録します。これは薬局で薬を受け取る際に、シールなどで記録されることが一般的です。市販薬(OTC医薬品)の情報も重要で、ドラッグストアで購入した薬でも、よくない副作用が起こることがあります。また、病院でもらう薬と一緒に飲んではいけない薬もあるため、記録しておくことで問題を未然に防ぐことができます。健康食品やサプリメントの情報も記録しておくべきで、薬によっては一緒に摂取してはいけないものがあります。副作用やアレルギーの履歴も必ず記録しておくことで、過去にどの薬でどのような副作用が出たかを把握でき、同じ薬や類似の薬の処方を避けることができます。その他、体調の変化や気になる症状なども自由に書き込むことができます。
紙のおくすり手帳と電子版おくすり手帳の特徴比較
おくすり手帳には紙のタイプと電子版(スマートフォンアプリ)のタイプがあり、それぞれに特徴があります。自分のライフスタイルに合った方を選ぶか、両方を併用することも選択肢の一つです。
紙のおくすり手帳の特徴
紙のおくすり手帳には、過去の治療履歴を短時間でしっかりと一覧し俯瞰することが可能という大きなメリットがあります。必要に応じてコピーを取ったり、スキャナー等で電子カルテシステムに取り込むことが可能です。通信環境に左右されず、どんな場面でも手元に置いておける点も紙の強みで、災害時や通信障害時にも情報を確認することができます。医療機関でのスムーズな情報共有という点では、時間的には紙をスキャンして保存する方が圧倒的に早いため、紙で情報を持参することは他の患者の診察待ち時間短縮にもつながります。スマートフォンの操作に不慣れな高齢者の方にとっては、紙のおくすり手帳の方が扱いやすい傾向があります。
一方で、紙のおくすり手帳には持ち歩くのを忘れてしまう可能性があるというデメリットもあります。薬局では3か月以内の再来でおくすり手帳を持参すると料金が安くなるため、忘れると経済的なデメリットも生じます。紛失した場合、過去の情報がすべて失われてしまい、バックアップを取ることが難しいため、災害などで失われるリスクもあります。保管場所によっては劣化する可能性があり、水濡れや破損のリスクは常にあります。
電子版おくすり手帳の特徴
電子版おくすり手帳(おくすり手帳アプリ)には、スマートフォンは常に持ち歩くものであるため忘れる心配がないというメリットがあります。薬局での料金節約にもつながります。アカウントを作成しクラウド上に保存しておけば、端末の紛失や故障時でもデータの再生が可能です。容量が大きいため、何年分もの情報を保存・閲覧することができます。薬を飲む時間をアラームで教えてくれたり、家族間の情報を共有できる機能がついているものもあります。マイナポータルと連携して、処方情報を自動で取り込める機能を持つアプリもあります。
一方で、スマートフォンの操作に不慣れな方や、普段から端末をあまり使用しない方にとっては扱いにくい傾向があります。端末の紛失・故障時のリスクがあり、バッテリー切れの場合は利用できません。対応していない薬局がある点も注意が必要で、すべての薬局が電子おくすり手帳に対応しているわけではありません。データの扱いにはセキュリティの確保が強く求められますが、現状ではリスクの管理において不安があるという声もあります。アプリによって仕様が異なり、機能にばらつきがあります。現時点では電子版おくすり手帳アプリが乱立しており、これらのアプリと各医療機関の電子カルテは連携されていないため、データを電子カルテに移行することができないケースも多くあります。
マイナ保険証とおくすり手帳の違いを比較
マイナ保険証とおくすり手帳では、確認できる情報や更新のタイミングに大きな違いがあります。両者の特徴を正しく理解することで、より効果的な活用が可能になります。
確認できる情報の違い
マイナ保険証とおくすり手帳では、確認できる情報に大きな違いがあります。
| 項目 | マイナ保険証 | おくすり手帳 |
|---|---|---|
| 処方薬の情報 | 確認可能(約1か月のタイムラグあり) | 即時記録可能 |
| 市販薬の情報 | 確認不可 | 自分で記録可能 |
| サプリメント・健康食品 | 確認不可 | 自分で記録可能 |
| 副作用・アレルギー履歴 | 確認不可 | 自分で記録可能 |
| 特定健診の結果 | 確認可能 | 記録不可 |
| 手術情報 | 確認可能 | 記録不可 |
| 過去の処方履歴 | 5年分確認可能 | 手帳に記録がある分のみ |
情報更新のタイミングの違い
マイナ保険証の薬剤情報は毎月11日に更新されるため、最新の情報を確認するまでに約1か月のタイムラグが生じます。電子処方箋対応施設であれば即時確認が可能ですが、2025年現在、医療機関での電子処方箋導入率は1割にも満たない状況です。おくすり手帳は、薬局で薬を受け取る際にその場で記録されるため、リアルタイムで最新の情報を保持することができます。この違いは、特に複数の医療機関を短期間で受診する場合や、急な体調変化で新たな処方を受けた場合に重要になります。
記録できる情報の範囲の違い
マイナ保険証は保険診療の情報のみが自動的に記録されますが、市販薬やサプリメント、自由診療の情報は記録されません。おくすり手帳は自分で自由に情報を書き込むことができるため、市販薬、サプリメント、副作用履歴など、あらゆる情報を記録することが可能です。この柔軟性がおくすり手帳の大きな強みとなっています。
マイナ保険証とおくすり手帳を併用するメリット
マイナ保険証とおくすり手帳はそれぞれ異なる強みを持っています。両者を併用することで、それぞれの弱点を補い合い、より安全で適切な医療を受けることが可能になります。
最新情報と過去情報の両方を把握できる
おくすり手帳で最新の処方情報を確認し、マイナ保険証で過去の医療履歴を確認することで、医療従事者は患者の状態をより正確に把握できます。マイナ保険証には約1か月のタイムラグがありますが、おくすり手帳には直近の処方情報がリアルタイムで記録されているため、両方を提示することで情報の空白期間をなくすことができます。
市販薬やサプリメントも含めた総合的な情報提供が可能になる
マイナ保険証では把握できない市販薬やサプリメントの情報も、おくすり手帳に記録しておくことで、薬の相互作用のリスクを防ぐことができます。特に、血液をサラサラにするサプリメントや、特定の栄養素を多く含む健康食品は、処方薬との相互作用を起こす可能性があるため、医療従事者への情報提供が重要です。
副作用やアレルギーの履歴を正確に伝えられる
過去の副作用履歴はマイナ保険証では確認できないため、おくすり手帳に記録しておくことが重要です。どの薬でどのような副作用が出たかを記録しておくことで、同じ薬や類似の薬の処方を避けることができ、安全な医療につながります。
災害時や通信障害時のバックアップになる
マイナ保険証はシステムに依存しているため、災害時や通信障害時には利用できない可能性があります。紙のおくすり手帳があれば、そのような状況でも情報を確認することができます。実際に、大規模災害時には通信インフラが被害を受けることも多く、紙媒体での情報管理の重要性が再認識されています。
電子処方箋の普及状況と今後の展望
電子処方箋とは、医師が処方した内容を電子データとしてやり取りする仕組みです。患者は紙の処方箋を持たずに、マイナ保険証などを使って薬局で薬を受け取ることができます。電子処方箋対応の医療機関・薬局では、処方情報が即時に反映されるため、マイナ保険証の情報タイムラグ問題を解消することができます。
電子処方箋の導入状況
2025年1月12日時点での電子処方箋の導入状況は、全体の導入率が22.5%(24万7,681施設)となっていました。施設種類別では、薬局が63.2%(3万8,188施設)と最も高い導入率を示しています。一方、病院は3.9%(311施設)、医科クリニックは9.9%(8,172施設)、歯科クリニックは1.7%(1,010施設)と、医療機関での導入は進んでいない状況でした。
電子処方箋が普及しない理由
医療機関での電子処方箋導入が進まない理由として、医薬品のマスタの設定等が適切に行われているかが分からないこと、複数のシステム改修が断続的に必要となることによる負担が大きいこと、電子カルテのシステム更改や切替等によらず導入する際の費用負担が重いことなどが挙げられています。電子処方箋が完全に普及するまでは、おくすり手帳の役割は依然として重要であり続けます。
マイナ救急で活用される医療情報
2025年10月1日から全国で「マイナ救急」が開始されました。マイナ救急では、救急隊員が本人のマイナ保険証を活用し、傷病者が過去に受診した病院や処方されたお薬などの医療情報を閲覧します。
マイナ救急のメリット
マイナ救急には複数のメリットがあります。救急隊への受診歴・薬剤情報の説明など、傷病者の負担が軽減されます。意識のない傷病者に付き添う家族が正確な情報を把握していなくても、医療情報の伝達が可能になります。救急隊が正確に傷病者の医療情報を確認でき、円滑な搬送先医療機関の選定や処置が可能になります。事前に医療情報を搬送先医療機関に伝えることで、より適切な受入れ準備が可能になります。実証事業では、薬剤情報から病名を推測し、適切な搬送先で早期に緊急手術を行うことで一命を取り留めたケースが報告されています。
マイナ救急の本人確認と注意点
マイナ救急の実施にあたっては、救急隊員が傷病者の顔とマイナンバーカードの券面上の写真を確認して本人確認を行うため、暗証番号の入力は原則不要です。本人に意識がないなど同意を得るのが困難な場合で、生命・身体の保護のため必要な場合は、同意なしで情報を確認することもあります。ただし、マイナ救急で閲覧できる情報は、マイナ保険証に記録されている情報に限られます。つまり、市販薬やサプリメント、副作用履歴などは確認できません。また、マイナンバーカードを携帯していない場合は、マイナ救急の恩恵を受けることができません。緊急時に備えて、市販薬やサプリメント、副作用履歴などの情報を記載したおくすり手帳を携帯しておくことは、引き続き重要です。
高齢者のためのマイナ保険証対応と資格確認書
高齢者の方々がマイナ保険証をスムーズに利用できるよう、様々な支援策が用意されています。また、マイナ保険証の利用が困難な方のための「資格確認書」という制度もあります。
高齢者のマイナ保険証利用状況
2024年12月時点のマイナ保険証利用率を見ると、65歳から69歳が33.5%であるのに対し、85歳以上は17.2%と低い水準となっています。高齢者ほどマイナ保険証の利用率が低い傾向があります。これは、顔認証付きカードリーダーの操作への不安や、デジタル機器への慣れの問題などが影響していると考えられます。
資格確認書の制度
マイナ保険証を持っていない方や、マイナンバーカードでの受診が困難な方のために、「資格確認書」が用意されています。後期高齢者医療制度の加入者(75歳以上の方、および65歳以上75歳未満の方で一定の障害があると認定を受けた方)については、令和8年7月末までの間における暫定的な運用として、マイナ保険証の保有状況にかかわらず、資格確認書が無償で申請によらず交付されます。後期高齢者でマイナ保険証を保有している人は1,300万人、非保有者は700万人ですが、2,000万人すべてに1年間は資格確認書が交付されることになります。
要配慮者への対応
マイナ保険証を保有している方であっても、マイナンバーカードでの受診等が困難な要配慮者(高齢者、障害者等)は、申請により、資格確認書を無償で交付されます。病態の変化などにより、顔認証付きカードリーダーを上手く使えなくなった場合も、資格確認書を申請することで利用できます。資格確認書は、現行の健康保険証と同様、親族等の法定代理人のほか、介助者等による代理申請も可能です。
介助者によるサポート
ご自身でマイナンバーカードを顔認証付きカードリーダーに置くことが難しい場合(車いすに乗っている、視覚障害を持っている等)で、やむを得ない事情があり、患者本人から希望があった場合には、家族の方や介助者、施設職員等が患者のマイナンバーカードをカードリーダーに置く等の必要な支援を行うことは差し支えありません。
おくすり手帳持参による薬局での料金節約
おくすり手帳を持参することで、薬局での支払い料金を節約することができます。これは調剤報酬の仕組みに基づくもので、継続的な利用でメリットが得られます。
料金が安くなる仕組み
2022年度の調剤報酬改定により、おくすり手帳を持参した場合の服薬管理指導料は45点、忘れた場合は59点となりました。原則3か月以内に同じ薬局に再度処方せんを持参し、おくすり手帳を持参した場合は45点、それ以外の場合は59点となっています。
実際の節約金額
おくすり手帳を持っている場合と持っていない場合で比較すると、1割負担の方はおよそ10円の差、2割負担の方はおよそ30円の差、3割負担の方はおよそ40円の差がかかってきます。「調剤基本料1」の面対応薬局に、6か月以内におくすり手帳を持参して再度利用すると、持参しなかったときより、1回あたり36円(3割負担の場合)安くなります。料金が安くなるのは、原則3か月以内に同じ薬局へおくすり手帳を持参した場合に限ります。毎回違う薬局で薬をもらったり、しばらく行かない期間があったりする場合は、おくすり手帳を提出しても安くなりません。電子おくすり手帳の取り扱いについても、基本的には通常のおくすり手帳と同様に扱われるため、料金も同様に考えられます。
マイナ保険証利用時の窓口負担
マイナ保険証を持参することで、従来の保険証を使用する場合よりも窓口での負担金が軽減される場合があります。薬局では、調剤を受けたい医療機関の電子処方箋を、カードリーダーで簡単に選択できます。
スマートフォンでマイナ保険証を利用する方法
2025年9月19日より、利用環境が整った医療機関・薬局において、順次スマートフォンをマイナ保険証として利用できるようになりました。これにより、マイナンバーカード本体を持ち歩かなくても、スマートフォンだけで健康保険証の機能を利用できるようになります。
スマホ用マイナ保険証のメリット
スマートフォンは常に持ち歩くものであるため、マイナンバーカードを忘れるリスクが軽減されます。電子おくすり手帳アプリと組み合わせることで、スマートフォン1台で医療に関する情報管理を完結させることも可能になります。
スマホ用マイナ保険証の注意点
スマホ用マイナ保険証を利用するためには、対応するスマートフォンと、対応している医療機関・薬局である必要があります。すべての医療機関・薬局がすぐに対応するわけではないため、マイナンバーカード本体も引き続き携帯しておくことが推奨されます。また、スマートフォンのバッテリー切れや故障時には利用できなくなるため、紙のおくすり手帳やマイナンバーカード本体を持っておくことは、バックアップとして有効です。
マイナ保険証とおくすり手帳の併用に関する実践的なアドバイス
マイナ保険証とおくすり手帳を効果的に活用するための具体的な方法について解説します。
おくすり手帳は必ず1冊にまとめる
飲んでいるすべての薬やサプリメント、健康食品等を「1冊で」記録することが大切です。病院や薬局ごとに、別々のおくすり手帳を作らないようにしましょう。複数の医療機関を受診している場合でも、1冊のおくすり手帳にすべての情報をまとめることで、薬の重複や相互作用を防ぐことができます。
記録すべき情報を漏れなく記入する
処方された薬の情報は薬局で記録してもらいますが、自分で購入した市販薬の情報、サプリメントや健康食品の情報、過去の副作用・アレルギーの履歴、体調の変化や気になる症状なども積極的に記録しましょう。これらの情報はマイナ保険証では確認できないため、おくすり手帳に記録しておくことで医療従事者への正確な情報提供が可能になります。
医療機関・薬局への両方の持参を習慣にする
医療機関や薬局を受診する際は、必ずマイナ保険証とおくすり手帳の両方を持参しましょう。特に初めての医療機関や、複数の医療機関を受診している場合は、おくすり手帳の情報が重要になります。
緊急時への備えを怠らない
緊急時に備えて、おくすり手帳を常に携帯できる状態にしておくことが推奨されます。財布やカバンに入れておく、電子版おくすり手帳をスマートフォンにインストールしておくなど、いつでも情報を提示できるようにしておきましょう。マイナンバーカードも携帯しておくことで、マイナ救急のサービスを受けることができます。
マイナ保険証とおくすり手帳の併用で安全な医療を
2025年の医療制度において、マイナ保険証とおくすり手帳は、どちらか一方で十分というものではありません。マイナ保険証のメリットは、複数の医療機関の情報を一元管理できること、過去5年分の処方履歴を確認できること、高額療養費の手続きが簡素化されること、マイナ救急で緊急時に医療情報を活用できることなどです。一方、デメリットとしては、情報反映に約1か月のタイムラグがあること、市販薬やサプリメントの情報は記録されないこと、副作用・アレルギー履歴は確認できないこと、システム障害時に利用できないことなどがあります。
おくすり手帳のメリットは、最新の処方情報をリアルタイムで記録できること、市販薬・サプリメント・健康食品も記録できること、副作用・アレルギー履歴を記録できること、災害時や通信障害時にも利用できることなどです。両者を併用することで、それぞれの弱点を補い合い、より安全で効率的な医療を受けることが可能になります。特に、複数の医療機関を受診している方、市販薬やサプリメントを利用している方、過去に副作用を経験したことがある方は、併用の重要性が高いと言えます。
今後、電子処方箋の普及が進めば、マイナ保険証の情報タイムラグ問題は解消に向かうと期待されます。しかし、現時点では医療機関での電子処方箋導入率は低い状況であり、おくすり手帳の役割は引き続き重要です。医療を受ける際は、マイナ保険証とおくすり手帳の両方を携帯し、医療従事者に正確な情報を提供することで、より安全で適切な医療を受けられるようにしましょう。

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