ゼンショーホールディングス傘下の株式会社ロッテリアは、2026年2月16日付で社名を株式会社バーガー・ワン(Burger One Co., Ltd.)へと変更しました。この社名変更に伴い、国内のロッテリア店舗は順次「ゼッテリア」という新業態へと転換が進められており、2026年3月末をもってロッテリアの全店舗が営業を終了する予定です。バーガーワンが展開するゼッテリアは、ロッテリア時代の看板商品「絶品チーズバーガー」を核に据えつつも、メニュー構成、価格帯、店舗コンセプトのすべてにおいてロッテリアとは大きく異なる「プレミアムファストフードチェーン」として生まれ変わっています。
この記事では、ゼンショーグループがバーガーワンへの転換を決断した背景から、ゼッテリアとロッテリアのメニューや価格の具体的な違い、さらにはゼンショーならではのサプライチェーンを活かした競争力の源泉まで詳しく解説していきます。半世紀以上の歴史を持つロッテリアがなぜ姿を変えるのか、新ブランドが私たちの食生活にどのような変化をもたらすのかが、この記事を読むことでわかります。

ゼンショーのバーガーワンとは?ロッテリアからの社名変更の背景と意味
バーガーワンとは、外食最大手ゼンショーホールディングス傘下でハンバーガー事業を担う新会社の名称です。正式名称は株式会社バーガー・ワン(英文表記:Burger One Co., Ltd.)で、2026年2月16日に旧社名である「株式会社ロッテリア」から変更されました。所在地や公式サイトのURLに変更はなく、組織としての連続性を維持しながら、外部に向けたブランドアイデンティティを刷新した形です。
ロッテリアブランドとの決別が意味すること
この社名変更が持つ意味は非常に大きいものです。ロッテリアは1972年の創業以来、半世紀以上にわたって日本のファストフード業界を牽引してきたブランドでした。お菓子メーカーのロッテを母体として誕生し、マクドナルドに対抗する日本発のハンバーガーチェーンとして、業界2位から3位の地位を長らく争い続けてきた歴史があります。
2023年にゼンショーホールディングスがロッテリアを買収した際には、「老舗ブランドをどのように再生させるのか」に業界の注目が集まりました。しかし、ゼンショーが選んだのは「再生」ではなく「再定義」という道でした。ロッテリアの名を社名から外すことで、旧ロッテグループとの資本的・ブランド的なつながりを完全に断ち切り、ゼンショーグループ独自のバーガー戦略を本格的に推進するという強い意思を示したのです。
「ワン」という言葉には「唯一」あるいは「ナンバーワン」という意味が込められています。ブランド使用料の支払いを伴う旧来の看板を捨て、自社資本による独自ブランドを一から築き上げるという経営判断の表れでもあります。
ロッテリア全店舗の営業終了とゼッテリアへの転換スケジュール
バーガーワンは、2026年3月末をもって国内におけるロッテリア全店舗の営業を終了することを決定しています。その大半の店舗は「ゼッテリア」という新業態へと転換される方針です。既存の店舗設備を活用しながら急速にブランド転換を進める手法には、ゼンショーが得意とする効率的な店舗運営のノウハウが活かされています。
2026年2月17日時点で、すでに多くの店舗がゼッテリアとして営業を開始しており、残るロッテリア店舗も3月末に向けて順次切り替わっていく予定です。街から「ロッテリア」の看板が消えていくことに寂しさを感じる方も多いですが、その伝統はより洗練された形で受け継がれていくことになります。
バーガーワンのゼッテリアとロッテリアの違いを徹底比較
ゼッテリアとロッテリアの最大の違いは、「総合ハンバーガーショップ」から「プレミアムカフェ・バーガー店」へとコンセプトが大きく転換された点にあります。両ブランドの違いを理解することで、ゼンショーグループが目指す新しいバーガー体験の全体像が見えてきます。
ブランド名に込められたコンセプトの違い
「ゼッテリア」という名称は、ロッテリアが2007年に生み出した看板商品「絶品チーズバーガー」の「絶(ぜっ)」と、気軽に利用できる「カフェテリア」を組み合わせた造語です。この名前そのものが、新ブランドの戦略を明確に表しています。ロッテリアが幅広いメニューとユニークなキャンペーンで勝負する「総合型」だったのに対し、ゼッテリアは強みを「絶品」シリーズに絞り込み、カフェとしての滞在価値を高めた「特化型」として差別化を図っているのです。
店舗デザインとターゲット層の変化
店舗の外観や内装においても、両者の違いは明確です。ロッテリアは赤を基調としたカラーリングに、木目や黒を配した落ち着いた雰囲気が特徴的でした。一方のゼッテリアは、よりポップでカジュアルなデザインを採用しており、SNS映えを意識した明るいトーンの空間づくりが行われています。
この変化は、ターゲット層の転換を反映したものです。ロッテリアが主にファミリー層や中高年層に支持されてきたのに対し、ゼッテリアはカフェを日常的に利用する若年層やビジネスマンへのアプローチを強化しています。「プレミアムファストフードチェーン」を掲げるゼッテリアは、単に空腹を満たすだけの場所ではなく、質の高い食事と快適な空間を同時に楽しめる場所を目指しているのです。
以下の表で、ロッテリアとゼッテリアの主な違いを整理しました。
| 項目 | ロッテリア | ゼッテリア |
|---|---|---|
| コンセプト | 総合ハンバーガーショップ | プレミアムカフェ・バーガー店 |
| 店舗デザイン | 赤基調、落ち着いた内装 | ポップでカジュアル、明るいトーン |
| ターゲット層 | ファミリー・中高年層 | 若年層・ビジネスマン |
| メニュー戦略 | 多品種展開 | 絶品シリーズに集中 |
| カフェ機能 | 限定的 | カフェコンビ等で強化 |
| 話題づくり | 期間限定コラボで話題性を創出 | 恒常メニューの質で勝負 |
アイドルタイムの活用という新しい発想
ゼッテリアが特に力を入れているのが、14時以降の「アイドルタイム」と呼ばれる時間帯の集客です。従来のハンバーガー店は昼食時や夕食時に需要が集中し、午後の時間帯は客足が大きく落ち込む傾向がありました。ゼッテリアは「カフェテリア」としての機能を前面に打ち出し、ドリンクとサイドメニューを組み合わせた「カフェコンビ」を充実させることで、午後のティータイム需要を積極的に取り込んでいます。
これにより、ビジネスマンのモバイルワークの場や、友人との語らいの場としての新たな利用シーンが生まれ、一日を通じた店舗の稼働率向上が実現しています。マクドナルドのような高効率・短時間滞在モデルとは異なる土俵で勝負するという、ゼンショー独自の差別化戦略がここに表れています。
ゼッテリアのメニュー構成と絶品バーガーシリーズの進化
ゼッテリアのメニューは、「選択と集中」という方針が明確に反映された構成になっています。ロッテリアが多様なニーズに応えるために幅広いメニューを展開していたのに対し、ゼッテリアは自社の強みが最も発揮される「絶品」シリーズを中心に、メニューを厳選しています。
絶品バーガーシリーズの大幅拡充
ゼッテリアの最大の売りは、ロッテリア時代の看板商品をさらに進化させた「絶品バーガー」シリーズです。ロッテリアでは絶品バーガーのバリエーションは2種類程度にとどまり、他の13種類ほどのメニューがその脇を固める形でした。これに対してゼッテリアでは、絶品バーガーを6種類以上に大幅に拡充し、メニュー全体の核として位置づけています。
ラインナップには「絶品オレンジチキンバーガー」や「絶品牛カルビチーズバーガー」といった、従来のファストフードの枠を超えた創造性あふれるメニューが含まれています。特に牛カルビチーズバーガーには、ゼンショーが「すき家」などで長年培ってきた肉の調理ノウハウや調達ネットワークが活かされています。素材の質を強調し、肉厚なパティやこだわりのソースを使用することで、一口食べた瞬間に感じられる「質の高さ」を演出しているのがゼッテリアの特徴です。
バンズとパティへのこだわりが生むプレミアム感
ゼッテリアでは、素材と調理工程へのこだわりがより一層強化されています。「絶品チーズバーガー」に使用されるバンズは、パティから溢れ出す肉汁をしっかりと受け止めながらも、口どけの良さを実現した特製仕様となっています。ロッテリア時代のバンズと比較して、より「ふわふわでもちもち」とした食感が追求されており、プレミアム感を高める重要な要素です。
パティについては、牛肉の粗挽き感を強調し、塩と胡椒というシンプルな調味料だけで肉本来の旨味を引き出す方向へと舵が切られました。ロッテリア時代のパティが調味料との調和やユニークな風味を重視していたのに対し、ゼッテリアは「肉そのもの」の満足感を追求しています。この変化の背景には、ゼンショーグループが持つ世界規模の牛肉調達ネットワークがあり、高品質な原料を安定的に確保できるようになったことが大きく影響しています。
サイドメニューとスイーツの充実で広がるカフェとしての魅力
サイドメニューの構成にも、両ブランドの思想の違いがはっきりと表れています。ロッテリアで長年親しまれてきた「チキンからあげっと」はロッテリア固有のメニューとして残されましたが、ゼッテリアではこれに代わる新定番として「チキンフィンガー」が導入されました。ドリンクメニューにおいても、ロッテリアがバリエーションの豊富さを重視していたのに対し、ゼッテリアでは「フェアトレードコーヒー」など、品質基準やサステナビリティに配慮した商品を厳選して提供しています。
ゼッテリアの特に大きな特徴となっているのがスイーツメニューの充実です。宇治抹茶パイやチョコチャンククッキーなど、カフェ利用を促進するメニューが豊富に揃えられています。これらのスイーツは店内での滞在時間を自然に延ばし、客単価の向上にも貢献しています。ロッテリアが期間限定のコラボレーション企画で話題性を生み出すことを得意としていたのに対し、ゼッテリアは恒常的なメニューの質とカフェとしての完成度で勝負する姿勢を貫いています。
バーガーワン(ゼッテリア)の価格設定とロッテリアとの価格差
ゼッテリアの価格戦略は、「適正価格で高い価値を提供する」バリュー・フォー・マネーの考え方に基づいています。ロッテリアが競合他社に対抗するための低価格メニューや頻繁なキャンペーン値引きを特徴としていたのに対し、ゼッテリアは提供する商品の質に見合った価格設定を行っています。
ゼッテリアの主力メニュー価格帯は490円前後
ゼッテリアの主力メニューである「絶品チーズバーガー」や「えびバーガー」は、単品で490円前後から設定されています。この価格は、かつてのロッテリアの同等商品やマクドナルドのスタンダードメニューと比較すると「やや高め」の水準です。しかし重要なのは、消費者がその価格差の中に「質の向上」をしっかりと感じ取れるかどうかという点です。
ゼッテリアは、肉厚なパティや高品質なバンズ、こだわりのソースを使用することで、「490円でこの内容なら十分に納得できる」という満足感を生み出すことに成功しています。単なる値上げではなく、提供する価値そのものを引き上げることで「高単価・高満足度」のモデルへと転換したのが、ゼッテリアの価格戦略の本質です。
セットメニューとカフェコンビによる多層的な価格設計
ゼッテリアの価格戦略で特に巧みなのが、セットメニューの設計です。通常のポテトとドリンクのセットに加えて、「カフェコンビ」を導入することで、食事目的の顧客だけでなく、カフェ利用の顧客からも確実に収益を上げる仕組みが構築されています。
さらに、海老名サービスエリアなどの特殊な立地では、旅行者向けに「JB’s海老名スペシャル(ダブル)」のような高単価メニューも用意されています。1,000円から2,000円程度の予算感を持つ顧客層にも対応することで、立地特性に応じた最大収益の確保を実現しています。画一的な価格設定に縛られない柔軟な価格運用は、ゼンショーグループが持つ膨大な顧客データと立地分析のノウハウが反映された結果です。
ゼンショーグループのサプライチェーンが支えるバーガーワンの競争力
バーガーワンへの社名変更とゼッテリアへの転換を支える最大の原動力は、ゼンショーホールディングスが構築した「MMO(マス・マーチャンダイジング・システム)」です。これは、原材料の調達から製造、物流、店舗での販売に至るまでの全工程をグループ内で一貫管理する仕組みであり、ゼンショーグループの競争力の源泉となっています。
ロッテ時代から一変した調達ネットワーク
ロッテ傘下時代のロッテリアは、ロッテグループの供給網に依存していました。製菓技術の応用といった独自の強みがある一方で、外食専業ではないことに起因する調達コストの限界も存在していました。ゼンショーによる買収は、この供給網を「世界最大級の牛肉調達ネットワーク」へと繋ぎ変えることを意味しています。
すき家、ココス、はま寿司などで大量に使用される高品質な牛肉や野菜を、ゼッテリアという新たな販路に供給することで、スケールメリットによる大幅な原価低減が実現しました。この仕組みがあるからこそ、他社であればもっと高い価格設定にせざるを得ないクオリティのバーガーを、490円という戦略的な価格で提供できるのです。
オペレーション効率化とテクノロジーの積極導入
ゼンショーは、すき家などで培った高度に効率化されたオペレーションのノウハウをゼッテリアにも展開しています。メニューを絞り込み、調理工程を標準化することで、少人数のスタッフでも迅速に商品を提供できる体制が整えられています。深刻な人手不足に直面している日本の外食産業において、ビジネスモデルの持続可能性を確保するために欠かせない取り組みです。
ゼッテリアへの転換に際しては、セルフオーダー端末やモバイルオーダーの導入も積極的に進められています。接客コストを抑えながら顧客の利便性を高めるこれらのテクノロジーにより、ロッテリアが持っていた「手作り感」や「温かみ」を一部継承しつつも、オペレーションの効率性を大きく向上させることに成功しています。
バーガーワンの多ブランド戦略と今後の展開
バーガーワンは、社名変更に際して将来的な多ブランド展開を見据えていることを明らかにしています。全国を画一的にゼッテリアで埋め尽くすのではなく、立地特性に合わせて異なるブランドやメニュー構成を投入していく方針です。
海老名サービスエリアに見る実験的なクラフトバーガー店舗
多ブランド戦略の方向性を示す注目の事例が、東名高速道路の海老名サービスエリア下り線に展開されている「JB’s TOKYO」のコンセプトを反映した店舗です。この店舗では、100%ビーフのパティを2枚使用した迫力あるアメリカンスタイルのメニューが提供されており、バンズも店内で焼き上げるという徹底した自家製へのこだわりが大きな特徴となっています。
この店舗が提供する「100%チーズバーガー」や「ダブルパティ」は、ゼッテリアが掲げる「プレミアム」のさらに上位に位置するものです。サービスエリアという非日常の空間で、あえて手間のかかるクラフトバーガーを提供することにより、バーガーワンとしてのブランド全体の技術力と品質へのこだわりを発信する役割を担っています。
立地に最適化した店舗ポートフォリオの構築
多ブランド戦略のもとでは、それぞれの立地に最適な業態を展開することが想定されています。ロードサイドにはステーキやハンバーグ専門店のノウハウを活かした「肉質特化型」の店舗を、駅前には「カフェ機能特化型」の店舗を配置するといった形で、立地ごとに最適なポートフォリオを組むことが可能です。海老名サービスエリアでの取り組みは、こうした多様な展開に向けた貴重なデータ収集の場としても機能しています。
グローバル市場を視野に入れた「Burger One」の社名
新社名が「Burger One」という汎用性の高い英語名を採用したことも、見逃せないポイントです。ゼンショーグループは既に世界各国で事業を展開しており、日本国内にとどまらないグローバル市場での展開も視野に入れていることが強くうかがえます。ロッテリアが培ってきたアジア圏でのブランド基盤を、ゼッテリアやバーガーワンという新たな形態で展開していくことで、世界的なバーガーチェーンとしての地位確立を目指しています。
日本のハンバーガー市場におけるバーガーワンの立ち位置と競合比較
ロッテリアからバーガーワンへの転換は、国内ハンバーガー市場全体の勢力図にも影響を与えています。マクドナルドが「全世代・全方位」戦略を展開し、モスバーガーが「食の安全・安心・日本品質」を堅持する中で、ゼッテリアが狙うのは「日常の中の小さな贅沢」としてのカフェ・バーガーという新たなカテゴリーです。
マクドナルド・モスバーガーとの差別化ポイント
マクドナルドとの比較では、ゼッテリアは「肉の食感」と「バンズの品質」において優位性を打ち出し、価格差以上の価値を提供する戦略を取っています。モスバーガーとの比較では、ゼンショーの調達力を活かした「コストパフォーマンス」と、カフェとしての「使い勝手の良さ」が差別化のポイントです。
新興のグルメバーガー店が増加する中で、それらと同等のクオリティをファストフードのスピードと手頃な価格帯で提供するという「高品質バーガーの民主化」を試みているのが、ゼッテリアの最も特徴的な立ち位置です。メニューの絞り込みによる品質向上、カフェ機能の付加による滞在価値の創造、そしてMMOシステムによる圧倒的なコストパフォーマンスという三位一体の戦略が、日本のバーガー市場に新たなカテゴリーを生み出そうとしています。
2026年3月末のロッテリア全店営業終了以降、私たちの街の風景は変わっていきます。しかし、半世紀以上にわたって愛されてきたロッテリアの「絶品」という資産は、ゼッテリアとバーガーワンという新しい器の中で、より洗練された形で受け継がれていきます。ゼンショーグループが持つ圧倒的なサプライチェーンと効率的なオペレーション、そして「一番うまいものを提供したい」という理念が融合した新ブランドの挑戦は、まだ始まったばかりです。


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