マクドナルドのハッピーセットで配布されたポケモンカードが高騰した理由は、わずか3日間という配布期間の短さ、日本限定という地理的希少性、そしてピカチュウという人気キャラクターの需要が重なったためです。2025年8月に実施されたこのキャンペーンでは、転売ヤーによる大規模な買い占めが発生し、初日にして多くの店舗で在庫切れとなる異常事態となりました。ハッピーセット1つ510円から540円程度で購入できたポケモンカードは、発売から約1ヶ月後には未開封パックで5,000円、PSA10の鑑定済みカードに至っては44,000円という価格で取引されるようになりました。
この騒動は単なる転売問題にとどまらず、カードだけを抜き取って食品を廃棄するという深刻なフードロス問題を引き起こしました。本記事では、なぜマックのハッピーセットに付いてきたポケカがここまで高騰したのか、転売ヤーがどのような手口で買い占めを行ったのか、そしてこの問題が社会に投げかけた課題について、詳しく解説していきます。

2025年8月マクドナルド×ポケモンカードキャンペーンとは
2025年8月のマクドナルド×ポケモンカードキャンペーンは、ハッピーセット「ポケモン」の販売に合わせて実施された特別企画でした。日本マクドナルドは2025年8月8日からハッピーセット「ポケモン」の販売を開始し、ピカチュウやイーブイなど全9種類の玩具を用意しました。
さらに特別企画として、2025年8月9日から8月11日までの3日間限定で、ハッピーセットを1つ購入するごとにオリジナルイラストの「ピカチュウ」1枚と、「ラルトス」「リオル」「ニャオハ」「ホゲータ」「クワッス」の全5種類の中からランダムに1枚、計2枚のポケモンカードが配布されました。ハッピーセットの価格は510円から540円程度であり、子供向けのセットメニューとして親しまれている商品です。
キャンペーン開始とともに、全国のマクドナルド店舗には大勢の客が押し寄せました。店内のカウンター前は身動きがとれないほどの混雑となり、長蛇の列ができる店舗が続出しました。日本マクドナルドは8月9日の時点で、多くの店舗でポケモンカードの配布が終了したと発表しました。公式サイトでは「予想を上回る売れ行きのため、多くの店舗で終了となりましたことをご案内申し上げます」と報告されましたが、本来3日間の予定だった配布がわずか初日で終了するという異例の事態となりました。
マックハッピーセットのポケカ価格高騰の実態
ハッピーセットのポケモンカードは、発売直後から急激な価格高騰を見せました。ポケモンカードの配布が始まると同時に、フリマアプリ「メルカリ」などで高額での出品が相次ぎました。発売初日の時点で、未開封のプロモパックが約2,000円程度で取引されるようになりました。ハッピーセットの価格が510円から540円程度であることを考えると、カードだけで約4倍の価格がついたことになります。
発売から約1ヶ月が経過した時点では、価格はさらに高騰していました。未開封パックは1つ5,000円で取引され、開封済みのピカチュウカード1枚でも4,000円の値がつくようになりました。ハッピーセットの価格と比較すると、約10倍の価格で取引されていることになります。
2025年9月11日時点では、PSA10という最高グレードの鑑定評価を受けたカードが44,000円、美品の素体で鑑定なしでも7,000円という価格になりました。わずか1ヶ月で、価格が大幅に上昇したことがわかります。
海外市場においても、マクドナルドのポケモンカードは3,500円を超える価格で転売されているケースが報告されています。マックコラボのピカチュウは日本限定生産品であるため、海外のコレクターからの注目度が非常に高く、国際的な需要が価格を押し上げる要因となっています。
マックハッピーセットのポケカが高騰した5つの理由
入手期間の極端な限定性
ハッピーセットのポケモンカードが高騰した最大の理由は、配布期間がわずか3日間という極めて短い期間に限定されていたことです。しかも実際には初日でほとんどの店舗で在庫切れとなったため、実質的な入手可能期間はさらに短くなりました。この希少性が、カードの価値を大きく押し上げる要因となりました。一般的なトレーディングカードであれば、店舗やオンラインで継続的に購入できますが、このキャンペーンでは限られた時間内に限られた店舗でしか入手できなかったため、需要に対して供給が極端に少ない状態が生まれました。
日本限定という地理的希少性
マクドナルドのコラボポケモンカードは日本限定の生産品でした。ポケモンは世界的なコンテンツであり、現在16言語、93か国で販売され、約700万人がプレイしているとされています。そのため、日本でしか手に入らないプロモカードは、海外のコレクターにとって非常に価値のあるアイテムとなります。特にアメリカやヨーロッパのポケモンカードコレクターにとって、日本限定のプロモカードは「必携のアイテム」として認識されており、国境を越えた需要が価格を押し上げる大きな要因となりました。
ピカチュウというキャラクターの人気
ピカチュウはポケモンを代表する大人気キャラクターです。これまでに登場したピカチュウのカードは、初版カードでも現行プロモでも常に需要が底堅く、希少価値の高いカードは現在も価格が上昇し続けています。ピカチュウのカードは、コレクターにとって「必ず押さえておきたいカード」として認識されています。今回のマクドナルドコラボでは、オリジナルイラストのピカチュウが必ず1枚封入されていたため、ピカチュウファンやコレクターからの需要が集中しました。
過去のマックコラボカードの高騰実績
マクドナルドとポケモンカードのコラボは今回が初めてではありませんでした。2002年にマクドナルドで限定発売された「マクドナルドオリジナル ミニマムパック」に収録されていたピカチュウは、現在約13万円近くで買取されています。過去のコラボカードが高額になった実績があるため、今回のカードも将来的な値上がりを期待して購入する人が多かったと考えられます。過去の事例から「マックのポケカは将来的に価値が上がる」という認識が広まっており、投資目的での購入者も多く存在しました。
ポケモンカード市場全体の盛り上がり
ポケモンカードは、2010年代半ば以降に競技シーンが盛んになったことでコミュニティが拡大しました。さらに新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要と、金融緩和による資金余りが重なり、投資対象としても注目されるようになりました。
2018年頃には、販売元のポケモンがYouTuberを起用した大々的なプロモーションを行い、500円で始められるスターターデッキを宣伝したことで、ポケモンカードのプレーヤーが一気に増加しました。その結果、品切れが頻発し、二次流通価格が高騰する事態が発生しました。
現在、トレーディングカード投資の対象として最も多く選ばれているのはポケモンカードで、その割合は86%に達しています。次いで遊戯王の26%、ワンピースカードの13%となっており、ポケモンカードの人気は圧倒的です。このような市場環境の中で、限定カードは特に投資価値が高いと見なされ、価格高騰に拍車がかかりました。
転売ヤーによるハッピーセットポケカ買い占めの実態
転売ヤーの手口と購入制限の回避方法
今回の騒動では、転売ヤーによる組織的な買い占めが横行しました。マクドナルドは「1人5セットまで」という購入制限を設けていましたが、これを回避するために様々な手口が使われました。
ある転売ヤーは、マクドナルドで働く友人に協力してもらうなどして、ハッピーセットをおよそ80セット購入しました。そして、そのほとんどをフリマアプリですぐに転売し、少なくとも10万円以上の利益を得たと報じられています。この転売ヤーは取材に対し「”神イベ”でした。神イベントです。もう一回やってほしい…。悪いことしてるってあんま思わないですね」「あれはマックが悪い」と語っており、罪悪感を持っていない様子がうかがえます。
購入制限が設けられていたにもかかわらず、現場ではルールを無視した転売ヤーによる買い占めが横行しました。複数人で来店して別々に購入する、何度も店舗を訪れて繰り返し購入する、複数の店舗を回って購入するなど、様々な方法で制限を回避する行為が見られました。また、販売開始前からフリマアプリに出品されるケースもあり、転売を前提とした組織的な活動が行われていたことがわかります。
現場で発生した混乱と子供たちへの影響
転売ヤーの殺到により、店舗では大きな混乱が発生しました。長い行列を耐えて順番が来ても、カードを入手できずに落胆する親子の姿も見られました。本来、子供向けの商品であるハッピーセットが、転売ヤーによって買い占められてしまったのです。
店舗スタッフへの負担も大きく、元店員からは「もうやめにしたら」という声も上がっています。ポケモンカードが付くキャンペーンは「地獄」だったと表現する店員もいました。都内のある店舗では、開店前に100人以上が並ぶ状況があり、子どもが欲しいポケモンカードを手に入れられないケースが多発しました。
SNSには「子どもが泣いてしまった」「楽しみにしていた週末が台無しになった」といった投稿が相次ぎました。子どもにせがまれて朝8時台にお店を訪れた親の話では、その段階ですでに新規の注文は受け付けられない状態だったそうです。
ハッピーセット転売で発生した深刻なフードロス問題
カードだけ抜き取られた食品の大量廃棄
今回の騒動で最も批判を集めたのが、フードロスの問題です。転売ヤーの中には、ポケモンカードだけを抜き取り、ハッピーセットの食品を放置したり、廃棄したりする者が続出しました。
SNSでは、道路脇にポケモンカードだけが抜かれて無残な姿となったハッピーセットが捨てられている様子が報告されました。店内でも、カードが抜き取られた紙袋の山が放置される事態が発生しました。「カードだけ抜き取って大量廃棄。もったいない!」「大量のフードロスが起きている。買った物は責任を持って食べてほしい」など、フードロスに対する批判の声がSNSで殺到しました。
さらに異常な光景として、面識のない人から道端で声をかけられ、ハッピーセットのフードのみをもらったという報告もありました。転売ヤーがカードだけを抜き取った後、食品を通行人に配っていたのです。
廃棄量の推計とSDGsとの矛盾
専門家の推計によると、1店舗あたりで20から30食の廃棄があったと見積もった場合、全国で推計2万から3万食にも及ぶとされています。農林水産省の指標を用いてCO2排出量を計算すると、この廃棄による排出量は25トンから37.5トンに相当するとも考えられています。転売市場規模は推定2,000万円から3,000万円とも言われており、その裏で大量の食品が無駄になっていたことになります。
特に批判を集めたのは、マクドナルドがフードロス削減やSDGsへの取り組みを公式にPRしていた点です。「言っていることとやっていることが違う」という批判の声が上がり、企業の信頼性を大きく損ねる結果となりました。
マクドナルドとメルカリの転売対策とその効果
事前に発表された連携対策
日本マクドナルドは2025年8月7日、キャンペーン開始前日に、メルカリと連携して転売対策を強化すると発表しました。具体的には、日本マクドナルドがメルカリに対して転売の可能性がある新商品の情報や商品画像を提供し、メルカリ側では対象商品について注意喚起を行うほか、規約違反の商品については出品の削除などの対応を実施するというものでした。
マクドナルド側では、メルカリへの特定の新商品の発売情報や商品情報、商品画像などの提供、Webサイトなどでの注意喚起、店舗での販売個数制限として1人5セットまでの設定、転売や営利目的での購入、食べきれない量の注文を控えるよう呼びかけを実施しました。
メルカリ側では、マクドナルドからの情報提供に基づく特定の新商品に関する注意喚起、利用規約違反に対する対応として悪質な詐欺行為や利用規約に抵触する可能性のある出品、商品画像の無断転載などの出品削除、株主優待券の偽造品対策として日本マクドナルドホールディングスの株主優待券の出品・販売禁止を実施しました。
対策の限界と寄せられた批判
しかし、これらの対策は十分な効果を発揮しませんでした。大量の転売と食品の無断廃棄が発生し、転売ヤーへの批判を経て、現在ではマクドナルドへの批判が巻き起こっています。
「ハッピーセットは子どもをターゲットにしていることは明らかで、本当にポケモンおもちゃやポケカを楽しみにする子どもに行き届けるには、今回の対応では不十分」「1人1セットまでや、お子さんを連れての購入を義務付けるなど、徹底するべきだったのでは」という批判が寄せられています。
専門家は「ハッピーセットの付録転売はこれまでも問題になっているのに、何ら対策ができていない状態で、むしろ売り上げの増加を期待するかのように付録商法を繰り返して利益を上げようとし、自社の食品をゴミの山とさせた」と指摘しています。
ポケカ転売は違法なのかという法的問題
転売行為の合法性と古物商許可
「転売行為は違法である」と思われている人は多いですが、実際は転売自体を取り締まる法律はありません。つまり、基本的には「転売=合法」ということになります。ただし、すべての転売が合法というわけではなく、特定の条件に当てはまる場合は違法となる可能性があります。
転売ヤーが営利を目的として転売行為を反復継続して行う場合には、古物商に該当し、古物営業の許可を受ける必要があります。古物営業法における「古物」とは、「一度使用された物品若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」を指します。つまり、一度でも使用目的として消費者の手に渡ったものは、未使用であっても「古物」となります。
中古品を継続的に反復して転売するには「古物商許可」が必要になり、許可を得ていないのに転売を繰り返し行った場合、「古物営業法違反」という罪に問われます。罰則は3年以下の懲役、または100万円以下の罰金です。
弁護士の見解と不法投棄の問題
弁護士によると「業として反復継続して行うなら古物営業の許可が必要になりますが、いわゆる『転売ヤー』は単発の案件に飛びつく素人が多いため、基本的に違法にはなりません」とのことです。
ただし、今回の騒動で見られた路上への食品の不法投棄については、廃棄物処理法違反で摘発する余地があるとされています。ポケモンカードだけを抜き取って食品を道路脇に放置する行為は、明らかに廃棄物の不法投棄に該当するため、法的責任を問われる可能性があります。
特別に規制されている転売商品
転売が法律で明確に規制されている商品もあります。新型コロナウイルスが広がり始めた2020年、マスクや消毒液が品薄になる中、一部の転売ヤーがこれらを数倍の価格で販売し大炎上しました。当初は法規制がなく「違法ではない」という立場でしたが、強い社会的非難を受け、政府は転売を禁止する緊急措置法を導入しました。
また、ライブチケット等については「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」いわゆるチケット不正転売禁止法による規制の対象となっています。災害時に必要とされる物品についても、国民生活安定緊急措置法にて転売が一時的に禁止される場合があります。
繰り返されるハッピーセット転売問題の歴史
過去に発生した転売騒動の事例
ハッピーセットの景品が転売の標的にされたのは、今回が初めてではありませんでした。2023年には「ハローキティ」50周年ハッピーセットが混乱のため中止となりました。2024年2月23日からは「星のカービィ」「ポムポムプリン」で転売問題が発生し、予定より大幅に早く終了しました。
2024年8月30日からは「ちいかわ」で転売と買い占めが横行し、2025年5月16日からは「ちいかわ」で再び売り切れが相次ぎ、転売目的での買い占めと食品廃棄が問題化しました。そして2025年8月8日からの「ポケモン」キャンペーンで、過去最大規模の騒動が発生しました。
なぜ同じ問題が繰り返されるのか
ハッピーセットの転売問題が繰り返される背景には、いくつかの要因があります。まず、人気キャラクターとのコラボレーションにより、景品自体に高い価値が生まれることです。限定品であり、子供向け商品のため生産数も限られています。
次に、ハッピーセットの価格が比較的安価であるため、転売による利益率が高くなりやすいことがあります。510円程度で購入した商品が、数倍から10倍の価格で売れれば、転売ヤーにとっては「おいしい商売」となります。
さらに、マクドナルドの対策が不十分であるという批判もあります。1人5セットという制限では、複数人で来店したり、複数回来店したりすることで簡単に回避できてしまいます。この構造的な問題が解決されない限り、同様の騒動は今後も発生する可能性があります。
子供と親への影響とSNSの反応
楽しみにしていた子供たちの失望
今回の騒動で最も大きな被害を受けたのは、ポケモンカードを楽しみにしていた子供たちでした。本来、ハッピーセットは子供向けの商品です。子供たちが楽しみにしていたキャンペーンが、大人の転売ヤーによって台無しにされてしまったのです。
親たちの中には、複数のお店をはしごしてなんとかおもちゃを手に入れた人もいました。場合によっては、子どもが欲しがるカードをメルカリで高額で購入せざるを得なかった親もいます。転売ヤーによる買い占めは、子供たちの夢を奪うだけでなく、親にとっても大きな負担となりました。
SNSでの批判とブランドへの影響
SNSでは、「子どもたちが可哀想すぎる。本当に欲しい人がちゃんと定価で買えるようにしてあげてほしい」という声が多く上がりました。また、「転売ヤーは話にならないが、いつまで経っても対策しない日本マクドナルドって会社どうなん?」とマクドナルド側の対応への疑問を呈するユーザーも多くいました。
ノウンズ株式会社の調査によると、この騒動を受けてマクドナルドの好感度が「下がった」と回答した人は約半数に達しました。一方、「変わらない」と回答した人は4割でした。企業にとって「子ども向けキャンペーン」が炎上することはブランドへの影響が大きいとされており、マクドナルドのイメージ低下は避けられない結果となりました。
この騒動を受けて、続く予定だった「ワンピースカード」の配布も中止に発展しました。今回の騒動がきっかけとなり、今後のキャンペーン計画にも大きな影響を与えることになりました。
ポケモンカードが投資・投機対象となった背景
ポケモンカード市場の歴史と成長
ポケモンカードの販売は1996年10月20日から開始されました。最初のシリーズ発売時は、初代ポケモンが空前の大ヒットを飛ばしていたこともあり大ヒットを記録しました。しかし、その後は10年以上もの間、ごく一部のトレーディングカードゲームプレイヤーがプレイしている程度の立ち位置でした。
ポケモンカードが本格的に人気を獲得し始めたのは2018年9月頃からです。トレカ専門家によると「1996年発売から20周年を超え、ブランドとしての価値が高まった」ことが大きな理由とされています。
2018年のブームを引き起こした要因
ポケモンカードが2018年頃から急激に人気を獲得した背景には、いくつかの要因があります。まず、GXスタートデッキの登場です。これまで1,500円前後だったスターターデッキの価格を500円まで引き下げたことで、カードゲーム初心者でも手に取りやすくなりました。
次に、YouTuberの活用があります。はじめしゃちょー等の大物YouTuberを起用したポケカのコンテンツ広告を投下したことで、若い世代への認知が大幅に拡大しました。また、2016年7月に日本でリリースされた「ポケモンGO」の影響も大きいです。このアプリにより、老若男女問わず「ポケモン」というコンテンツ自体が身近になりました。
さらに、発売サイクルの短期化も挙げられます。2015年頃までは3ヶ月に一度が通常の発売サイクルでしたが、2016年のサン&ムーンシリーズがスタートした前後から、1ヶ月ないし2ヶ月のサイクルで発売するようになりました。
コレクターズアイテムとしての価値と高額取引
ポケモンカードは単なるトレーディングカードゲームのカードではなく、コレクターズアイテムとしての価値を持っています。特に限定カードや初版カードは、年月が経つにつれて希少性が増し、価値が上昇する傾向があります。
投資対象としてのポケモンカードには、高い流動性としてフリマサイトやトレカ専門店での売買が容易であること、価格変動としてレアカードの価格が急激に上昇する可能性があること、物理的な資産としてデジタル資産とは異なり実物を所有できることなどの魅力があります。
ポケモンカードの高額取引には、驚くべき例があります。エクバリーリエのPSA10は、一時期3,300万円で取引され、ニュースになるほど話題になりました。中には、1枚30円だったカードが3,000万円へと、100万倍に「進化」した驚愕の例もあります。
30代の関心が高い理由と現在の市場動向
トレカ投資に関心を持つ層として、30代が特に多いとされています。30代は収入面での余裕が出てくるだけでなく、子供時代にポケモンカードや遊戯王に親しんだ世代でもあり、趣味と投資の両面での関心が高い層であると考えられます。
ポケモンカードは2021年に高騰しましたが、同年10月からは「ポケモンカードバブルが崩壊した」と言われるようになりました。原因は流通量の増加とされており、様々なカードの価格が下落しました。しかし、2022年に入ってからは価値が2倍から3倍に増えたカードも多く見られ、市場は回復傾向にあります。
2020年から2023年にかけて、ポケモンカードは需要が供給を大きく上回る状態が続き、一部のカードが過剰に高騰しました。この反動で、2024年以降は生産体制が強化され、買いやすい環境が整いつつあります。版元である株式会社ポケモンの大掛かりな増産・再販体制の構築と、各小売店による購入制限などにより、2023年秋以降、品薄状態は順次改善されました。2024年には販売後1ヶ月ほど経てば多くの小売店でポケカは買えるようになりました。
今後の展望とマクドナルドの対策強化
マクドナルドが発表した今後の方針
日本マクドナルドは今回の騒動を受け、謝罪文を公表し、対策強化を発表しました。公式発表によると「特定のハッピーセットの販売にあたっては、より厳格な販売個数制限を設ける場合がある」「販売個数制限期間中は、モバイルオーダーやデリバリーにおいても利用を制限させていただく可能性がある」と今後の方針を示しています。
実際に、2025年8月15日から始まったハッピーセット「ポケモン」第2弾では、発売3日間の購入制限が「1グループ様1会計、3セットまで」に強化されました。なお、ポケモンカードキャンペーンは8月9日から11日限定の企画だったため、第2弾期間中のカード配布はありませんでした。
今後のコラボの可能性と求められる対策
日本マクドナルドは2023年、2024年、2025年と3年連続で夏にポケモンのハッピーセットを実施しています。そのため、2026年夏にもコラボする可能性が高いと予想されています。一方で「ポケモンカード」の配布については、今回の騒動で運用の見直しが必要なため、早くても2027年から2028年が現実的という見方もあります。
今回の騒動を受けて、様々な対策案が議論されています。ひろゆき氏は「店内で食べ終わったお客さんにだけポケモンカード配るようにすればよくない?」と持論を展開しました。ただし「食べ終わったの確認して、配るスタッフの人件費がキツい」「普通にハッピーセットを子連れしか買えないようにしたらいいだけじゃない?」など、様々な意見が寄せられています。
効果的な対策としては、子供連れのみへの販売制限、店内での食事完了後にカードを渡す方式、購入者の身分確認、アプリでの事前予約制などが考えられますが、いずれも運用コストや実現性の面で課題があります。
マックハッピーセットポケカ騒動が投げかけた社会的課題
2025年8月のマクドナルド×ポケモンカード騒動は、転売ヤーによる買い占め、価格の異常な高騰、そして大量のフードロスという、現代社会が抱える問題を浮き彫りにしました。
価格高騰の理由としては、入手期間の限定性、日本限定という希少性、ピカチュウの人気、過去のコラボカードの実績、ポケモンカード市場全体の盛り上がりなど、複数の要因が重なっていました。転売ヤーは「1人5セットまで」という制限を様々な方法で回避し、大量のハッピーセットを購入しました。カードだけを抜き取って食品を廃棄するという行為が横行し、推計2万から3万食ものフードロスが発生したとされています。
マクドナルドとメルカリは事前に転売対策の連携を発表していましたが、結果的に十分な効果を発揮することはできませんでした。企業の対応への批判、転売ヤーの行為への批判、そして転売を規制する法律の不備など、様々な問題が指摘されています。
この騒動は、単なる「カードの転売問題」ではなく、企業のマーケティング手法、消費者のモラル、法規制のあり方、そしてSDGsとの整合性など、社会全体で考えるべき課題を投げかけています。今後、同様の騒動を防ぐためには、企業側のより厳格な対策、消費者一人ひとりの倫理観の醸成、そして必要に応じた法規制の検討など、多角的なアプローチが求められます。

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