子ども・子育て支援金は独身税?負担額と批判の真相を徹底解説

社会

子ども・子育て支援金制度は、2026年4月から医療保険料に上乗せして徴収される新しい少子化対策の財源制度です。SNSでは「独身税」と呼ばれ批判が殺到していますが、実際の負担額は年収や加入する医療保険によって異なり、2028年度には被保険者1人あたり月額350円から950円程度となる見込みです。この制度について、負担額のシミュレーションから批判の内容、海外の独身税の失敗事例、そして給付内容まで詳しく解説していきます。

子ども・子育て支援金制度とは

子ども・子育て支援金制度とは、少子化対策の財源を確保するために、全国民が医療保険料に上乗せして負担する新しい社会保険制度のことです。2024年6月5日に「改正子ども・子育て支援法」が国会で成立し、2026年4月から制度がスタートすることが正式に決定しました。

この制度が創設された背景には、日本が直面する深刻な少子化問題があります。2024年における日本の出生率はわずか1.15で、9年連続で低下し続けています。政府は、若年人口が急激に減少し始める2030年代までが少子化を食い止める「最後のチャンス」と位置づけています。

2023年12月には「こども未来戦略」が閣議決定され、総額3.6兆円規模の「こども・子育て支援加速化プラン」がまとめられました。この予算のうち約1兆円を子ども・子育て支援金制度で賄う計画となっています。

制度の仕組みとしては、健康保険料や国民健康保険料を納める際に、子ども・子育て支援金もまとめて納める形となります。つまり、給与から天引きされる社会保険料が増額されるということです。集められた資金は、児童手当の拡充や育児休業支援など、少子化対策のための特定財源として活用されます。

子ども・子育て支援金の負担額シミュレーション

医療保険制度別の負担額

制度が確立する2028年度における被保険者1人あたりの負担額は、加入している医療保険制度によって異なります。

医療保険制度月額負担額(2028年度)
共済組合(公務員・私立学校職員)950円
健康保険組合(大企業の会社員)850円
協会けんぽ(中小企業の会社員)700円
国民健康保険(自営業など)400円
後期高齢者医療制度350円

共済組合に加入する公務員や私立学校職員の負担額が最も高く、月額950円となっています。会社員・公務員の場合は労使折半が前提であり、同じ額を会社側も負担することになります。

岸田首相は国会答弁において、加入者一人当たりの負担は平均で月額約450円だと説明してきました。しかし、この数字は扶養家族を含めた平均値であり、実際に保険料を支払う「被保険者一人当たり」で見ると負担額は大きく異なります。

段階的な導入スケジュール

支援金の徴収は段階的に引き上げられます。令和8年度(2026年度)は6,000億円程度、令和9年度(2027年度)は8,000億円程度、令和10年度(2028年度)以降は1兆円程度が徴収される計画です。施行期日は令和8年4月1日であり、令和8年4月分保険料(5月納付分)より徴収が開始されます。

加入者1人あたりの支援金額の推移を見ると、健康保険組合では令和8年度300円から令和10年度500円へ、協会けんぽでは令和8年度250円から令和10年度450円へ、共済組合では令和8年度350円から令和10年度600円へと段階的に引き上げられます。

年収別の負担額

健康保険組合連合会(健保連)の試算によると、公的医療保険の料率に0.24%程度を上乗せして負担する見込みです。

年収400万円の会社員の場合、2028年度の負担額は月額500円を超えます。年収500万円では月額約600円、年収600万円では月額約1,000円(年間約12,000円)の負担となります。年収が高ければ、さらに負担額は増加します。

事業主負担分を含めた総負担額は、協会けんぽで月980円(年間11,770円)、健保組合で月1,430円(年間17,170円)となり、多くの医療保険で月1,000円を上回る負担増が見込まれます。

世帯構成による負担の違い

共働き世帯の場合、夫婦それぞれが被保険者として負担が発生するため、2人分の負担となります。一方、専業主婦(夫)のいる家庭では1人分の負担で済みます。この点について不公平ではないかという指摘も出ています。

なぜ「独身税」と批判されるのか

「独身税」という呼称の由来

子ども・子育て支援金制度がSNSなどで「独身税」と呼ばれるようになった理由は、この制度が子育て世帯を支援する一方で、子どもがいない方や子育てを終えた方にも財源確保のための負担が求められるためです。「直接的なメリットがないのに負担だけ増える」との声があがり、「独身税」と揶揄されるようになりました。

社会保険料の一種であるため「独身」の人だけが支払うわけではありませんが、ネットやSNSでは「子どものいない人々にとっては見返りゼロでカネを奪われる実質的な独身税だ」という批判が相次いでいます。「なぜ子どもがいない独身者も負担しないといけないのか」「まるで独身税ではないか」という反発が上がっており、批判的な投稿には数百万のインプレッションが付くものもあります。

政府の見解

三原じゅん子内閣府特命担当大臣は、SNSなどで批判の声が上がっていることについて、「これを『独身税』と言い換えることも間違っている」と反論しています。政府の立場としては、少子化対策は社会全体の問題であり、全世代で支え合うべきものだという考えです。

また、政府は「歳出改革と賃上げで社会保障負担率の抑制の効果を生じさせ、その範囲内で制度を構築していくことにより、全体として実質的に負担は生じない」と説明し、子ども・子育て支援金による実質負担はゼロだと主張しています。しかし、野党は「実質的な増税だ」と反論しています。

SNSでの批判内容

「余計に少子化が進むだろ」「こども家庭庁をなくせば財源確保できる」といった声が多く見られます。「子どもを育てていないのに支払うのは納得できない」「なぜ医療保険料に上乗せして徴収するのか、税金でまかなうべきでは」といった不満の声も多くあがっています。

海外の独身税の歴史と失敗事例

ブルガリアの独身税

実際に「独身税」と呼べる制度を導入した国が存在します。その代表例がブルガリアです。ブルガリアでは、1968年から1989年にかけて独身税が実施されました。25歳以上の独身者が対象で、収入の5%から10%が徴収されました。婚姻者と比べて税金を高くすることで、結婚を促すことを目的としていました。

当時ブルガリアでは少子化が進んでおり、将来的に労働力が不足することが懸念されていました。「国民に結婚して家庭を持ってもらおう。そうすれば子どもを産んでくれるはずだ」という考えのもとで打ち出された政策でした。

ブルガリア独身税の失敗

しかし、結果は大失敗でした。独身税が導入されていた間、ブルガリアの出生率は2.18から1.86へと下がったと言われています。独身税のせいで結婚資金を貯められない人が多発し、かえって独身率は上がって出生率は下がるという結果に終わりました。

特に都市部の若者の間では、「税で縛られるくらいなら自由を選ぶ」という意識が広まり、結婚や出産へのモチベーションが下がってしまったという指摘もあります。低所得層にとってはこの税が大きな経済的圧力となりました。

世界各国の独身税事例

世界では実際に独身税が導入された国として、ブルガリア、ルーマニア、古代ローマなどがありました。古代中国や古代ローマ、アメリカ各州、イタリア王国、ナチス・ドイツ、第二次世界大戦後はポーランド、ソビエト連邦、ルーマニアなど世界各地で広く施行されていました。

旧ソ連では1941年より「子なし税」といった名称の独身税が徴収されていましたが、旧ソ連崩壊を受けて廃止されました。しかし、多くの国で期待された効果が得られず、強い反発により廃止されています。ブルガリアの独身税が失敗して以降、世界で独身税を導入した国はありません。

歴史からの教訓

海外の事例から学べることは、独身者への課税という手法では少子化対策として効果が期待できないということです。むしろ、若者の経済的負担を増やすことで、結婚・出産への意欲を削ぐ逆効果となる可能性があります。

子ども・子育て支援金制度の問題点

現役世代への負担偏重

支援金制度は、現役世代の手取り額を減らし、子ども・子育て支援策や少子化対策と逆行してしまうという問題があります。政府の想定でも、制度創設の初年度である令和8年度からの2年間は、後期高齢者医療広域連合全体と現役世代をはじめとする健康保険者全体の負担額の比は、8対92とされています。

支援金の負担が現役世代に偏れば、子育て世帯の負担が増大し、出産意欲に悪影響を与えることも考えられます。社会保険料の9割程度は、結婚・出産予備軍、現在子育て中の世帯を含む現役世代が負担しています。これが上乗せされれば、現役世代の手取り所得が減ってしまいます。手取りが減れば生活の余裕がなくなり、結婚・出産が減って少子化が加速するリスクが高まります。

医療保険制度間の不公平

医療保険制度ごとで見ても、負担額に格差があります。たとえ所得が同じでも、加入している医療保険制度によって負担額が異なるのであれば、納得感のある制度にはなりません。特に、国民健康保険においては、被用者の保険料負担は概ね収入対比7%を超えており、被用者保険の本人負担に比べ顕著に重いことが指摘されています。

地域間格差の問題

国民健康保険においては、地域間でも負担額の格差があります。1,716の市町村国保ごとに子ども・子育て支援金の料率は異なり、同じ収入でも市町村によって負担額が異なってきます。給付と結びつかない子ども・子育て支援金の地域差は正当化しにくいものです。

社会保険制度の趣旨からの逸脱

子ども・子育て支援金は、医療に直結しない費用を医療保険の枠組みで徴収するものであり、給付と負担の関連性が極めて希薄で、社会保険制度の趣旨を逸脱しているという批判があります。

日本総研は社会保険料利用の問題点として、社会保険料の使い道と料率は健康保険組合など保険集団内において自律的に決定されるものであり、政治家による社会保険料の利用への言及自体が保険者自治の侵害にあたると指摘しています。また、出生率の引き上げという目的は、社会保険本来の目的である老齢・障害・疾病などリスクの発生への備えではなく、その財源に社会保険料は適さないとしています。

逆進性の問題

負担が給付と切り離されている今回の子ども・子育て支援金制度のような場合、一定の所得水準で負担の上限が設定されることは、逆進性(低所得者ほど対収入比の負担割合が高まること)を生み、不公平な制度になってしまいます。

子ども・子育て支援に関する給付を受けない世帯には不公平感があることに加え、保険料の賦課対象は主に給与や賞与であるため、負担が現役世代の所得に偏る傾向にあります。さらに、社会保険料には逆進性があり、低所得層の負担が重くなるという特性も指摘されています。

想定以上の負担額

岸田首相はこれまで、加入者一人当たりの負担は平均で月額約450円だと国会などで答弁してきました。しかし、実際の試算では年収400万円でも500円を超えることが分かり、批判が高まっています。医療保険に上乗せされる支援金負担額は、大半で「被保険者」1人あたり月1,000円を超える試算結果となりました。

ひとり親家庭への影響

「独身税」という呼称に関連して、ひとり親家庭(シングルマザー・シングルファザー)も負担の対象となる点が問題視されています。子育てをしているにもかかわらず「独身」として負担を求められることへの疑問の声があります。ひとり親家庭の相対的貧困率は50.8%と高い水準にあり、収入が限られるひとり親家庭にとっては、社会保険料の上乗せ負担が生活に影響を与える可能性があります。

財源をめぐる議論

なぜ社会保険料が選ばれたのか

少子化対策の財源として、税金ではなく社会保険料が選ばれた背景には、政治的な事情があります。消費税は政治家・国民の間で評判が悪く、消費税率の引き上げで財源を賄うとすれば、強い反発が生じる可能性が高く、政治的にも大きな打撃となり得ます。一方、社会保険料であれば、税金という名目を避けることができます。

経済界の意見

経団連は「消費税も含めたさまざまな税財源の組み合わせによる新たな負担も選択肢とすべきだ」と主張しています。他方、政府は「少子化対策の財源を確保するために、経済成長を阻害し、若者・子育て世代の所得を減らすことがあってはならない」と慎重な姿勢です。

野党の代替案

立憲民主党は、この「子ども・子育て支援金制度」を廃止し、現在日本銀行が保有しているETF(上場投資信託)から得られる分配金収入を代替財源として活用するための修正案を提出しました。

子ども・子育て支援金制度で受けられる給付

児童手当の拡充

2024年10月分から児童手当が大幅に拡充されました。主な変更点として、所得制限の撤廃があります。これまで、主たる生計者の年収が960万円以上のケースなどは受給に制限がありましたが、所得にかかわらず全額支給となりました。

支給対象も高校生年代まで拡大されました。これまでは中学生以下が支給対象でしたが、高校生年代(18歳の誕生日以後の最初の3月31日まで)も支給対象となっています。第3子以降の支給額も増額され、18歳に達する日以後の最初の3月31日まで(高校生年代まで)の子は、月額3万円の支給となります。

多子加算のカウント方法も変更されました。現在の高校生年代までを第1子とする扱いを見直し、22歳に達する日以後の最初の3月31日までの上の子について、親等の経済的負担がある場合は第1子とする扱いに変更となりました。政府は当初2025年2月から支給開始する方針でしたが、「遅い」との批判を受けて2カ月前倒しし、2024年12月から支給開始されています。

出生後休業支援給付

2025年4月から「出生後休業支援給付」が導入され、育児休業中の手取り額が約100%に補償される新制度が開始されました。この制度は、子の出生直後の一定期間に、両親ともに14日以上の育児休業を取得した場合に最大28日間支給される、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の上乗せ給付です。

給付額は休業前賃金の13%相当額で、既存の育児休業給付金(休業前賃金の67%相当額)との合算で休業前賃金の8割が支給されます。これらの給付金には所得税や住民税がかからないうえ、育休中には社会保険料も免除されます。育休前の給与支給額を100%とすると、税金や社会保険料を支払った後の手取りは80%くらいになりますが、育児休業給付金と出生後休業支援給付金は税金や社会保険料が免除になるため支給額がそのまま手取りになります。つまり育休前の手取りの水準と同等の支給額を受け取ることができ、実質「手取り10割」が実現します。

支給要件として、父親は子どもが生まれてから8週までの間に通算して14日以上の育児休業を取得、あるいは産後パパ育休を取得することが必要です。女性は産後休業後8週間以内に育児休業を14日以上取得しなければなりません。

育児時短就業給付

育児時短就業給付金とは、雇用保険に加入している方が、2歳未満の子どもを養育するために時短勤務して、賃金が低下した場合に支給される給付金です。出生後休業支援給付金と同じく、2025年4月に新設されました。時短勤務中の賃金の10%が支給されます。

こども誰でも通園制度

「こども誰でも通園制度」とは、保護者の就労有無や理由を問わず、0歳から2歳の未就園児が保育施設を利用できる制度です。2026年度から全国の自治体で開始されます。対象年齢は0歳6ヶ月から3歳未満で、保育所、認定こども園、幼稚園、地域子育て支援拠点、児童発達支援センターなどで預かりを受けられます。利用時間は1人あたり「月10時間」を上限としています。

2024年には150程度の自治体で試験的に導入され、2025年には制度化して実施する自治体が増加し、2026年に全国の自治体において実施予定となっています。

保護者へのメリットとして、育児負担の軽減や孤立感の解消につながります。0歳から2歳児の約6割を占める未就園児を含め、子育て家庭の多くが「孤立した育児」の中で不安や悩みを抱えており、支援の強化を求める意見があります。預ける時間を活用して、趣味や友人との食事などをすることで保護者もリフレッシュできます。

子どもへのメリットとして、同世代の子どもと関わる機会を設けることで発達を促す良質な成育環境を整備することが期待されています。在宅育児の子どもが家庭外での経験や地域での対人関係を得られること、専門家から子どもの良さを伝えられることで保護者が新たな気付きを得ることが意義として挙げられています。

一時預かりとの違いとして、一時預かりの場合は保護者の仕事や病気などの具体的な理由が必要とされますが、こども誰でも通園制度では、特別な理由や証明書類を提出する必要がなく、保護者の都合に合わせて柔軟に子どもを預けられます。

妊婦のための支援給付

2025年4月から「妊婦のための支援給付」が開始され、妊娠・出産時に10万円の給付金が支給されます。

自営業・フリーランスへの支援拡充

2026年10月より、自営業・フリーランス等の国民年金第1号被保険者は、子どもが1歳になるまで国民年金保険料が免除されます。免除措置期間の各月は「保険料納付済期間」に算入され、将来の年金が減ることはありません。この改正は、自営業者やフリーランスなど育児休業給付を受けられない国民年金第1号被保険者に対する経済的支援を目的としています。

給付改善額

子ども・子育て支援金制度の創設により、子ども一人当たりの給付改善額(高校生年代まで)は約146万円です。現行の平均的な児童手当額約206万円と合わせると、給付改善額は合計約352万円となります。

ひとり親家庭と子ども・子育て支援金制度

ひとり親家庭への給付の恩恵

子ども・子育て支援金制度により、ひとり親家庭も多くの恩恵を受けることが期待されています。従来の児童手当が拡充され、所得制限が撤廃されたり、支給対象が高校生まで延長されました。子ども1人あたり約206万円から約352万円まで給付が増加します。

ひとり親家庭向けの既存支援制度

こども家庭庁によると、ひとり親家庭等に対する支援として、「子育て・生活支援」「就業支援」「養育費確保等支援」「経済的支援」の4本柱により施策を推進しています。

児童扶養手当は「児童を養育しているひとり親家庭の方」が対象で、2024年11月分から制度が拡充され、所得限度額や支給額の引き上げなどが行われました。18歳に達するまでの子ども(障がいのある場合は20歳未満)を養育している親などが対象です。その他にも、住宅支援、就業支援、医療費助成など様々な支援制度が用意されています。自治体によって利用できる制度が異なるため、居住地の窓口で確認することが推奨されます。

子ども・子育て支援金制度の今後の展望

制度開始に向けた準備

2026年4月の制度開始に向けて、各健康保険組合や企業では対応準備が進められています。従業員への周知や給与計算システムの改修などが必要となります。

負担額の見直し可能性

制度開始後も、経済状況や少子化の進行状況によって負担額が見直される可能性があります。「都合のよい財布」になるのではないかという懸念も指摘されています。

少子化対策の効果検証

最も重要なのは、この制度が本当に少子化対策として効果があるかどうかです。海外の独身税の事例からも分かるように、経済的負担を増やすことが逆効果になる可能性もあります。制度開始後の出生率や婚姻率の推移を注視する必要があります。

社会的合意形成の必要性

この制度に対する国民の理解と納得を得ることが重要です。「独身税」という批判的な呼称が広まっていることからも分かるように、現状では十分な合意形成ができているとは言い難い状況です。政府には、制度の意義や効果について、より丁寧な説明が求められます。

まとめ

子ども・子育て支援金制度は、少子化という国家的危機に対応するための新しい仕組みとして創設されました。全世代・全経済主体で子育て世帯を支えるという理念は理解できるものの、多くの課題と批判を抱えています。

主な課題としては、現役世代への負担偏重、医療保険制度間や地域間の不公平、社会保険制度の趣旨からの逸脱、逆進性の問題などがあります。また、政府発表の負担額と実際の負担額に乖離があることへの不信感も強く、「独身税」という批判的な呼称が広まっていることは、この制度に対する国民の不満や疑問を象徴しています。

海外の独身税の失敗事例からも学ぶべきことは多く、ブルガリアでは独身税導入期間中に出生率が2.18から1.86へと低下しました。経済的負担を増やすことが、結婚・出産への意欲を削ぐ逆効果となる可能性があることを歴史が示しています。

一方で、制度によって子ども一人当たり約146万円の給付改善が見込まれることは事実です。児童手当の拡充、出生後休業支援給付による手取り10割の実現、こども誰でも通園制度の創設など、子育て世帯にとってはメリットのある施策も含まれています。

少子化対策は、日本の将来を左右する重要課題です。しかし、その財源のあり方については、より広範な議論と社会的合意形成が必要です。子育て世帯への支援を充実させつつ、現役世代や独身者への過度な負担を避けるバランスの取れた制度設計が求められています。2026年4月の制度開始まで、そしてその後も、この制度の在り方については継続的な議論と検証が必要です。

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