メルシャンのチリ産ワイン自主回収の対象商品は、「フロンテラ」ブランドのロゼワイン3品目で、品番(JANコード)は「4973480348879」「4973480349470」「4973480829521」です。キリンホールディングス傘下のメルシャン株式会社は2026年2月17日、輸入販売するチリ産ワイン「フロンテラ」シリーズの一部に、日本の食品衛生法で認可されていない食品添加物「クエン酸銅」が使用されていたことを公表し、自主回収を開始しました。累計出荷数は約62万本に達しており、現時点での市場流通量は約4万本と推計されています。対象商品は「フロンテラ」ブランドのロゼワインのみで、赤ワインや白ワインなどの他品種は含まれません。メルシャンは「健康への影響は極めて低い」としていますが、食品衛生法に基づき回収を実施しています。この記事では、対象商品の品番による見分け方から、回収の具体的な手続き、原因物質であるクエン酸銅の安全性、返金方法まで詳しくお伝えします。

メルシャンが自主回収したチリ産ワインの対象商品と品番一覧
今回のメルシャンによるチリ産ワイン自主回収で最も重要なのは、手元の商品が対象に含まれるかどうかを正確に判別することです。対象となるのは「フロンテラ」ブランドのロゼワイン3品目に限定されており、商品名と容器の形状、そしてバーコード下の13桁の数字である品番(JANコード)を照合することで確認できます。以下の表に、対象商品の品番と主な情報をまとめました。
| 商品名 | 容器 | 容量 | JANコード(品番) | 累計出荷数 | 対象期間 |
|---|---|---|---|---|---|
| フロンテラ スパークリング ロゼ | 缶 | 280ml | 4973480348879 | 約43万本 | 2024年5月発売以降の全ロット |
| フロンテラ アイス ロゼローズ | 缶 | 280ml | 4973480349470 | 約6万9千本 | 2025年1月発売以降 |
| フロンテラ ロゼ | 瓶 | 750ml | 4973480829521 | 約12万6千本 | 2024年以降 |
フロンテラ スパークリング ロゼ 缶の品番と詳細
今回の回収対象の中で最も流通量が多い商品が、「フロンテラ スパークリング ロゼ 缶」です。品番(JANコード)は4973480348879で、280mlのアルミニウム缶に入ったスパークリングワインとなっています。ピンク色を基調とした缶のデザインが特徴で、2024年5月の発売以降に出荷された全ロットが回収の対象です。累計出荷数は約18,000ケース、本数に換算すると約43万本に上り、3品目の中で最大の出荷規模となっています。アウトドアや家庭内でのカジュアルな飲用シーン向けに販売されていた商品です。
フロンテラ アイス ロゼローズ 缶の品番と詳細
二つ目の対象商品は、氷を入れて楽しむスタイルを提案する「フロンテラ アイス ロゼローズ 缶」です。品番(JANコード)は4973480349470で、こちらも280mlの缶入り製品です。2025年1月に発売された比較的新しい商品のため、累計出荷数は約2,900ケース(約6万9千本)と他の2品目に比べて少数ですが、発売からの期間が短いぶん店頭や家庭内に残存している可能性が高い品目と言えます。商品名にある通り、氷を入れても味わいが薄まりにくいよう設計された、やや甘口でコクのある味わいが特徴の製品です。
フロンテラ ロゼ 瓶の品番と詳細
三つ目の対象商品は、標準的なフルボトルの「フロンテラ ロゼ 瓶」です。品番(JANコード)は4973480829521で、容量は750ml、ガラス瓶に入ったスティルワインとなっています。回収の対象は2024年以降に販売された商品すべてです。特に注意が必要なのは、販売期間中にラベルデザインのリニューアルが行われているという点です。リニューアル後の現行ラベルだけでなく、リニューアル前の従来ラベルの商品も同様に回収対象に含まれますので、ラベルのデザインに関わらずJANコードで確認することが大切です。累計出荷数は約21,000ケース(約12万6千本)となっています。
回収の対象外となるフロンテラの商品について
今回の自主回収はロゼワイン3品目に限定されており、同じ「フロンテラ」ブランドであっても対象外の商品が多数存在します。「カベルネ・ソーヴィニヨン(赤)」や「シャルドネ(白)」、「ピノ・ノワール」などの他品種は、使用されている添加物や醸造工程が異なるため回収の対象には含まれません。ロゼワインの製造工程では色調や香りの調整にクエン酸銅が使用されていましたが、赤ワインや白ワインでは醸造プロセスが異なるため同じ添加物が使われていないということです。手元の商品が対象かどうかを判断する際は、商品名に含まれる「ロゼ」という表記の有無と、先述の3つのJANコードを照らし合わせることで明確に区別できます。購入時のレシートが残っていない場合でも、商品パッケージのバーコード下に印字された13桁の数字を確認すれば対象かどうかの判別は可能です。
チリ産ワイン自主回収の原因となった「クエン酸銅」とは
今回のメルシャンによるチリ産ワイン自主回収の原因は、製造工程で使用された「クエン酸銅」という物質にあります。クエン酸銅とは、ワイン醸造において「還元臭」と呼ばれる不快な臭いを除去するために使用される銅化合物の一種です。
ワイン醸造では、特にステンレスタンクを使用してフレッシュなアロマを保持しようとする現代的な醸造スタイルにおいて、「還元臭」の発生が大きな課題とされています。還元臭とは、発酵中に酵母がストレスを感じた際などに生成される硫化水素やメルカプタン類が原因となる不快な臭いです。具体的には「腐った卵」や「茹でたキャベツ」、「ゴム」のような臭いとして知覚され、ワイン本来の果実香を著しく損なってしまいます。
この還元臭を除去するために古くから使われてきたのが銅です。銅イオンは硫化水素などと反応して不溶性の硫化銅を形成し、この沈殿物をその後の澱引きや濾過の工程で物理的に取り除くことで、ワインから不快臭が消えるという仕組みです。
日本の食品衛生法では、ワイン製造に使用が認められている銅化合物は「硫酸銅」のみに限られています。しかし、近年の世界のワイン醸造では、より高品質なワインを造るためにクエン酸銅の使用が主流になりつつあります。クエン酸銅が好まれる理由は大きく二つあります。第一に、硫酸銅と比較してワインのデリケートな香りを守りながら不快臭を除去する能力に優れている点です。硫酸銅は過剰に使用するとワインにとって好ましいアロマ成分まで酸化させたり、金属的な味を与えてしまうリスクがありますが、クエン酸銅は不快な硫化物に対してより特異的に作用します。第二に、反応後の除去が容易であり、最終製品への銅残存リスクを低減できるという点です。
OIV(国際ブドウ・ワイン機構)加盟国であるチリやEU諸国、オーストラリア、アメリカなどでは、クエン酸銅は「加工助剤」として合法的に使用が認められています。製造元であるチリのコンチャ・イ・トロ社がクエン酸銅を使用したのは、ロゼワイン特有の繊細な色調とフレッシュな香りを守るための品質重視の技術選択でした。しかし、日本の食品添加物公定書にはクエン酸銅が記載されていないため、国際的には安全性が確認された物質であっても、日本国内での流通は認められないという結果になりました。
クエン酸銅が日本で使用できない理由「ポジティブリスト制度」とは
日本では食品添加物について「ポジティブリスト制度」を採用しています。ポジティブリスト制度とは、原則としてすべての食品添加物の使用を禁止したうえで、厚生労働大臣が安全性を確認して指定したもののみを使用可能とする仕組みです(食品衛生法第10条)。つまり、「危険だから禁止されている」のではなく、「安全だと国が認めてリストに載せていないものは、たとえ国際的に安全であっても使ってはいけない」という制度となっています。
クエン酸銅は国際的には安全性が確認されていますが、日本のリストには記載されていません。そのため、製造工程で微量であっても使用された事実があれば食品衛生法違反となり、日本国内での流通が認められないのです。
日本政府もこうした国際基準との差を埋める取り組みを進めてきました。2019年2月の日本・EU経済連携協定(EPA)発効に伴い、EUで使用が認められている多くのワイン用添加物(メタ酒石酸、重炭酸カリウムなど)を一括して認可した実績があります。しかし、この認可リストの更新は段階的なものであり、クエン酸銅のように「国際的には常識だが日本では未承認」という物質が依然として存在しています。2007年の日チリ経済連携協定(EPA)によって関税が撤廃されチリ産ワインの輸入量が増加した一方で、醸造技術に関する規制の調和が追いついていない現状が、今回の自主回収を通じて明らかになりました。
メルシャン チリ産ワイン自主回収の手続きと返金方法
メルシャンは2026年2月17日より、対象商品を保有する消費者に対して回収と返金の受付を開始しました。回収の申し込み方法はウェブと電話の2種類が用意されています。
ウェブ受付については、メルシャンが開設した専用の「回収受付ご登録フォーム」から申し込む方法です。フォームは24時間利用可能で、PCやスマートフォンからアクセスできます。氏名、住所、連絡先、対象商品の種類と本数を入力すると、指定の宅配業者による集荷の手配が完了します。フォームのURLは「https://uketsuke-form.jp/modules/uketsuke_a63p87n75/」です。
電話受付については、専用のフリーダイヤルが用意されています。受付時間は平日の午前9時から午後5時までで、土日祝日は対応していません。インターネット環境がない方や直接オペレーターと話したい方は、こちらの窓口を利用できます。
いずれの方法で申し込んだ場合でも、手続き完了後に宅配業者が指定日時に自宅まで集荷に訪れます。消費者は対象商品を簡易的に梱包して渡すだけで手続きは完了です。送料はメルシャン負担の着払いとなるため、消費者の金銭的な負担は一切ありません。
返金は現金ではなく、商品代金相当額のQUOカード(クオカード)で行われます。回収された商品の内容確認が完了した後、後日QUOカードが郵送される仕組みです。QUOカードは全国のコンビニエンスストアや書店、ドラッグストアなどで使用できるプリペイドカードで、返送からQUOカードの到着までは通常数週間程度かかるとされています。
対象のチリ産ワインをすでに飲んでしまった場合の安全性
対象のチリ産ワインをすでに飲んでしまった場合でも、過度に心配する必要はありません。クエン酸銅は製造工程中に硫化物と結合して沈殿し、濾過工程で除去される「加工助剤」としての性質を持っています。加工助剤とは、食品の加工中に使用されるものの、最終的に食品が完成する前に除去されるか、残留しても極めて微量にとどまる物質を指します。
消費者が口にするワインの中には、クエン酸銅そのものは実質的に残存していないか、分析限界レベルの微量しか含まれていないと考えられます。メルシャンも「健康への影響は極めて低い」と説明しており、2026年2月18日現在、健康被害の報告はありません。今回の回収は健康上の危険が直接の理由ではなく、あくまで日本の食品衛生法に基づく法令遵守の観点から実施されたものです。「法令違反=健康に危険」というわけではなく、日本のポジティブリスト制度に登録されていない物質が使用されていたという手続き上の問題であることを理解しておくことが重要です。万が一体調に異変を感じた場合は医療機関を受診することが推奨されますが、科学的な観点から深刻な健康被害につながる可能性は極めて低いとされています。なお、開封済みの商品や空き缶・空き瓶であっても、回収対象期間の製品であれば回収の申し込みが可能ですので、該当する方はメルシャンの窓口に確認することをおすすめします。
メルシャンの自主回収とチリ産ワイン「フロンテラ」の市場背景
今回自主回収の対象となった「フロンテラ」ブランドは、日本国内の輸入ワイン市場で大きなシェアを持つデイリーワインの代名詞的な存在です。チリ産ワインは日本の輸入スティルワイン市場において約30%のシェアを占めており、フランスと並んで常にトップクラスの位置にあります。その背景には、2007年9月に発効した日チリ経済連携協定(EPA)の存在があります。同協定により段階的に引き下げられてきたワインの関税は2019年4月に完全に撤廃され、協定発効から現在までの間にチリワインの輸入量は約5倍に拡大しました。チリワインは1リットルあたりの輸入単価がフランス産の約4割程度と手頃な価格帯が中心で、日本の小売店では1本500円から1,000円未満の商品が多く並んでいます。こうした価格の手頃さも相まって、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの棚には欠かせない存在となりました。
「フロンテラ」は日本で年間40万ケース以上を販売する圧倒的な規模を持つブランドです。今回の回収対象商品には、近年若年層を中心に需要が拡大していた缶ワインやロゼワインが含まれており、そのブランド知名度の高さゆえに消費者や流通業界に与える心理的な影響は決して小さくありません。
製造元のコンチャ・イ・トロ社は、1883年に創業されたチリ最大かつ南米最大のワイナリーです。世界140カ国以上に輸出しているグローバル企業であり、高級ワインからデイリーワインまで幅広いラインナップを展開しています。同社の「カッシェロ・デル・ディアブロ(悪魔の蔵)」は世界的に著名なブランドとして知られています。同社はサステナビリティや品質向上に向けた最新の醸造技術を積極的に導入しており、今回のクエン酸銅の使用もロゼワイン特有の繊細な色調と香りを守るための技術選択でした。
輸入者であるメルシャンは日本ワインのパイオニアであると同時に、キリングループの一員として厳格な品質保証体制を持つ企業です。メルシャンとコンチャ・イ・トロ社は長年にわたるパートナーシップを結んでおり、日本市場に向けた共同商品開発も行ってきました。今回の事案においては、法令違反が判明した直後に自主回収を発表しており、健康被害の報告がない段階での予防的な措置としてコンプライアンスを最優先する姿勢を示しました。ただし、輸入者にはサプライヤーが使用するすべての添加物が日本の法令に適合しているかを事前に確認する責任があり、今回のケースはそのチェック体制の課題を浮き彫りにした側面もあります。
今回の自主回収が輸入ワイン市場に与える影響と今後の展望
今回のメルシャンによるチリ産ワインの自主回収は、一時的に「フロンテラ」ブランドの販売に影響を与える可能性があります。特に、近年若年層を中心に需要が拡大していた缶ワインカテゴリーへの心理的な影響は避けられません。しかし、原因が品質不良ではなく日本と国際基準の間の法規制の不整合であること、そしてメルシャンの対応が迅速であったことから、長期的なブランドへの影響は限定的であると考えられます。
一方で、この事案は他の輸入ワイン業者にとっても無関係ではありません。日本の輸入ワイン市場ではチリ産とフランス産だけで全体の約6割を占めており、特にチリ産ワインは手頃な価格帯の商品が多いことから、幅広い層の消費者に親しまれています。今回のような法規制の不整合による回収リスクは、チリ産に限らず新世界ワイン全般に潜在的に存在する課題です。各社は現在取り扱っている海外産ワインについて、使用されている添加物の再点検、特に加工助剤に関する詳細なスペック書の確認を急ピッチで進めることになると予想されます。これにより、一時的に店頭から一部の輸入ワインが姿を消したり、新商品の発売が延期されたりする可能性も考えられます。
今回の自主回収は、グローバル化が進む食の世界において、国ごとの規制の違いがもたらす課題を浮き彫りにしました。日本におけるワイン添加物規制のさらなる見直しや、国際基準との整合性を図る議論が今後加速することが期待されます。消費者としては、こうしたニュースに接した際に「添加物=危険」と短絡的に捉えるのではなく、回収の理由が法的なものなのか科学的リスクによるものなのかを冷静に判断する姿勢が大切です。対象商品が手元にある場合は、メルシャンの専用フォームまたは電話窓口から速やかに回収を申し込むことをおすすめします。

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