ANAスター・ウォーズ機が全機引退!10年の軌跡とラストフライトを完全解説

社会

ANAのスター・ウォーズ機は、2026年1月9日をもって全機が運航を終了しました。2015年から約10年にわたって世界の空を飛び続けた「ANA STAR WARS PROJECT」の特別塗装機は、R2-D2ジェットが2025年8月に、そしてプロジェクト最後の機体となったC-3POジェットが2026年1月9日夜の福岡発羽田行きNH270便をもって、その歴史に幕を下ろしました。この壮大なプロジェクトは、航空業界とエンターテインメント業界のコラボレーションとして最大規模を誇り、累計500万人以上の乗客に特別な空の旅を提供してきました。

ANAとウォルト・ディズニー・ジャパンが手を組んだこのプロジェクトは、単なる機体の塗装にとどまらず、機内アナウンスや専用アメニティ、搭乗証明書など、乗客が搭乗した瞬間から降機するまでスター・ウォーズの世界観に浸れる体験を創り上げました。本記事では、4機のスター・ウォーズジェットそれぞれの歩みと特徴、ラストフライトの詳細、そしてこのプロジェクトが航空業界に残した遺産について詳しくお伝えします。

ANA STAR WARS PROJECTとは

ANA STAR WARS PROJECTとは、2015年に全日本空輸とウォルト・ディズニー・ジャパンが締結した大型コラボレーション企画のことです。映画『スター・ウォーズ』シリーズの新三部作(シークエル・トリロジー)の公開に合わせて開始されたこのプロジェクトは、当初2020年3月までの5年間の契約期間で計画されていました。

2015年当時、ANAは羽田空港の国際線発着枠拡大を背景に、北米やアジアへの国際線ネットワークを急速に拡大していました。世界的なブランド認知度を高めることが急務となっていたANAにとって、『スター・ウォーズ』という世界最強のコンテンツとの提携は、グローバル市場におけるプレゼンスを飛躍的に高める切り札となりました。

当時ANAが展開していた「Is Japan Cool?」キャンペーンとの相乗効果も狙いの一つでした。日本の先進性やポップカルチャーを世界に発信していたANAにとって、最新鋭機であるボーイング787型機に世界中で愛されるドロイド「R2-D2」を描くことは、テクノロジーと親しみやすさを融合させたブランドイメージを象徴する戦略的な取り組みでした。

コロナ禍による契約延長の経緯

当初の契約期間は2020年3月までの5年間でしたが、2020年初頭から世界中に広がった新型コロナウイルス感染症の影響により、航空需要は大幅に減少しました。プロジェクトの集大成となるべき時期に十分な露出ができなくなったことを受け、ANAとディズニーは契約の延長を決定します。

この延長により、R2-D2ジェットは就航から約10年という特別塗装機としては異例の長寿命を実現することになりました。結果として、プロジェクトは足掛け11年、2026年3月31日まで続く壮大なサーガへと発展したのです。航空ファンにとっては、長期間にわたってその姿を楽しめる喜ばしい結果となりました。

空を彩った4機のスター・ウォーズジェット

ANA STAR WARS PROJECTでは、プロジェクト期間中に計4機の特別塗装機が日本の空、そして世界の空を彩りました。それぞれの機体には明確な役割と個性が与えられており、ファンの間でも高い人気を誇りました。

R2-D2 ANA JETの特徴と歴史

R2-D2 ANA JETは、機体記号JA873Aのボーイング787-9ドリームライナーに施された特別塗装機です。2015年10月18日に就航し、2025年8月7日に運航を終了するまで、プロジェクトの旗艦機として約10年にわたり世界中を飛び回りました。

デザインの特徴として、ANAのブランドカラーである「トリトンブルー」とR2-D2の配色の親和性が活かされています。機体前部にはR2-D2の首から下のパネルラインが、機体後部には「STAR WARS」の巨大ロゴが配されました。このデザインはANAのマーケティング室によるもので、航空機の形状に合わせてドロイドが横たわっているかのように見えるよう工夫されています。

運航実績としては、羽田・成田を拠点に、ロサンゼルス、サンノゼ、シアトル、ワシントンD.C.、ミュンヘン、パリ、ブリュッセル、シドニー、北京、ジャカルタなど、ANAの国際線ネットワークの主要都市を就航しました。2015年の就航時には、シンガポール・チャンギ空港やブリュッセル空港で大規模な就航イベントが開催され、世界中のメディアに取り上げられました。

BB-8 ANA JETの特徴と運命

BB-8 ANA JETは、機体記号JA789Aのボーイング777-300ERに施された特別塗装機です。2016年3月に就航し、2022年3月31日に退役しました。映画『フォースの覚醒』で初登場した球体型ドロイドBB-8をモチーフに、鮮やかなオレンジと白のリングパターンが機体全体を包み込むデザインが特徴でした。

主に北米のシカゴ、ニューヨーク、ワシントンや欧州路線に投入されていましたが、コロナ禍における機材計画の見直しにより、燃費効率や機材年齢の観点から早期退役が決定されました。2022年3月31日には羽田・千歳・那覇を結ぶサヨナラフライトが非定期便として運航され、その後機体は登録抹消となりました。4機のスター・ウォーズジェットの中で唯一、プロジェクト期間中に機体自体がスクラップとなったケースです。

STAR WARS ANA JETの国内線での活躍

STAR WARS ANA JETは、機体記号JA604Aのボーイング767-300ERに施された特別塗装機です。2015年11月22日に就航し、2019年3月に契約満了を迎えて通常塗装に戻されました。

この機体の最大の特徴は、機体の左側にR2-D2、右側にBB-8を描いた非対称デザインでした。国内線専用機材として投入され、伊丹発羽田行きのNH14便でデビューを飾りました。地方空港を含む日本全国を飛び回り、身近なスター・ウォーズジェットとして多くの人々に親しまれましたが、機材の経年化により2019年に運航を終了しました。

C-3PO ANA JETの独自性

C-3PO ANA JETは、機体記号JA743Aのボーイング777-200ERに施された特別塗装機です。2017年3月21日に就航し、2026年1月9日に運航を終了しました。プロジェクト最後まで残った唯一の国内線機材として、多くの日本のファンに最後の搭乗機会を提供しました。

機体全体をC-3POの象徴である金色(イエロー)で塗装したこの機体は、その独特な外観で多くの人の目を引きました。特に機体背面に描かれた「バッテリーパック」や、腹部に描かれた配線コード、円形のパワーカプラーなど、ドロイドの特徴を航空機の構造に合わせて再構築したディテールが印象的でした。その色味から、ファンの間では親しみを込めて「たくあん」という愛称で呼ばれていました。

国内線の高需要路線である羽田発着の伊丹、福岡、札幌、那覇線を中心に運航され、プロジェクトの最後を飾るにふさわしい活躍を見せました。

機内サービスで実現したスター・ウォーズ体験

ANA STAR WARS PROJECTの真髄は、機体に乗り込んだ瞬間から始まる没入感のある体験にありました。単なる移動手段を、エンターテインメント空間へと昇華させた取り組みの詳細をご紹介します。

C-3PO ANA JETにおける特別演出の数々

C-3POジェットは、内装と演出に特に力が入れられていました。その中でも注目すべきは、映画全作でC-3POを演じた俳優アンソニー・ダニエルズ氏との関わりです。

ダニエルズ氏はこの機体に特別な愛着を持っており、2017年の就航イベント時には機体左側最前方のL1ドア付近に直筆サインを書き入れました。「これは私ではなくC-3POだ」と語る彼のサインは、運航終了のその日まで消されることなく、搭乗するすべての乗客を出迎え続けました。

機内アナウンスもダニエルズ氏の声で収録された特別版が使用されました。「私は宇宙旅行はあまり好きではありませんが…」という映画のキャラクター設定を活かしたユーモア溢れるセリフや、到着時の「May the Force be with you(フォースと共にあらんことを)」という結びの言葉は、着陸後の機内に拍手を巻き起こすこともありました。

また、公式には明かされていない特別な演出として、機内にジェダイ・マスター「ヨーダ」のぬいぐるみが常駐していたことがあります。離陸前や着陸後、客室乗務員席にちょこんと座っていたり、ギャレーから顔を覗かせていたりする様子が多くの搭乗記で報告されています。これはマニュアルを超えたクルーのホスピタリティの表れでした。

機内アメニティとサービス品

C-3POジェットでは、様々な専用アメニティが用意されていました。全席に設置されたヘッドレストカバーはC-3POの胴体を模した不織布製で、黄色地に機械的な配線が描かれたデザインが客室内にずらりと並ぶ様子は壮観でした。

ドリンクサービスでは、C-3POの顔や胴体がプリントされた専用紙コップが使用され、3種類のデザインが用意されていました。持ち帰るファンも多く、コレクターズアイテムとして人気を集めました。客室乗務員はサービス時にC-3POのデザインをあしらった専用エプロンを着用し、機内全体が黄色とゴールドのテーマカラーで統一される演出がなされていました。

キャンペーン期間や就航初便、ラストフライト期間などには特製の搭乗証明書が配布されました。紙製のものからプラスチックカード製のものまでバリエーションがあり、裏面には搭乗日を記入する欄が設けられていました。

国際線R2-D2 ANA JETの長距離フライト演出

国際線を飛ぶR2-D2ジェットでは、長距離フライトならではの演出が行われました。ANAは世界で初めて、機内エンターテインメントシステムで『スター・ウォーズ』全6作(当時)を一挙にラインナップしました。長時間のフライト中、乗客は自分の座席でスター・ウォーズ・マラソンを楽しむことができたのです。

ビジネスクラスやプレミアムエコノミーでは、スター・ウォーズデザインのナプキンやR2-D2をあしらったヘッドレストカバーが使用されました。また、R2-D2の電子音を含む簡易スター・ウォーズ・アナウンスが流れることもあり、乗客の気分を盛り上げました。

R2-D2 ANA JETの退役と別れの旅

プロジェクト終了の第一章として、象徴的存在であるR2-D2ジェットの退役は2025年の夏に行われました。約10年にわたり国際線の主力として活躍した機体にふさわしい、感動的な幕引きとなりました。

世界を巡るラストツアー

退役を控えた2025年7月から8月にかけて、R2-D2ジェット(JA873A)はまるで別れを告げるかのように、世界中の主要就航地を巡りました。ロサンゼルス、パリ、フランクフルト、ミュンヘン、ウィーンなど、かつて就航した都市を訪れるたびに、現地の航空ファンがフェンス越しにカメラを構える姿が見られました。

このラストツアーは、単なる運航スケジュールの消化ではなく、世界中のファンに別れを告げる意味が込められていました。各空港では、R2-D2ジェットの姿を一目見ようと多くの人々が集まり、その雄姿をカメラに収めていました。

ラストフライトの詳細記録

R2-D2ジェットの最終運航については、日本発の最終便が2025年8月5日の羽田発ミュンヘン行きNH217便でした。その後の運用において、8月6日の羽田発ワシントンD.C.行きNH102便と、折り返しのワシントンD.C.発羽田行きNH101便が最終的な営業運航として記録されています。

2025年8月7日(日本時間)、ワシントンからの帰国をもって、R2-D2ジェットは約10年間の任務を完了しました。

運航終了に際し、ANAは公式SNSおよびWebサイトで感動的な声明を発表しました。「R2-D2 ANA JETは私たちによく仕えてくれましたが、すべてのドロイドと同様に、いつかは電源を切る(power down)時が来ます。世界中の乗客に喜びをもたらすというR2の使命は完了し、彼は十分な休息を得るに値します」というメッセージでした。「Power Down」という表現は、単なる機械の停止ではなくキャラクターとしての休息を示唆する言葉として、ファンに深い感銘を与えました。

C-3PO ANA JETのラストフライトと黄金の終焉

プロジェクトの真の完結編となったのは、2026年1月のC-3POジェットの退役でした。国内線機材であったことから、多くの日本人ファンが別れを惜しむことができました。

退役スケジュールの異例の公開

2025年12月、ANAはC-3POジェットの運航終了日を2026年1月9日と発表しました。同時に、最後の3日間となる1月7日から9日について、投入便を固定して公開するという異例の対応が取られました。

航空機の運用では急な機材変更が日常的に発生する中、ファンが確実に搭乗や撮影ができるよう配慮した対応でした。この発表により、全国各地からファンがC-3POジェットに会うために駆けつけることが可能となりました。

ラスト3日間の全運航記録

C-3POジェットの最後の3日間は、日本各地を駆け巡る忙しいスケジュールでした。

2026年1月7日は日本縦断の一日となりました。羽田から伊丹、伊丹から那覇、那覇から伊丹、伊丹から羽田、そして羽田から新千歳、新千歳から羽田と、羽田、伊丹、那覇、新千歳という日本の主要4空港を一日で駆け巡るハードなスケジュールでした。

便名区間出発時刻到着時刻
NH17羽田→伊丹09:0010:10
NH765伊丹→那覇11:0013:20
NH766那覇→伊丹14:1015:55
NH34伊丹→羽田16:5018:05
NH77羽田→新千歳19:0020:30
NH84新千歳→羽田21:2523:10

2026年1月8日は北と南を往復する一日でした。新千歳と羽田の間を2往復した後、福岡へ向かい、羽田に戻るスケジュールが組まれました。この日は新千歳空港の大雪の影響により、一部便で機材変更や遅延が発生した可能性が報告されています。

便名区間出発時刻到着時刻
NH51羽田→新千歳07:0008:30
NH54新千歳→羽田09:3011:10
NH63羽田→新千歳12:0013:35
NH66新千歳→羽田14:3016:10
NH265羽田→福岡17:0019:10
NH270福岡→羽田19:5521:30

2026年1月9日の運航最終日も、前日と同様のルートが組まれました。すべてのフライトが「最後」という特別な意味を持つ一日でした。NH51からNH66までの新千歳往復4便を経て、NH265で福岡へ向かい、最終便NH270で羽田に戻りました。

最終便NH270の感動的なドラマ

2026年1月9日夜、福岡空港には多くのファンが見守る中、C-3POジェットが最後の旅立ちの準備をしていました。

福岡空港8番スポットを定刻19:55に対して20:21に出発し、26分の遅延となりました。夜の空を東へ進み、羽田へのアプローチコースに入ったC-3POジェットは、羽田空港58番スポットに22:05に到着しました。定刻21:30に対して35分の遅延でしたが、この到着をもって2017年3月21日の就航から数えて3,217日目の夜に、C-3POジェットの営業運航は幕を閉じました。

機内では、機長から最後のアナウンスが行われました。「長年にわたりご愛顧いただきましたC-3PO ANA JETは、本日のフライトをもちまして運航を終了いたします。皆様の情熱と想い出に深く感謝いたします」という趣旨のメッセージが、英語のアナウンスと共に読み上げられ、機内は感動に包まれました。

プロジェクトのフィナーレと今後

ファンイベントの開催

営業運航終了翌日の2026年1月10日、羽田空港のANA格納庫においてプロジェクトの締めくくりとなるファンイベント「ANA STAR WARS PROJECT Final Event」が開催されます。抽選で選ばれたANAマイレージクラブ会員40組80名が招待され、塗装を落とす直前のC-3PO実機を至近距離で見学・撮影できる最後の機会が設けられます。また、既に退役したR2-D2やBB-8のモデルプレーンも展示され、10年間の歴史を振り返る空間が作られる予定です。

フェリーフライトと塗装抹消

イベントを終えたC-3POジェットは、2026年1月12日の早朝6:30に羽田空港を離陸する予定です。行き先は台湾の台北(桃園国際空港)で、乗客を乗せないフェリーフライト(回送)としての運航となります。

台北に到着した後、機体は整備工場に入り、特徴的な黄色の塗装は剥離され、通常のANAトリトンブルー塗装へと塗り替えられます。これにより、物理的な意味での「スター・ウォーズジェット」は地球上から姿を消すことになります。

プロジェクトが航空業界に残した遺産

2026年3月31日をもって、ANA STAR WARS PROJECTは契約期間満了を迎え、名実ともに終了します。Webサイトや特設ページも閉鎖され、デジタル空間からもその姿を消すことになります。

しかし、このプロジェクトが残した遺産は、形を変えてANAの中に生き続けています。「ポケモンジェット(そらとぶピカチュウプロジェクト)」や「鬼滅の刃じぇっと」、さらにはサステナビリティをテーマにした「ANA Green Jet」など、特定のテーマで機体をラッピングし、機内サービスまで一貫した世界観を作り上げる手法は、スター・ウォーズプロジェクトで培われたノウハウが基礎となっています。

ANAの発表によると、4機のスター・ウォーズジェットは就航期間中に累計で500万人以上の乗客を輸送しました。これは単なる移動人数ではなく、500万回の「ブランド体験」の創出を意味します。機内の特別な紙コップやヘッドレストカバー、アナウンスを通じて、乗客はANAというブランドに「楽しさ」や「革新性」を感じ取りました。

世界の航空会社との比較で見るANAの先進性

スター・ウォーズの特別塗装機を運航したのはANAだけではありません。ユナイテッド航空は『スカイウォーカーの夜明け』公開時にボーイング737-800で左右異なるライトセーバー色の塗装を実施しました。ヴァージン・アトランティック航空はボーイング747-400にミレニアム・ファルコンを描画し、ラタム航空はストームトルーパー・プレーンを運航、アラスカ航空はディズニーランド・リゾートとの提携で黒い機体にミレニアム・ファルコンやポーグを描いた機体を運航しています。

しかし、ANAのプロジェクトは、4機という機数、10年以上の期間、そして全6作の映画機内上映や機内サービスの徹底ぶりにおいて、他の航空会社を圧倒する規模と深さを持っていました。世界的に見ても、これほど包括的かつ長期的なスター・ウォーズとのコラボレーションを実現した航空会社は他に例がありません。

スター・ウォーズジェットが私たちに残したもの

R2-D2やC-3POが描かれた翼はもう空を飛んでいませんが、このプロジェクトが航空ファンとスター・ウォーズファンの心に残したものは決して消えることはありません。空港で、あるいは機内で感じた「あの曲が流れた時の高揚感」は、ファンの記憶の中で永遠に飛び続けることでしょう。

約10年にわたって続いたANA STAR WARS PROJECTは、航空業界とエンターテインメント業界のコラボレーションの可能性を示し、多くの人々に特別な空の旅の思い出を提供しました。フォースと共にあらんことを。May the Force be with you, always.

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