画像生成AIの世界で圧倒的な人気を誇るStable Diffusionですが、2025年現在では数多くのモデルが存在し、それぞれに異なる特徴があります。初心者の方にとって「どのモデルを選べばいいのか分からない」「モデルの違いが理解できない」といった悩みは非常に多く聞かれます。本記事では、Stable Diffusionの各モデルの種類と違いについて、実際の使用感や性能面から詳しく解説していきます。軽量で扱いやすい1.5系から、最新技術を搭載したSD3.5まで、あなたの目的に最適なモデル選びの参考にしてください。

Stable Diffusionの主要モデル(1.5、SDXL、SD3系)にはどのような違いがあるの?
Stable Diffusionのモデルは大きく4つの系統に分類され、それぞれが異なる技術的進歩を遂げています。
Stable Diffusion 1.5系統は、2022年に公開された軽量モデルで、512×512ピクセルの画像生成に特化しています。最大の特徴は処理速度の速さと低いVRAM消費で、標準的なPCでも快適に動作します。パラメータ数が少ないため、学習素材がそのまま反映されやすく、リアル風人物や学習済みキャラクターの再現性が非常に高いのが魅力です。現在でも高い人気を保つ理由は、豊富な専用LoRAモデルと充実したエコシステムにあります。
Stable Diffusion 2.0/2.1系統では、解像度が768×768ピクセルに向上し、OpenCLIP-ViT/Hをテキストエンコーダーとして採用しました。4倍の解像度アップスケーラーを含み、2048×2048ピクセル以上の画像生成も可能です。depth2imgという新機能により画像からの距離推定ができるようになりましたが、用途によっては1系と比べて再現性が低いケースもあります。
Stable Diffusion XL(SDXL)系統は2023年にリリースされ、最大1,024×1,024ピクセルの高解像度出力が可能になりました。最大の革新は2段階処理システムの採用で、基本モデルが画像の草案を生成した後、リファイメントモデルが精密化を行います。この仕組みにより描写力が飛躍的に向上し、複雑なプロンプトを組まずに高品質な画像を生成できるようになりました。テキスト生成能力も大幅に向上し、読みやすい文字の生成が可能です。ただし、モデルサイズが2倍以上となったため、最低8GB、推奨16GB以上のVRAMが必要です。
Stable Diffusion 3/3.5系統では、モデルアーキテクチャが一新され、Diffusion Transformerを採用しています。T5とCLIPの計3つをText Embedderに使用し、プロンプト理解力がSDXLを大幅に上回ります。SD3.5では3つのモデル構成があり、Largeは80億のパラメータを持つ最強モデルです。生成される絵柄の幅が非常に広く、同一プロンプトでもシード値の違いで多様な画像が生成される「シードばらつき」が特徴的です。ただし、安全対策が厳しく、時々人体の形態学的な崩れが発生することがあります。
各系統の選択基準として、軽量性と豊富なリソースを重視するなら1.5系、高解像度と安定性を求めるならSDXL、最新技術とカスタマイズ性を追求するならSD3系が適しています。
2025年におすすめのStable Diffusionモデルはどれ?用途別の選び方は?
2025年現在、用途に応じた最適なモデル選択が成功の鍵となります。
リアル・実写系を目指す場合、Realistic Visionが最も推奨されます。まるで実写のような人物画像を生成でき、特にポートレートや日本人風のリアル系イラストに強みを発揮します。自然な肌の質感や細かな表情の再現力に優れ、プロフェッショナルな写真撮影のような結果を得られます。Deliberateは、リアルとイラストの中間を得意とする汎用性の高いモデルで、柔軟な陰影や自然な表情が特徴です。構図が破綻しにくく、初心者にも扱いやすい点が魅力です。
ChilloutMixは日本人(アジア人)の美女生成に特化しており、より日本人らしい特徴を出したい場合は「Japanese actress」「Korean idol」といったプロンプトの併用が効果的です。
アニメ・イラスト系では、NoobAI-XLが2025年の注目株です。他のモデルと比較して複雑なポーズや手足の描写が得意で、従来のモデルで難しかった手の表現や複雑な体のポーズを自然に描写できます。キャラクターイラスト制作において大きなアドバンテージを提供します。
Counterfeitは、アニメ調とリアル感のバランスが絶妙で、柔らかい塗りや滑らかな肌表現が魅力です。幻想的な世界観の表現にも向いており、美少女キャラクターの生成に優れています。Anime Anything v4やAbyssOrangeMixは、純粋なアニメスタイルを求める場合に最適で、日本のアニメ文化に特化した学習データを使用しています。
2025年の最新動向として、Pony v6 XLは約260万枚のアニメ/ファーリー画像で再学習されたSDXLベースモデルで、専用タグ「score_9」による品質制御が可能です。Illustrious XLは1536×1536ネイティブのSDXL系イラスト特化モデルで、データセットを約2倍に拡充し、高解像度での精密なイラスト生成を実現しています。
システム要件別の選択では、VRAM 4-8GBの環境なら1.5系、8-16GBならSDXL系、16GB以上ならSD3系が推奨されます。商用利用を考慮する場合は、必ずライセンスの確認が必要で、基本的にCreativeML OpenRAIL-Mライセンスのモデルが安全です。
モデル選択の最終的なポイントは、まず方向性(リアル系かアニメ系か)を決定し、次にシステム要件と用途を確認、最後にライセンスと商用利用の可否をチェックすることです。この手順を踏むことで、最適なモデル選択が可能になります。
LoRAやVAE、ControlNetなどのコンポーネントの種類と使い分け方法は?
Stable Diffusionの魅力は、様々なコンポーネントを組み合わせることで、無限の表現可能性を実現できる点にあります。
Checkpoint(チェックポイント)は、画像生成の基盤となる学習済みモデル本体です。これは必須コンポーネントで、様々な画風(アニメ風、実写風など)に特化したバージョンが存在します。単純に「モデル」と言う場合、通常はこのCheckpointを指します。
LoRA(Low-Rank Adaptation)は、特定の画風や要素に特化した追加学習データで、2025年において最も重要なコンポーネントの一つです。従来の全体的なモデル再学習と比較して、少ないデータと計算資源で特定の要素を追加学習できます。例えば、「お嬢様ポーズ」のような特定のポーズや、特定のキャラクターの再現に威力を発揮します。
LoRAの使用方法は、ダウンロードしたファイルを「stable-diffusion-webui\models\Lora」ディレクトリに配置し、WebUIの「Lora」タブから選択してプロンプトに組み込みます。強度設定は0.7から0.8の範囲から調整を始めることが2025年の推奨値です。キャラクターLoRAの場合、この範囲であれば特徴を維持しながら過度な強調を避けられます。
VAE(Variational Auto-Encoder)は、モデルが出力した情報を人間が知覚可能な画像に変換する重要な技術要素です。カスタムVAEを適用することで、彩度の向上や画像のシャープネスが改善され、特に顔の詳細や照明効果の処理において高品質な結果を得られます。生成画像の全体的なスタイルと視覚効果の一貫性を保つ役割も担います。
ControlNetは、プロンプトでは指示しきれないポーズや構図を指定できる拡張機能です。種類によって動作が大きく異なり、人物のポーズ検出、深度情報や線画からの生成、特定要素の変更、高解像度化など多岐にわたる用途があります。2025年の最新情報として、Stable Diffusion 3.5専用のControlNet(Blur、Canny、Depth)がリリースされ、最新モデルでも精密な構図制御が可能になりました。
Embedding(Textual Inversion)は、特定のプロンプトをまとめて1つのキーワードとして呼び出せる機能です。「美しい顔の女性、長い髪、笑顔」といった一連のプロンプトを「美しいスタイル」というキーワードだけで適用できます。特にネガティブプロンプトでの使用が多く、不要な要素を効率的に除外できます。
効果的な組み合わせ方法として、基本的には「Checkpoint + VAE」が基本構成で、そこに目的に応じて「LoRA」「ControlNet」「Embedding」を追加します。例えば、特定キャラクターの画像を生成する場合は「アニメ系Checkpoint + キャラクターLoRA + 適切なVAE + ポーズ制御用ControlNet」という組み合わせが効果的です。
2025年のトレンドとして、複数のLoRAを同時使用する技術が向上し、キャラクター + 画風 + ポーズの3要素を別々のLoRAで制御する手法が一般的になっています。この手法により、より細かな表現制御が可能になり、プロフェッショナルレベルの画像生成が実現できます。
Stable Diffusionモデルの商用利用で注意すべきライセンスの違いは?
Stable Diffusionの商用利用においては、ライセンスの理解と適切な確認が法的リスクを避ける上で極めて重要です。
基本的なライセンス体系として、Stable Diffusionは「CreativeML OpenRAIL++ ライセンス」が付与されており、「著者は、あなたが生成した出力に対する権利を主張しません。あなたはそれらを自由に使用することができる」とされています。基本的に商用利用も認められているのが大きな特徴です。
このライセンスでは、法律に違反するコンテンツの共有、人に危害を与えること、個人情報の悪用、誤情報の拡散、弱者への攻撃などを禁じています。これらの禁止事項は常識的な範囲内であり、通常の商用利用では問題になりません。
商用利用ができないケースとして、主に3つのパターンがあります。商用利用不可のモデルを使用した場合、商用利用不可のモデルをLoRAで学習させた場合、商用利用不可の画像をimg2imgで読み込んだ場合です。これらは連鎖的にライセンス制限が適用されるため、特に注意が必要です。
ライセンス確認の具体的方法として、Civitaiで提供されているモデルは、モデルページの詳細欄下にあるリンクやアイコンで利用可能範囲を確認できます。アイコンがなく「CreativeML Open RAIL-M」のリンクだけの場合は商用利用可能です。Hugging Faceでは、ページの「License」箇所で「creativeml-openrail-m」になっていれば商用利用可能です。
特に注意すべきライセンスとして、「CreativeML Open RAIL-M dreamlike」があります。これはCreativeML Open RAIL-Mの改変版で、「作者によっていつでもライセンスを変更できる」という記述があり、商用利用において高いリスクを含んでいます。このライセンスのモデルは商用利用を避けることを強く推奨します。
SD3.5のライセンスは「Stability AI Community License」の下で提供されており、非営利目的は個人・組織とも無料、商用利用は年間収益100万ドル未満の企業・クリエイターは無料という条件があります。大企業での使用を検討する場合は、この収益制限に注意が必要です。
著作権関連の重要な注意点として、img2imgによる生成画像の商用利用には特別な注意が必要です。参考元の画像に著作権がある場合、無断使用して類似構図の画像を転用することは「著作権侵害」に抵触し、最悪の場合訴訟される可能性があります。
実務的な対策として、会社での活用時には専門家への相談、定期的なライセンス変更の確認、使用するすべてのコンポーネント(Checkpoint、LoRA、VAEなど)のライセンス確認が重要です。また、商用利用前には必ず最新のライセンス情報を確認し、疑問がある場合は使用を控えるという慎重なアプローチが推奨されます。
2025年のトレンドとして、ライセンス管理ツールの登場により、使用するモデルのライセンス状況を一括管理できるサービスも出現しています。商用利用を本格的に検討する場合は、こうしたツールの活用も有効な選択肢となります。
ComfyUIとWebUIの違いは?どちらを選ぶべき?
Stable Diffusionを使用する上で、インターフェースの選択は作業効率と表現の幅に大きく影響します。2025年現在、ComfyUIとStable Diffusion WebUIが主要な選択肢となっています。
Stable Diffusion WebUIは、直感的で分かりやすいインターフェースを持つ従来型のツールです。プロンプト入力、パラメーター調整、画像生成というシンプルな流れで操作でき、初心者でも短時間で習得できます。豊富な拡張機能(Extensions)が利用でき、ControlNet、LoRA、各種アップスケーラーなどを簡単に導入できるのが特徴です。一般的な画像生成作業や学習目的には最適で、コミュニティサポートも充実しています。
ComfyUIは、ノードベースのインターフェースを採用し、処理の流れを視覚的に組み立てる革新的なツールです。各処理ステップをノードとして配置し、それらを線で繋ぐことで複雑なワークフローを構築できます。この仕組みにより、従来では不可能だった高度な画像生成プロセスの実現が可能になりました。
ComfyUIの主要な利点として、複数のControlNetの同時使用、段階的な画像処理、カスタムワークフローの保存・共有、メモリ効率の最適化があります。例えば、OpenposeとScribbleを組み合わせて人物のポーズと線画を同時制御したり、複数のLoRAを段階的に適用したりできます。また、Stable Diffusion 3.5との互換性が高く、2025年現在では最新モデルを使用する際の最も安定した選択肢となっています。
学習コストと使い分けの観点から、WebUIは即座に始められるのに対し、ComfyUIは習得に時間が必要です。しかし、一度慣れると作業効率と表現の幅が大幅に向上します。WebUIでは難しい複雑な条件分岐やバッチ処理も、ComfyUIなら直感的に構築できます。
2025年の推奨選択基準として、初心者や簡単な画像生成を目的とする場合はWebUI、プロフェッショナルな用途や複雑な表現を求める場合はComfyUIが適しています。商用制作や効率的なバッチ処理が必要な場合も、ComfyUIの方が有利です。
移行のタイミングについては、WebUIで基本的な画像生成に慣れた後、より高度な表現や効率性を求めるようになったタイミングでComfyUIに移行するのが理想的です。多くのプロフェッショナルユーザーは、用途に応じて両方を使い分けています。
実際の作業例として、キャラクターデザインの場合、WebUIで基本的なコンセプトを固め、ComfyUIで詳細な調整や複数バリエーションの生成を行うというハイブリッドアプローチが効果的です。
技術的な側面では、ComfyUIはメモリ使用量の最適化に優れ、同じハードウェアでもより高解像度の画像生成が可能です。また、ワークフローの再利用性が高く、一度作成したワークフローを他のプロジェクトでも活用できるため、長期的な作業効率が向上します。
2025年のトレンドとして、ComfyUIのカスタムノードが急速に発展しており、WebUIの拡張機能に相当する機能がComfyUI用にも多数開発されています。このため、機能面での差は縮小傾向にあり、インターフェースの好みと用途の複雑さが選択の主要な決定要因となっています。
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