ロイヤルホストを展開するロイヤルホールディングスは、2021年2月に総合商社の双日と資本業務提携を締結し、コロナ禍による経営危機からV字回復を果たしました。この提携により、双日はロイヤルホールディングスの議決権約20%を保有する実質的な筆頭株主となり、グローバルなサプライチェーン構築や海外展開の加速、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進といった分野で協業を進めています。ロイヤルホストは「高付加価値・高単価」路線への転換により客単価を向上させ、既存店売上高は24ヶ月連続で前年を上回るという驚異的な回復を見せました。
本記事では、ロイヤルホールディングスがいかにして未曾有の経営危機を乗り越え、双日との戦略的パートナーシップを通じてV字回復を実現したのか、その具体的な戦略と成果を詳しく解説します。資本業務提携の背景から、ロイヤルホストのブランド再構築、海外展開、DX推進、そして今後の成長戦略まで、外食産業の再生モデルとして注目される同社の復活劇の全貌をお伝えします。

ロイヤルホールディングスがV字回復を遂げた背景とは
ロイヤルホールディングスのV字回復とは、2020年のコロナ禍で深刻な経営危機に陥った同社が、双日との資本業務提携と事業構造改革を通じて業績を劇的に改善させた経営再建のことです。2023年12月期決算では売上高がコロナ前の水準に肉薄し、経常利益も大幅な黒字転換を達成しました。
コロナ禍がもたらした経営危機の深刻さ
ロイヤルホールディングスは、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」や「天丼てんや」を展開する外食事業に加え、リッチモンドホテルを運営するホテル事業、空港や高速道路サービスエリアでの店舗運営を行うコントラクト事業、航空会社向けの機内食事業という4つの事業を柱としていました。これらの事業ポートフォリオは、長年にわたりリスク分散が効いた優秀なモデルとして評価されてきました。
しかし、2020年初頭に世界中を覆った新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、これらすべての事業に共通する前提条件である「人の移動」を瞬時に停止させました。ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長は当時の状況を振り返り、「我々の事業はすべて『人が移動すること』に依存していた」と述懐しています。
機内食事業は国際線の運休により売上がほぼ消失し、ホテル事業も観光需要とビジネス出張の消滅により稼働率が急落しました。空港や高速道路のコントラクト事業も人の流れが途絶えたことで機能不全に陥りました。2020年12月期決算では、売上高が前期比で激減し、純損益は創業以来最大規模となる数百億円規模の赤字を計上することとなりました。自己資本比率は安全圏とされた50%台から一気に20%台へと低下し、企業の存続そのものが危ぶまれる事態となりました。
迅速な危機対応と構造改革への着手
菊地会長はこの状況を「以前の緩やかな低下に対して、今回は崖から落ちるような急激な低下」と表現し、従来の延長線上にある改善策では太刀打ちできないことを即座に悟りました。危機に際して経営陣が下した決断は、冷徹なほどに迅速でした。菊地会長は「悪い数字ほど早く出す」という原則に従い、中間期の業績予想を大幅に下方修正し、150億円を超える損失見通しを早期に公表しました。
具体的な構造改革として、不採算店舗約90店舗の閉鎖を決定しました。この中には過去には稼ぎ頭であった店舗も含まれていましたが、コロナ後の世界では収益が見込めないと判断されました。さらに315名規模の早期希望退職を募集し、固定費の削減に着手しました。しかし、これら縮小均衡の策だけでは、毀損した資本の回復と将来の成長資金の確保は不可能でした。そこで浮上したのが、外部資本の導入、すなわち双日との資本業務提携だったのです。
双日との資本業務提携の詳細と狙い
双日との資本業務提携は、2021年2月15日に発表されました。この提携は単なる資金繰りのための救済措置にとどまらず、ロイヤルホールディングスのビジネスモデルを根本から進化させるための戦略的パートナーシップとして設計されました。
金融資本ではなく「事業パートナー」を選んだ理由
ロイヤルホールディングスがパートナーとして双日を選んだ背景には、金融機関や投資ファンドからの単なる資金注入ではなく、「事業会社」としての商社の機能への強い期待がありました。菊地会長は「当社が苦手とするものを動かすビジネスをしている双日をパートナーに選んだ」と語っています。
ロイヤルホールディングスの強みは、質の高い料理とホスピタリティにありますが、グローバルなサプライチェーン構築や食材の川上からの調達、そしてデジタル技術の活用といった分野では、必ずしも業界最先端とは言えませんでした。一方、双日は航空産業に強みを持ち、食料分野でも海外に広範なネットワークを持っています。また、リテール・コンシューマーサービス本部を擁し、消費者向けビジネスの強化を図っていた双日にとっても、ロイヤルホールディングスという強力なブランドコンテンツを持つパートナーは魅力的でした。
資本業務提携のスキームと経営の独立性維持
提携の具体的内容は、双日を引受先とする第三者割当増資の実施です。これにより双日は当初、ロイヤルホールディングスの議決権の約13%を保有する主要株主となりました。その後、新株予約権の行使を経て、保有比率は約20%まで上昇し、実質的な筆頭株主グループとして経営に深く関与することになりました。
重要な点は、これがロイヤルホールディングスの「子会社化」を意味するものではないという点です。菊地会長は「双日との関係は密接になるが、子会社にという話はまったくない」と明言しており、経営の独立性を維持しつつ、双日のリソースを最大限に活用するという絶妙な距離感が設計されました。両社は「共同プロジェクト統括室」を設置し、双日からの出向者を受け入れることで、組織間の壁を取り払い、具体的な協業案件を推進する体制を整えました。双日は2022年2月には追加出資を行い、そのコミットメントをさらに強化しました。
資本業務提携で掲げられた3つのシナジー
この提携で掲げられたシナジーは、主に3点に集約されます。
第一のシナジーは、サプライチェーンの強靭化と調達改革です。双日のグローバルネットワークを活用した食材、特に牛肉や水産物の安定調達とコストダウンを図ることが目指されました。これは後のロイヤルホストにおける「アンガスサーロインステーキ」の品質向上や価格戦略に直結することになりました。
第二のシナジーは、海外展開の加速です。ロイヤルホールディングス単独では困難だった海外市場への再挑戦を、双日の海外拠点やノウハウを活用して推進することが計画されました。
第三のシナジーは、デジタルトランスフォーメーション(DX)と新規事業の創出です。顧客データの分析や店舗運営の効率化、新業態の開発を共同で行い、労働集約型のビジネスモデルからの脱却を目指すことが掲げられました。
これらは、コロナ禍で露呈したロイヤルホールディングスの弱点を補完し、アフターコロナの成長ドライバーとなる要素でした。
ロイヤルホストの高付加価値戦略がV字回復を牽引
V字回復の原動力となったのは、財務面での補強だけではありません。本業である外食事業、特に旗艦ブランド「ロイヤルホスト」における徹底した「高付加価値戦略」が、消費者の支持を取り戻す最大の鍵となりました。
デフレマインドとの決別と価値への対価
日本の外食産業は長年、「安くなければ売れない」というデフレマインドに支配されてきました。しかし、原材料費や人件費が高騰する中、低価格競争を続けることは、品質の低下や現場の疲弊を招くだけでした。ロイヤルホールディングスは、この悪循環からの脱却を決断しました。「良いものには、それに見合った対価をいただく」という、本来あるべき商売の原点への回帰です。
2022年以降、ロイヤルホストは断続的にメニュー改定と値上げを実施しました。朝食の「ブレックファスト・ビュッフェ」については20円から230円(税抜)の値上げを実施し、グランドメニューにおいても30円から250円の改定を行いました。しかし、これは単なるコスト転嫁としての値上げではなく、品質の向上(ブラッシュアップ)を伴う戦略的な価格改定でした。
「アンガスサーロインステーキ」の品質向上と双日の貢献
ロイヤルホストの看板メニューである「アンガスサーロインステーキ」は、この高付加価値戦略の象徴です。以前より高品質な牛肉を使用していましたが、双日との提携後は双日の調達ルートを活用し、米国コーンベルト地帯(アイオワ州、ネブラスカ州など)で育てられた良質な「ブラックアンガスビーフ」の安定調達を実現しました。
メニュー改定では、ステーキのサイズを150gや300gへと増量したり、提供方法を見直したりすることで、「肉を食べる喜び」を顧客に再認識させました。双日との連携により、持続可能な生産を行う農家からの調達を開始するなど、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点も取り入れたストーリー作りが行われました。これにより、高単価であっても「ロイヤルホストのステーキなら納得する」という顧客満足度の維持・向上に成功しました。双日の調達力は、単にコストを下げるだけでなく、品質という「価値」を担保するための武器となったのです。
「パフェ」がブランドイメージの刷新を牽引
ロイヤルホストのV字回復を語る上で欠かせないのが、「季節のデザート」シリーズ、特に「パフェ」の存在です。中でも「苺のブリュレパフェ」はSNSを中心に爆発的な人気を博し、ブランドの若返りと集客に大きく貢献しました。
ロイヤルホストのパフェが支持される理由は、その「圧倒的な完成度」と「美しさ」にあります。開発担当者は「パフェは建築である」「上から下への物語がある」という哲学のもと、グラスの中の層の一つひとつに意味を持たせています。マンゴーパフェなら「マンゴーで始まってマンゴーで終わる」という一貫性を重視し、最下層の一口まで計算し尽くされています。
SNS上では「ファミレスのレベルを超えている」「知性の塊」といった称賛の声が相次ぎました。特にTwitter(現X)で「ファミレス史上最高傑作のパフェ」としてバズったことが、集客の起爆剤となりました。このパフェ戦略は、単なるデザートの売上増だけでなく、「ロイヤルホスト=質の高い食事体験ができる場所」というブランドイメージの再構築に成功しました。食事の後に千円以上のデザートを追加注文する顧客が増加し、客単価の向上に直結しました。
「黒×黒ハンバーグ」の復活と既存ファンへの訴求
2024年から2025年にかけてのメニュー戦略では、長年のファンを持つ「黒×黒ハンバーグ(黒毛和牛×黒豚)」のさらなる強化が図られました。一時期販売を終了していた250gの大型サイズを、顧客の熱い要望に応えて復活させたり、牡蠣フライやクリームコロッケとのコンビネーションメニューを展開したりすることで、既存ファンのロイヤルティを高めました。
これらの施策により、ロイヤルホストの既存店売上高は、コロナ禍が落ち着きを見せ始めた2021年10月以降、24ヶ月連続で前年を上回るという驚異的な回復を見せました。客数はコロナ前に完全には戻らない中でも、客単価の上昇によって売上を伸ばすという、筋肉質な収益構造へと転換を果たしたのです。
双日との提携が加速させた海外展開の成果
国内市場が人口減少により縮小傾向にある中、ロイヤルホールディングスと双日は、次なる成長の舞台を海外に求めました。その第一歩として選ばれたのが、アジアのハブであるシンガポール、そして巨大市場である米国です。
シンガポール「ジュエル・チャンギ・エアポート」への直営店出店
2024年7月、ロイヤルホールディングスはシンガポールのチャンギ国際空港に隣接する複合施設「ジュエル(Jewel)」に、海外初の直営店となる「Royal Host Singapore Jewel」をオープンしました。これは、双日との合弁会社(ロイヤルホールディングス51%、双日49%)による運営です。
シンガポール店での戦略は、日本のロイヤルホストのメニューとサービスを、現地の物価水準に合わせた「適正な高価格」で提供することです。店内で手焼きされるコーンに乗せられたアイスクリームは約11シンガポールドル(約1,200円以上)で販売されていますが、その濃厚な味わいと香ばしさが評判を呼び、人気を博しています。
また、ロイヤルホストの代名詞である「オニオングラタンスープ」や「ビーフジャワカレー」に加え、シンガポール独自のメニューも高品質にアレンジして提供しており、現地客と観光客の双方を取り込んでいます。「シンガポール・ラクサ」は2,680円(税込2,948円)という価格設定ながら、スパイスや海老の出汁が効いた本格的な味わいで評価されています。この成功は、ロイヤルホストのブランドコンテンツがグローバル市場でも十分に通用することを証明しました。阿部正孝社長は「ここを起点に海外事業を拡大させていく」と意気込んでおり、今後の世界展開の試金石となっています。
米国での寿司事業への挑戦と3社連合の強み
双日との協業は、ロイヤルホストブランドの輸出にとどまりません。2024年、ロイヤルホールディングス、双日、そして回転寿司チェーン「すし銚子丸」を展開する株式会社銚子丸の3社は、米国カリフォルニア州での寿司事業展開に向けた合弁会社「SUSHI-TEN USA」を設立しました。
米国では寿司人気が定着しており、市場規模は日本の約1.6倍とも言われていますが、本格的な握り寿司をリーズナブルに提供するチェーンはまだ多くありません。双日は以前よりマグロの養殖・加工や水産物卸売事業を傘下に収めており、その強力な調達力と、ロイヤルホールディングス・銚子丸の店舗運営ノウハウを掛け合わせることで、米国市場の開拓を狙っています。
さらに、双日は2024年7月末に米国中西部を中心に寿司のテイクアウト事業を展開する「Sushi Avenue」から全事業を譲り受けるなど、バリューチェーンの強化に余念がありません。これは、単独ではなし得なかった「商社×外食×専門チェーン」の強みを結集したプロジェクトであり、ロイヤルホールディングスにとっては新たな収益源の柱となる可能性を秘めています。
ベトナム市場への進出も加速
海外展開はアジア全域に広がっています。2025年にはベトナムでの外食事業参入も果たしており、成長著しい東南アジア市場での存在感を高めています。双日の持つ現地ネットワークと、ロイヤルホールディングスの店舗運営ノウハウを組み合わせることで、海外売上比率を着実に高めています。
DXとオペレーション改革による労働生産性の向上
外食産業における最大の課題の一つが、慢性的な「人手不足」です。ロイヤルホールディングスは、この課題に対し、デジタル技術を活用したオペレーション改革(DX)で正面から取り組みました。
配膳ロボットの導入と「ホスピタリティ」への集中
ロイヤルホストの店舗では、猫型の配膳ロボット(BellaBot等)や運搬ロボットの導入が急速に進みました。これらのロボットは、厨房から客席への料理の運搬や、食後の食器の下げ膳(バッシング)を担当します。
導入の目的は、単なる人件費削減ではありません。「人間にしかできない業務」にスタッフのリソースを集中させることにあります。重い料理を運ぶ重労働をロボットに任せることで、スタッフは客席でのメニュー説明、水の継ぎ足し、細やかな気配りといった「ホスピタリティ」の発揮に専念できるようになりました。
ロボットを導入した事例では、スタッフの1日の移動距離が12kmから7kmに減少するなど、身体的負担の軽減が数値として如実に現れています。これは疲労軽減による離職率の低下に直結し、結果として採用コストの抑制や熟練スタッフの定着につながります。
キッチンとバックオフィスのデジタル化
DXは客席だけでなく、厨房や管理部門でも進められています。菊地会長は「ロイヤルホストとてんやでは、価値を生み出すプロセスが異なるため、それぞれに適したデジタル活用が必要」と述べています。
厨房内では、調理工程の管理システム(KDS:キッチンディスプレイシステム)の導入などにより、オーダーから提供までの時間を短縮し、料理の品質を均一化する取り組みが行われています。また、発注や在庫管理の自動化により、店長の事務作業負担を軽減し、店舗マネジメントに集中できる環境を整備しています。これらの地道な改革が、損益分岐点を引き下げ、利益が出やすい体質を作り上げました。
冷凍食品「ロイヤルデリ」の成長と中食市場への本格参入
コロナ禍で外食需要が蒸発した際、ロイヤルホールディングスの救世主の一つとなったのが、家庭用フローズンミール「ロイヤルデリ(Royal Deli)」です。
プレミアム冷凍食品としてのブランド力
「ロイヤルデリ」は、ロイヤルホストの味をそのまま家庭で楽しめる高品質な冷凍食品です。コスモドリアやビーフシチューなど、レストランの定番メニューを急速冷凍技術で商品化しています。菊地会長はコロナ以前から「外食・中食・内食の垣根が低くなる」と予測し、準備を進めていましたが、コロナ禍がその普及を一気に加速させました。
ロイヤルデリの最大の特徴は、スーパーで売られている一般的な冷凍食品とは一線を画す「プレミアム感」です。「自宅での食事を豊かにしたい」というニーズに応え、少し高くても美味しいものを求める層にヒットしました。売上高は順調に推移し、ECサイトでの販売だけでなく、ロイヤルホスト店舗での持ち帰り販売も強化されました。
当時の生田直己社長は、「ロイヤルが作ったスープだから買う」というブランドへの信頼が購買動機になっていると分析していました。ロイヤルデリは、店舗に来られない顧客との接点を維持し、ブランドのファンをつなぎ止める重要なツールとしても機能しており、2022年の売上高は約10億円規模に達するなど、新たな事業の柱として成長しています。
経営トップのリーダーシップと組織風土の変革
V字回復の裏には、トップマネジメントによる強力なリーダーシップと、組織風土の変革がありました。
菊地唯夫会長の危機管理哲学
菊地会長は銀行出身の金融知識と経営感覚を併せ持つリーダーです。コロナ禍において彼が重視したのは、「不安」ではなく「危機感」の共有でした。「不安は人を動かなくするが、危機感は人を動かす」という信念のもと、社内説明会をオンラインで80回以上開催し、従業員に現状と進むべき方向を語り続けました。
また、彼は「平時の意思決定と有事の意思決定は違う」と断言し、平時では躊躇するような大胆な構造改革や提携を、トップダウンで即断即決しました。「危機は成長のチャンス」と捉え、ビジネスモデルの転換を断行した姿勢が、組織のベクトルを合わせる求心力となりました。
阿部正孝社長の「現場力」重視の経営
一方、現場からの叩き上げである阿部正孝社長(2022年就任)は、「料理・サービス・空間」のバランスと「チーム力」を最重視しています。阿部社長は、創業以来のロイヤルホールディングスの強みである「美味しい料理」と「心温まるサービス」を、現代の文脈に合わせて磨き直すことを指揮しました。
彼は「機械ではなく、人だから成し得ること」を問い続け、DX化が進む中でも、最終的な顧客満足を決めるのは「人」であるという信念を組織に浸透させています。また、双日との提携に関しても、「新しいことに臆することなく進める」姿勢と「守るべきものを守る」姿勢の両立を説き、外部の血を入れつつもロイヤルホールディングスのアイデンティティを失わない経営を推進しています。
財務状況の劇的改善と今後の成長戦略
これら一連の改革の結果、ロイヤルホールディングスの業績は劇的に改善しました。
業績回復を示す具体的な数字
2022年度の売上高は前年比で大幅な増収となり、経常利益も黒字化を達成しました。2023年12月期決算では売上高はコロナ前の水準に肉薄し、経常利益も大幅な黒字転換を果たしました。特に外食事業は、客単価の上昇とコストコントロールにより、利益率が向上しています。2024年に入っても増収基調は続いており、原材料高騰の影響を吸収しながら利益を確保する体質へと変化しています。
また、双日との合弁事業である機内食関連会社(双日ロイヤルインフライトケイタリング)も、航空需要の回復と経営効率化により、2025年3月期には黒字化を達成しました。これは、最も打撃を受けた事業でさえも、構造改革によって再生可能であることを示しています。
2030年に向けた成長ビジョンと今後の展開
ロイヤルホールディングスは現在、次なる10年に向けた長期ビジョンのもと、成長フェーズへと移行しています。双日との提携関係はさらに深化し、複数の分野での展開が進んでいます。
第一に、アジア・米国展開の本格化です。シンガポールや米国での成功モデルを横展開し、海外売上比率を高めることが目指されています。ベトナムなど成長著しい市場への進出も加速しており、グローバル企業としての基盤が着実に構築されています。
第二に、新業態の開発です。既存ブランドの枠にとらわれない、新しい食のスタイル(テイクアウト専門店、高機能自販機など)の開発が進められています。
第三に、サステナビリティ経営です。環境配慮型食材の調達やフードロス削減など、SDGsへの対応をコストではなく競争力の源泉に変える取り組みが強化されています。
ロイヤルホールディングスと双日の提携が示した日本企業の再生モデル
ロイヤルホールディングスのV字回復は、単なるコスト削減や市場環境の好転によるものではありません。それは、「自社の強み(高品質な食とサービス)の再定義」と、「外部パートナー(双日)による弱み(調達・グローバル・資本)の補完」が見事に噛み合った結果です。
特に、デフレに迎合せず、あえて「高付加価値・高単価」路線を貫いたロイヤルホストの戦略は、日本の外食産業において「安さ」以外の競争軸があり得ることを証明しました。また、異業種である総合商社との提携を、単なる救済ではなく「成長のためのエンジン」へと昇華させた経営手腕は、今後の日本企業の再編や再生において重要なモデルケースとなるでしょう。
「食」という普遍的な価値を、デジタルとグローバルの力で拡張し続けるロイヤルホールディングス。双日という翼を得たロイヤルホールディングスは、日本発のホスピタリティ企業として、世界市場への飛躍をまさに始めたところです。


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