60代・70代の貯蓄2000万円達成割合は何%?統計データで徹底解説

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60代・70代のシニア世代で貯蓄2000万円を達成している割合は、二人以上世帯で約4割、単身世帯で約3割以下となっています。「老後2000万円問題」が社会的な注目を集めて以降、多くの方がこの目標額を意識するようになりましたが、実際に達成できている人は限られているのが現状です。本記事では、最新の統計データに基づき、60代・70代それぞれの貯蓄実態と、世帯構成による格差、そして目標未達の場合の具体的な対策について詳しく解説していきます。

シニア世代の貯蓄2000万円問題とは

「老後2000万円問題」は、2019年に金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが公表した報告書をきっかけに、日本社会で大きな議論を呼びました。この報告書では、夫65歳以上・妻60歳以上の無職夫婦世帯をモデルケースとして、毎月の収入と支出の差額が約5万5000円の赤字になるというデータが示されました。この月額5万5000円の赤字が30年間続くと仮定すると、約2000万円(5万5000円×12ヶ月×30年=1980万円)の金融資産が必要になるという計算になります。

この報告書が大きな社会的波紋を呼んだ理由は、「年金だけで老後は安心」という国民の期待と、「自助努力なしには生活が維持できない」という現実との間に、大きなギャップが存在したためです。ただし、専門的な観点からすれば、この報告書は年金制度の破綻を示すものではなく、長寿化に伴う生活設計の変化に対応するため、早期からの資産形成を促す啓蒙的な意図を持っていたと解釈されています。

しかし、この「2000万円」という数字には重要な前提条件があります。報告書で想定された住居費は月額約1万4000円程度であり、これは持ち家で住宅ローンを完済している世帯を前提としています。したがって、賃貸住宅に住み続ける世帯や、定年後も住宅ローンの返済が残る世帯では、必要となる老後資金は2000万円どころか、3000万円から4000万円へと大きく増加する可能性があります。

さらに、この試算は「平均的な生活」を維持するための不足額であり、突発的な介護費用や高額な医療費、住宅の大規模修繕費用などは含まれていません。介護費用として一人当たり約500万円程度の準備が望ましいとされる調査結果もあり、夫婦であればそれだけで1000万円の予備費が必要となります。こうした要素を加味すると、「2000万円」はゴールではなく、あくまで最低限のスタートラインであるという認識が必要です。

インフレ時代における2000万円の実質価値

2022年以降、世界的なインフレと円安の進行が日本経済に大きな影響を与えました。食料品やエネルギー価格の高騰は、収入が年金のみに固定されがちな高齢世帯の家計を特に直撃しています。経済学的な観点から見ると、インフレは現金の価値を目減りさせる「見えない税金」として機能します。

仮に年率2.5%のインフレが継続した場合、現在の2000万円の実質的な購買力は、10年後、20年後には大幅に低下することになります。専門家の間では、インフレ率や長寿化リスクを考慮すると、安全圏とされる老後資金の目安は「3000万円」に修正すべきだという議論も出ています。生活費の不足分補填に加え、インフレによる資産価値の毀損を防ぐためのバッファを設ける必要があるためです。

60代の貯蓄2000万円達成割合の実態

60代は定年退職という大きなライフイベントを迎え、退職金の受給などにより一時的に金融資産が増加する時期です。同時に、再雇用による収入減や年金生活への移行準備が始まる、資産形成の総決算期でもあります。

60代二人以上世帯の貯蓄状況

60代二人以上世帯において、貯蓄2000万円以上を達成している割合は全体の約4割近くに達しています。より詳しく見ると、貯蓄2000万円から3000万円未満の層が約12%、そして3000万円以上の層が約25%から27%程度存在しており、合計すると60代の二人以上世帯の約37%から40%が、いわゆる「アッパーマス層」以上の資産を形成できていることになります。これは長年の勤労による蓄積に加え、退職金や相続といった一時的な資金流入が大きく寄与していると考えられます。

しかし、この数字の裏側には深刻な格差が隠されています。60代二人以上世帯の平均貯蓄額は2000万円台後半(約2400万円から2600万円)という高い数値を示す一方で、中央値はその半分程度の1400万円前後、調査によっては700万円から1200万円程度にとどまる場合もあります。

平均値と中央値の違いを理解することは非常に重要です。平均値は、数億円単位の資産を持つ一部の超富裕層によって大きく引き上げられる性質を持つため、多くの人の実感とは乖離しやすいのです。実態として、半数以上の世帯は平均値に届いておらず、「普通の60代」の多くは2000万円という目標を前に足踏みをしているのが現実といえます。

さらに注目すべきは、金融資産を全く持たない「金融資産非保有世帯」の存在です。60代二人以上世帯においても約10.9%から12.8%の世帯が金融資産を保有しておらず、貯蓄100万円未満の世帯を含めると、老後生活のスタート時点で経済的な安全網を持たない層が一定数存在することがわかります。

60代単身世帯の厳しい現実

問題がより深刻かつ構造的な課題として浮き彫りになるのは、単身世帯の場合です。未婚率の上昇、熟年離婚の増加、そして死別によって、60代の単身世帯は増加の一途を辿っていますが、その経済状況は二人以上世帯と比較して極めて厳しいものとなっています。

60代単身世帯における貯蓄2000万円以上の達成割合は、二人以上世帯と比べてそのハードルが格段に高くなります。データによれば、単身世帯で3000万円以上の資産を持つ層は約15%から19%程度、2000万円から3000万円未満の層が約8%から9%程度であり、合計しても2000万円以上を保有するのは約23%から28%程度にとどまります。つまり、おひとりさまの約4人に3人は、2000万円という安心の目安を確保できていない状況にあります。

さらに深刻なのは、金融資産非保有の割合です。60代単身世帯において、金融資産を持たない層は約28.5%から30%程度を占めています。これは現役時代の所得格差や非正規雇用の問題が、高齢期において資産格差として固定化されていることを示しています。60代単身世帯の貯蓄中央値は、調査によってはわずか300万円から350万円程度、あるいはそれ以下という結果も報告されており、平均値(約1400万円から1800万円)との間には埋めがたい深い溝が存在します。

70代の貯蓄2000万円達成割合と長生きリスク

70代に入ると、多くの人が完全リタイアを迎え、年金収入と資産の取り崩しが生活の基盤となるフェーズに移行します。一般的には、年齢とともに資産は減少していくと考えられがちですが、統計データは必ずしもそのような単純な減少曲線を描いていません。

70代二人以上世帯の資産状況

70代二人以上世帯においても、貯蓄2000万円以上を保有している割合は依然として高く、約3割から4割近くがこの水準を維持しています。特筆すべきは、3000万円以上を保有する世帯の割合が、全年代の中で最も高くなる傾向にあり、約18%から25%程度がこの富裕層に該当することです。

70代の平均貯蓄額が60代と比較してそれほど急激に減少しない背景には、将来への不安から消費を極端に抑制し、資産を温存しようとする「予備的貯蓄動機」が強く働いていることが考えられます。また、退職金や相続によって得た資産を、自分たちの世代で使い切るのではなく、次世代へ残そうとする意識も影響している可能性があります。

70代単身世帯の貧困化リスク

一方で、70代単身世帯のリスクは60代以上に深刻化します。現役時代からの貯蓄が十分でなかった層に加え、配偶者との死別によって世帯収入(年金)が減少し、家計バランスが崩れるケースが増加するためです。

70代単身世帯において、貯蓄2000万円以上を保有している割合は約27%程度であり、残りの7割強は2000万円未満の資産で、あるいは資産ゼロに近い状態で、平均寿命までの長い期間を過ごさざるを得ない状況にあります。特に金融資産非保有の割合は依然として高く、収入がない(年金のみ)層の半数以上が金融資産を持っていないというデータも存在します。

また、70代単身世帯の貧困問題には明確なジェンダー格差が存在します。現在の70代以上の女性は、現役時代に専業主婦であったり、パートタイム労働に従事していたりした割合が高く、自身の厚生年金受給額が少ない傾向にあります。夫の遺族年金があるとはいえ、単身での生活維持には十分でない金額である場合が多く、資産の枯渇リスクは男性単身者よりも高いと考えられます。

高齢者世帯の家計収支と毎月の赤字額

「老後は毎月赤字」という言葉が広く知られるようになりましたが、その具体的な収支構造を理解することが重要です。

高齢無職夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の実収入は、社会保障給付を含めて月額平均約25万円から27万円程度です。これに対し、消費支出(食費、光熱費、医療費など)と非消費支出(税金、社会保険料)を合わせた総支出は月額約28万円から30万円程度となり、結果として毎月3万円から4万円程度の赤字が発生しています。

この毎月3万円から4万円の赤字は、年間で約40万円から50万円、30年間で1200万円から1500万円程度の不足を意味します。ただし注意すべきは、この支出の中に「使途不明金」や「交際費」「孫への小遣い」など、家計の引き締めによって調整可能な項目が含まれている点です。つまり、赤字は構造的な必然である場合もあれば、余裕があるからこその「計画的赤字」である場合もあるのです。

単身の高齢無職世帯(65歳以上)の場合、実収入は平均で約13万円から14万円程度(主に年金)であるのに対し、支出は約15万円から16万円となり、毎月2万円から3万円程度の赤字となっています。単身世帯は、食費や光熱費、通信費などにおいて夫婦世帯のようなスケールメリット(共有によるコスト削減)が働かないため、一人当たりの生活コストが割高になる傾向があります。

特に75歳以上の後期高齢者になると、医療・介護サービスの利用頻度が増加し、医療費の自己負担分や介護保険の利用料が家計を圧迫し始めます。年金収入が低い単身世帯にとって、月数万円の赤字補填は貯蓄を確実に減少させていきます。貯蓄300万円以下の層にとって、毎月3万円の取り崩しは10年以内の資産枯渇を意味する深刻な問題となります。

60代・70代の貯蓄分布を比較する

60代と70代の貯蓄状況を比較すると、いくつかの重要な特徴が浮かび上がります。

60代二人以上世帯では、2000万円以上の達成割合が約37%から40%であるのに対し、70代二人以上世帯でも約30%から40%と、大きな減少は見られません。これは70代になっても多くの世帯が資産を大きく取り崩していないことを示しています。

一方、単身世帯では異なる傾向が見られます。60代単身世帯の2000万円以上達成割合は約23%から28%、70代単身世帯では約27%程度となっています。単身世帯は世帯構成の変化(配偶者との死別など)による影響を受けやすく、資産状況の変動も大きくなる傾向があります。

金融資産非保有世帯の割合を見ると、60代二人以上世帯で約10.9%から12.8%、60代単身世帯で約28.5%から30%となっており、単身世帯の方が圧倒的に金融資産を持たない割合が高いことがわかります。この格差は70代になっても続いており、世帯構成による経済的格差が高齢期に固定化されている実態を示しています。

資産を持つシニアと持たないシニアの生活の違い

資産額の違いは、単に通帳に記載された数字の違いにとどまらず、日々の生活習慣や人生の満足度に大きな影響を与えています。

資産を持つシニアの特徴

資産を十分に持つシニアの最大の特徴は、現役時代から自身の年金受給見込額や退職金額を正確に把握し、長期的な視点で収支計画を立ててきた「計画性」にあります。彼らの消費行動には明確な基準があり、自分にとって本当に価値のあるもの、たとえば家族との旅行、健康維持のための運動、知的好奇心を満たすための習い事などには資金を投じる一方で、見栄や流行に流された無駄な出費は控える傾向があります。

また、彼らは資産運用に対する理解が深く、退職金を銀行預金に放置するのではなく、分散投資によってインフレリスクをヘッジし、資産寿命を延ばす工夫をしています。健康管理への投資も積極的であり、定期的な検診や質の高い食事を心がけることで、結果として将来の高額な医療費支出を抑制することに成功しているケースが多く見られます。2000万円以上の資産は、不測の事態に対する「最強の保険」であり、心に余裕を持って社会参加するためのパスポートとなっているのです。

資産が少ないシニアが陥りやすい傾向

対照的に、経済的に厳しい状況にあるシニアは、現役時代の生活レベルを退職後も維持しようとしてしまう傾向があります。「年金が入ればなんとかなるだろう」という漠然とした期待で具体的な収支計画を立ててこなかった結果、退職直後に退職金を使いすぎてしまったり、貯蓄の取り崩しスピードが想定以上に早まったりするパターンが見られます。

この層の特徴として、社会的孤立や心理的な閉塞感が強いことが挙げられます。金銭的な余裕のなさが心の余裕のなさに直結し、周囲に助けを求めることができずに行政サービスを利用し損ねるケースや、孤独を埋めようとして不適切な消費行動に走ってしまうケースも見られます。また、食費を切り詰めるあまり栄養バランスが崩れ、生活習慣病を悪化させて医療費がかさむという悪循環に陥りやすいのも特徴です。

貯蓄2000万円未達の場合の具体的な対策

60代で貯蓄が2000万円に満たない、あるいは貯蓄がほとんどない世帯は決して少数派ではありません。しかし、悲観するだけでは状況は好転しません。限られた資源の中で老後生活を安定させ、少しでも豊かにするための具体的な戦略があります。

就労継続と年金繰り下げによる収入最大化

最も確実かつ効果的な対策は、就労期間の延長です。60代はもちろん、健康であれば70代まで働くことで、資産の取り崩し開始時期を遅らせることができます。労働収入がある間は年金に手を付けず、受給開始時期を繰り下げることで、将来受け取る年金額を増やすことが可能です。

年金の繰り下げ受給は、最大で75歳まで選択可能であり、70歳まで繰り下げれば42%、75歳まで繰り下げれば84%も受給額が増額されます。これは、どんな金融商品よりも確実で高いリターンが期待できる「長生き保険」といえます。たとえば月額15万円の年金が、70歳受給開始で約21万円に増えるインパクトは極めて大きいものがあります。

ただし、年金額が増えれば税金や社会保険料の負担も増すため、手取りベースでのシミュレーションが必要です。それでも、終身で増額された年金を受け取れるメリットは非常に大きいといえます。

住まいの見直しと固定費の削減

資産形成が十分でなかった場合、支出の構造改革、特に住居費と車両費の見直しが重要になります。広い持ち家を売却してコンパクトなマンションや賃貸に住み替える、あるいは生活コストの安い地域へ移住するといった「ダウンサイジング」は、固定資産税や光熱費、維持管理費の大幅な削減につながります。広い家は掃除や管理の手間もかかり、高齢者にとっては身体的な負担ともなるため、住み替えは経済面だけでなく生活の質を向上させる効果も期待できます。

特に、自家用車を手放すことによる節約効果は大きなものがあります。車両本体価格に加え、ガソリン代、保険料、税金、車検代、駐車場代などを合わせると、普通車1台の維持費は年間で40万円から60万円、場合によってはそれ以上かかります。これを手放し、必要な時だけタクシーやカーシェア、公共交通機関を利用するスタイルに切り替えるだけで、年間数十万円の節約が可能になります。これは年金月額を数万円増やすのと同等の経済効果を持つ上に、運転免許返納による事故リスクの回避という副次的なメリットもあります。自治体によっては、免許返納者に対するタクシー券の配布やバス運賃の割引制度などを設けている場合もあり、これらを積極的に活用することが有効です。

資産運用と通信費の見直し

貯蓄が少ないからこそ、手持ちの資産をインフレから守るための運用が重要になります。2024年から始まった新NISA制度などを活用し、低コストのインデックスファンドなどで長期・分散投資を行うことは、資産寿命を延ばす有効な手段となり得ます。ただし、高齢期における過度なリスクを取る投資は避けるべきであり、生活防衛資金を確保した上で、余剰資金の範囲内で運用を行うバランス感覚が求められます。

また、即効性のある節約術として通信費の見直しが挙げられます。大手キャリアから格安SIMやサブブランドへ乗り換えるだけで、月額数千円、年間で6万円から10万円程度の節約が可能となります。シニア層には「手続きが面倒」「つながりにくくなるのでは」という懸念を持つ人も多いですが、現在は店舗でのサポートが充実している格安SIMも増えており、乗り換えのハードルは下がっています。

人生100年時代における老後資金の考え方

本記事で見てきたように、シニア世代の資産状況には極端な二極化が存在します。60代・70代において、2000万円以上の資産を持つ層は約3割から4割存在する一方で、単身世帯を中心に貯蓄がほとんどない層も約3割存在するという現実は、日本社会が抱える構造的な格差を示しています。

これから老後を迎える世代、あるいはすでに老後生活に入った世代にとって、「2000万円」という数字は一つの目安に過ぎず、絶対的な正解ではありません。重要なのは、自身のライフスタイル、健康状態、家族構成に合わせて、オーダーメイドの生活設計を行うことです。

第一の柱は、就労の継続と年金繰り下げによる「終身収入」の最大化です。健康寿命が延びている現在、70歳まで働くことは決して特別なことではなくなりつつあります。労働によって資産の取り崩しを先送りし、年金を増額させることは、最も確実なリスクヘッジとなります。

第二の柱は、住まいや車の見直しによる「固定費」の徹底的な削減です。過去の生活水準への執着を手放し、身の丈に合ったコンパクトな生活へダウンサイジングすることは、経済的な余裕だけでなく、精神的な軽やかさをもたらします。

第三の柱は、インフレに負けないための「資産運用」の継続です。現金を銀行に預けたままにするのではなく、世界経済の成長を取り込みながら資産を守り育てる姿勢が、購買力の維持には欠かせません。

「2000万円ないから絶望的だ」と嘆くのではなく、今ある資産と働く力を最大限に活用し、収支のバランスを整えることこそが、安心した老後への道です。統計データはあくまで平均的な姿であり、個人の工夫次第で、資産額が平均以下であっても豊かで満足度の高い老後を送ることは十分に可能です。社会制度の変化や経済動向を注視しつつ、変化に対応できる柔軟な家計運営を行うことが、これからのシニア世代に求められています。

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