老後の国民健康保険料・介護保険料はいくら?月額計算方法とシミュレーション

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老後の国民健康保険料と介護保険料の月額は、年金収入や世帯構成によって大きく異なり、単身で年金150万円の場合は合計月額約5,700円、夫婦で年金300万円の場合は合計月額約2万円程度となります。計算方法は「所得割」と「均等割」を基本とし、前年の所得から公的年金等控除と基礎控除を差し引いた金額に料率を掛けて算出されます。本記事では、老後の家計を大きく左右する国民健康保険料と介護保険料について、その仕組みから具体的なシミュレーションまでを詳しく解説します。定年退職後の生活設計において、年金収入や貯蓄には注目しても、社会保険料の負担を見落としている方は少なくありません。現役時代は給与から天引きされ、さらに会社が半分を負担していた保険料が、退職後は全額自己負担となる現実をしっかり理解しておく必要があります。

老後の社会保険料とは何か

老後の社会保険料とは、65歳以上の方が支払う国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)と介護保険料を指します。これらは年金から天引きされるか、納付書で支払う形となり、老後の家計における大きな固定費となります。

現役時代に加入していた健康保険(社会保険)では、保険料の半分を会社が負担する「労使折半」の仕組みがありました。しかし、退職して国民健康保険に移行すると、この優遇措置はなくなります。保険料は全額が自己負担となり、前年の所得に応じて市区町村から請求されることになります。

特に注目すべきは、令和6年度(2024年度)に実施された大幅な制度改正です。団塊の世代がすべて75歳以上となる「2025年問題」を目前に控え、保険料の上限額引き上げや介護保険料の段階細分化など、歴史的な負担増改定が行われました。この改正内容を正確に理解することが、老後の家計防衛において不可欠となっています。

保険料計算の基礎となる「所得」の考え方

国民健康保険料や介護保険料の計算において最も重要なのが、「所得」の正確な理解です。ここでいう所得とは、年金の振込額(収入)そのものではなく、そこから一定額を差し引いた後の金額を指します。

公的年金等控除の仕組み

65歳以上の方が受け取る公的年金は、税法上「雑所得」として扱われます。保険料計算に使われるのは、年金収入から「公的年金等控除」を差し引いた後の所得金額です。65歳以上の場合、この控除の最低額は110万円と定められています。

この数字は非常に重要な意味を持ちます。年金収入が年間110万円以下であれば、計算上の所得はゼロとなり、保険料の所得割がかからないばかりか、住民税非課税世帯の判定においても有利に働くことになります。

年金収入と所得金額の関係は、収入額によって段階的に変化します。年金収入が110万円超330万円未満の場合、所得金額は「収入金額から110万円を引いた額」となります。例えば年金収入が200万円の方であれば、そこから110万円を引いた90万円が保険料計算の基礎となる所得です。

年金収入が330万円以上になると計算式は複雑になり、330万円以上410万円未満では「収入金額×75%から27万5千円を引いた額」、410万円以上770万円未満では「収入金額×85%から68万5千円を引いた額」となります。収入が増えるにつれて控除の割合が縮小していく設計となっており、高額年金受給者ほど所得として認識される金額が大きくなります。

合計所得金額と総所得金額等の違い

保険料計算において混同しやすいのが、「合計所得金額」と「総所得金額等」という2つの概念です。

合計所得金額は、過去の株取引損失などの繰越控除を適用する「前」の所得合計を指します。これは主に均等割や平等割の軽減判定(7割・5割・2割軽減)を行う際の基準として用いられます。

一方、総所得金額等は繰越控除を適用した「後」の所得合計であり、実際に支払う保険料の所得割を計算する際のベースとなります。

さらに国民健康保険料の所得割計算では、総所得金額等から基礎控除43万円を差し引いた金額が用いられます。この金額は「旧ただし書き所得」と呼ばれ、住民税の計算とは異なる独自のルールです。

国民健康保険料の構造と計算方法

65歳から74歳までの期間、会社員や公務員の被扶養者でない方の多くは国民健康保険に加入することになります。国民健康保険は市区町村が運営主体となるため、自治体によって保険料の計算式が異なる点が大きな特徴です。

保険料を構成する3つの要素

毎月支払う国民健康保険料は、3つの要素の合計で構成されています。

医療分(基礎賦課額)は、加入者全員の医療費を賄うための財源です。0歳から74歳までの全加入者が課税対象となります。支援金分(後期高齢者支援金等賦課額)は、75歳以上の後期高齢者医療制度を支えるために現役世代や前期高齢者が拠出する支援金であり、こちらも全加入者が対象です。介護分(介護納付金賦課額)は40歳から64歳までの加入者が負担するもので、65歳になるとこの部分は国保料から消滅し、別途「介護保険料」として単独徴収される形に切り替わります。

4つの計算方式

自治体は保険料を決定するにあたり、以下の4つの方式を組み合わせています。

所得割は前年の所得に応じて課される部分で、「能力に応じた負担」を体現しています。料率(パーセント)で示され、所得が高いほど保険料も高くなります。均等割は所得に関係なく加入者1人あたりに定額で課される部分で、「受益に応じた負担」として、加入者数が多い世帯ほど負担が重くなる仕組みです。平等割(世帯割)は所得や人数に関係なく1世帯あたりに定額で課される部分で、国保という制度への加入料のような性格を持ちます。資産割は保有する土地・家屋の固定資産税額に応じて課されるものです。

近年は資産割や平等割を廃止し、所得割と均等割のみの「2方式」へ移行する自治体が増えています。東京都23区(特別区)はすでに資産割・平等割を廃止した2方式を採用しています。

令和6年度の賦課限度額引き上げ

国民健康保険には、どんなに所得が高くても徴収されない上限額(賦課限度額)が設定されています。令和6年度、この限度額が全国一律で引き上げられました。

具体的には、後期高齢者支援金分の限度額が22万円から24万円へ引き上げられました。医療分65万円と介護分17万円は据え置かれましたが、これらを合計した年間上限額は、65歳以上(介護分なし)で89万円、40〜64歳では106万円に達します。

自治体間の保険料格差

国民健康保険料の最大の特徴は、居住地による格差です。保険料が高い自治体と安い自治体の差は年間10万円以上に及ぶことがあります。

保険料が高い傾向にあるのは、高齢化率が高く医療費がかさむ地方都市や、財政基盤が脆弱な自治体です。徳島市や広島市などが高額な自治体として知られています。一方、静岡県富士市や東京都武蔵野市などは比較的保険料が安い傾向にあり、企業の工場立地等により法人税収が豊かであったり、住民の平均年齢が若く医療費が抑制されていたりすることが背景にあります。

介護保険料の仕組みと段階制度

65歳以上の第1号被保険者が支払う介護保険料は、3年ごとに改定される「介護保険事業計画」に基づいて決定されます。令和6年度から令和8年度までは「第9期」にあたり、このタイミングで多くの自治体が基準額の引き上げや所得段階の細分化を行いました。

基準額の決まり方

介護保険料の基準額は、自治体で今後3年間に必要となる介護サービス費用の総額を推計し、そのうち約23パーセント分を65歳以上の高齢者数で割ることで算出されます。全国平均の基準額は月額6,200円を超え、過去最高を更新しています。大阪市のように月額9,000円を超える自治体も出現しており、地域差が大きくなっています。

所得段階の13段階化

第9期計画の大きな特徴は、国の標準的な所得段階が従来の9段階から13段階へと細分化されたことです。これは低所得者の負担を抑えつつ、負担能力のある高所得者により多くの負担を求める「応能負担」の強化を意味します。

低所得層への配慮として、生活保護受給者や世帯全員が住民税非課税で本人の年金収入が80万円以下などの層に対しては、公費を投入して保険料率を低く抑えています。第1段階の乗率は0.285と設定され、基準額の約3割の負担で済むよう設計されています。

一方、高所得層への負担増として、従来の上限であった第9段階の上にさらに細かい区分が設けられました。最上位の段階では基準額の3倍以上の保険料が設定されることも珍しくありません。基準額が月額7,000円の自治体であれば、最上位ランクの方は月額2万円以上、年間25万円近い介護保険料を支払うことになります。

後期高齢者医療制度の保険料

75歳の誕生日を迎えると、それまで加入していた国民健康保険や会社の健康保険を脱退し、都道府県単位の広域連合が運営する「後期高齢者医療制度」に移行します。

都道府県で統一された料率

後期高齢者医療制度の保険料は、原則として都道府県内で統一されています。同じ都道府県内であれば、どの市区町村に住んでいても基本的には同じ計算式が適用されます。また、国民健康保険が世帯単位での請求だったのに対し、後期高齢者医療は個人単位で計算され、一人ひとりの年金から天引きされるのが原則です。

保険料は「均等割額(定額)」と「所得割額(定率)」の合計で構成されます。東京都の令和6・7年度の例では、均等割額は年額4万7,300円、所得割率は原則9.67パーセントとなっています。

令和6・7年度の負担増

団塊の世代が75歳以上となることに伴う医療費増大に対応するため、高齢者自身にも負担増を求める改正が行われました。

所得割率は多くの広域連合で引き上げられました。東京都の場合、急激な負担増を避けるため、令和6年度に限り、賦課のもととなる所得金額が58万円以下の方(年金収入で約211万円以下)に対しては所得割率を8.78パーセントに据え置く激変緩和措置が講じられましたが、令和7年度からは原則として全員が9.67パーセントの料率となりました。

賦課限度額も大幅に引き上げられ、従来の年間66万円から段階的に80万円へと引き上げられました。令和7年度からは全対象者が80万円となり、年間14万円もの負担増枠が設定されたことになります。

元被扶養者への特例縮小

これまで会社員の配偶者の扶養に入っていた方が75歳になり後期高齢者医療制度に移行する場合、保険料の軽減措置が手厚く設けられていました。しかし制度改正により、均等割5割軽減の期間が「加入から2年間のみ」に限定されることとなりました。3年目以降は所得に応じた通常の軽減判定(7割・5割・2割)が適用されます。

低所得世帯のための軽減制度

国民健康保険料や後期高齢者医療保険料には、低所得世帯の負担を軽くするための「法定軽減制度」があります。7割、5割、2割の軽減区分があり、令和6年度には判定基準額の改定(インフレ対応による緩和)も行われました。

軽減判定の基準

軽減判定は、世帯主および加入者全員の前年の総所得金額等の合計で行われます。7割軽減の基準は「43万円+10万円×(給与所得者等の数-1)」以下です。

ここで重要なのが「給与所得者等の数」という概念です。これは一定の給与収入(55万円超)がある方だけでなく、公的年金等の収入が65歳未満で60万円超、65歳以上で125万円超ある方もカウントされます。

例えば夫婦ともに65歳以上で、夫の年金が200万円、妻の年金が80万円の場合、夫は125万円超なので「給与所得者等」にカウントされますが、妻は125万円以下なのでカウントされません。したがって「数」は1人となり、式中の「数-1」はゼロとなって10万円加算は適用されません。

令和6年度の判定基準

令和6年度の軽減判定基準は以下のとおりです。7割軽減は「43万円+10万円×(給与所得者等の数-1)」以下、5割軽減は「43万円+29万5千円×被保険者数等+10万円×(給与所得者等の数-1)」以下、2割軽減は「43万円+54万5千円×被保険者数等+10万円×(給与所得者等の数-1)」以下となっています。

5割軽減と2割軽減の判定基準額が引き上げられたことで、これまで軽減対象外だった世帯が新たに軽減対象になる可能性があります。

具体的なシミュレーション事例

ここでは具体的なモデルケースを設定し、年間の保険料負担額を詳細にシミュレーションします。

単身世帯・年金収入150万円の場合

70歳で単身世帯、年金収入が150万円のみ、東京都内在住(所得割7.49%、支援金2.57%、均等割計約5.7万円と仮定)のケースを考えます。

まず所得を計算すると、年金収入150万円から公的年金等控除110万円を引いて雑所得は40万円となります。国保の所得割算定基礎額は40万円から基礎控除43万円を引くとマイナスになるため0円です。したがって所得割は0円となります。

軽減判定では、判定対象所得は雑所得40万円から高齢者特例の15万円を引いた25万円として扱われます。7割軽減の基準「43万円以下」を満たすため、均等割の7割が免除されます。保険料は均等割満額5万7,000円の30%(7割引き後)で1万7,100円、月額約1,425円となります。

介護保険料は所得40万円が住民税非課税レベルのため低所得者段階が適用され、基準額6,200円×0.7で月額約4,340円、年額約5万2,000円となります。

結論として、年間の社会保険料負担は国保料約1.7万円と介護料約5.2万円を合計した約6.9万円、月額負担は約5,700円となり、年金収入の約4.6%が社会保険料として消えます。

夫婦世帯・世帯年金300万円の場合

夫72歳で年金220万円、妻70歳で年金80万円、地方都市在住(所得割10%、均等割3万円×2、平等割2.5万円と仮定)のケースです。

夫の所得は220万円から110万円を引いて110万円、算定基礎額は110万円から基礎控除43万円を引いて67万円です。妻の所得は80万円から110万円を引いて0円となります。世帯合計の算定基礎額は67万円で、所得割は67万円×10%で6万7,000円です。

軽減判定では、軽減判定所得は夫(110万円から特例15万円を引いた95万円)と妻(0円)の合計95万円となります。給与所得者等の数は夫(年金125万超)の1人のみで、5割軽減の基準は43万円+29.5万円×2人で102万円です。判定所得95万円は基準額102万円以下のため5割軽減が適用されます。

固定額(均等割6万円+平等割2.5万円の合計8万5,000円)の半額4万2,500円に所得割6万7,000円を加えて、年間国保料は10万9,500円、月額約9,100円となります。

介護保険料は、夫が住民税課税となる可能性が高く標準的な第6段階で月額6,200円、年額7万4,400円、妻は非課税で第3段階程度として年額約5万円、夫婦合計で年額約12万4,000円です。

結論として、年間の社会保険料負担は国保料約11万円と介護料約12.4万円を合計した約23.4万円、世帯年収300万円に対して約7.8%の負担率となります。

現役並み所得の混合世帯の場合

夫76歳(後期高齢者)で年金250万円と不動産所得100万円、妻74歳(国保)で年金100万円、東京都在住のケースは、世帯内で加入制度が分かれる「混合世帯」となり計算が複雑です。

夫の所得は年金(250万円から110万円を引いて140万円)と不動産100万円を合計して240万円、基礎控除43万円を引いた賦課基準額は197万円です。所得割は197万円×9.67%で19万499円、均等割4万7,300円を加えて、夫の後期高齢者医療保険料は約23万7,800円となります。

妻は75歳未満なので国保に単独加入します。妻の所得は100万円から110万円を引いて0円で所得割はゼロですが、国保の軽減判定は世帯主である夫の所得も含めて判定されます。世帯所得240万円は軽減基準を大きく超えるため、妻の均等割約5.7万円は軽減なしの満額請求となります。

介護保険料は、夫が所得240万円で上位段階(第10段階など)に該当する可能性が高く年額12万円前後、妻も世帯が課税世帯となるため中位段階以上で年額8万円前後、夫婦合計で年額約20万円です。

結論として、年間の社会保険料負担は夫医療約23.8万円、妻医療約5.7万円、介護約20万円を合計した約49.5万円、月額にして約4万円超となります。妻が無収入であっても夫に所得があるために妻の国保料の軽減が受けられない「世帯合算判定」の厳しさが表れています。

保険料負担を最適化する方法

老後の社会保険料は、所得が少し増えるだけで跳ね上がる構造になっています。適法な範囲内で負担を最適化するための戦略的思考が重要です。

世帯分離の活用

日本の社会保障制度は「世帯」を単位とすることが多いため、年金暮らしの親と高収入の子どもが同居している場合、世帯全体の所得が高くなり、親の国保料軽減が適用されなくなったり、介護保険料が高額な段階に判定されたりするデメリットが生じます。

この場合、住民票の届出により住所は同じまま世帯を分ける「世帯分離」を行うことで、親を単独世帯(低所得世帯)として扱わせ、保険料や医療費負担を下げられる可能性があります。

ただし世帯分離には副作用も存在します。国保組合の加入資格喪失や会社の家族手当の打ち切り、介護サービス利用時の利用者負担軽減制度への影響などが考えられるため、世帯全体のキャッシュフローへの影響を総合的にシミュレーションする必要があります。

確定申告の判断

株式投資を行っている高齢者で特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、利益に対する税金は天引きで完結しています。これを確定申告して配当控除を受けたり譲渡損との損益通算を行ったりする行為は、慎重な判断が必要です。

確定申告を行うと、株の利益が「合計所得金額」および「総所得金額等」に含まれます。その結果、国保や後期高齢者医療の所得割が増えたり、窓口負担割合(1割から2割、3割)の判定に影響したり、介護保険料の所得段階が上がって保険料が跳ね上がったりする可能性があります。

数万円の税金還付を得るために申告をした結果、社会保険料が十数万円上がり、医療費の窓口負担も3割に上がってしまうという事態は「申告貧乏」のパターンとして知られています。令和6年度からの税制改正により所得税と住民税の課税方式を一致させなければならなくなったため、申告による税還付額と保険料増額分を天秤にかける緻密な計算が不可欠です。

今後の制度動向と備え

令和6年度の制度改正は、賦課限度額の引き上げや介護保険料の多段階化に見られるように、「取れるところから取る」という姿勢をより鮮明にしています。少子高齢化が進む日本において、このトレンドが逆転することは考えにくい状況です。

2040年には高齢者人口がピークを迎え、現役世代1.5人で高齢者1人を支える社会が到来すると予測されています。その時、社会保険料負担は現在の水準をさらに上回っている可能性が高いでしょう。

しかし、制度のロジックを知っていれば予測が可能になり、予測ができれば準備ができます。毎年6月に届く「決定通知書」を単なる請求書として処理するのではなく、その数字の裏にある計算式を読み解き、自身のライフプランにフィードバックさせることが大切です。

老後の生活設計において、年金収入や貯蓄だけでなく、社会保険料という「見えない支出」をしっかり把握し、必要に応じて世帯分離や申告戦略といった対策を講じることで、より安定した老後の家計を実現することができます。制度を正しく理解することこそが、金融資産以上に老後の家計を守る最強の知識となるのです。

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