2025年(令和7年)の年末調整は、多くの給与所得者や実務担当者にとって、これまでにない大きな変革の年となることが予想されています。メディアやSNSでは「令和7年 基礎控除 見直し」や「増税」といったキーワードが飛び交い、不安を感じている方も少なくないでしょう。しかし、この話題を正しく理解するためには、まず一つの重要な事実を押さえておく必要があります。それは、2025年の税制改正において、所得税における基礎控除の金額(48万円)自体には一切の変更がないという点です。では、なぜこれほどまでに「年末調整 令和7年 変更点」として基礎控除の見直しが話題となっているのでしょうか。その答えは、今回の改正の本質が「基礎控除」ではなく、「扶養控除」の仕組みにあるからです。政府が推進する少子化対策の一環として児童手当が拡充されることに伴い、その財源を確保するために扶養控除の制度が大きく変更されることになりました。この記事では、令和7年度税制改正の真の内容を明らかにし、基礎控除 見直しという言葉の背景にある複雑な制度変更について、専門的な内容もわかりやすく解説していきます。

令和7年度税制改正の背景と目的
2025年から施行される税制改正の核心を理解するためには、まずその背景にある政策目的を把握することが重要です。今回の改正は、岸田政権が掲げる「異次元の少子化対策」の一環として位置づけられており、その中心となるのが児童手当の拡充です。具体的には、児童手当の所得制限が撤廃され、支給対象が高校生年代(18歳)まで延長されることになりました。この政策変更により、年間約1兆円を超える追加財源が必要となりますが、その財源を確保するための手段として、既存の税制、特に扶養控除の仕組みにメスが入れられることになったのです。
政府の考え方としては、児童手当という「現金給付」を拡充する代わりに、所得税の「控除」という形で重複していた支援を一本化するというものです。つまり、これまで16歳から18歳の子どもを持つ納税者に対して適用されていた扶養控除を見直し、児童手当の形で直接的な支援を行うという方針転換が行われます。このような背景から、年末調整における変更点は基礎控除そのものではなく、扶養控除の計算ロジックが根本的に変わるという点にあります。特に、16歳から18歳の子どもを持つ納税者にとっては、控除計算の方法が大きく変わることになり、その影響は2025年12月に行われる令和7年分の年末調整において顕在化することになります。
この改正は2025年1月1日以降に支払われる給与、つまり2025年分の所得から適用されます。したがって、給与計算や年末調整の実務を担当する方々は、この新しいルールを正確に理解し、適用する準備を整える必要があります。多くの従業員にとって、この変更は「年末調整後の手取り額が予想外に減少する」という形で現れる可能性があり、事前の周知と対策が極めて重要となっています。
16歳から18歳の扶養控除廃止という衝撃
今回の改正で最も大きなインパクトを持つのが、16歳から18歳までの扶養親族に対する38万円の扶養控除が原則として廃止されるという点です。これまでの制度では、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合、一定金額の所得控除が認められていました。具体的には、その年の12月31日時点で年齢が16歳以上の扶養親族については、一般の扶養親族として38万円の控除が適用されます。また、19歳以上23歳未満の扶養親族は「特定扶養親族」として、より手厚い63万円の控除が適用される仕組みとなっています。
令和7年度税制改正により、この16歳から18歳までの扶養親族に対する38万円の扶養控除が廃止されることになりました。この「廃止」こそが、児童手当拡充の財源確保策の柱となっています。もしこの廃止だけで改正が終了していたとすれば、高校生年代の子どもを持つすべての納税者は例外なく課税所得が38万円増加し、所得税率20%の家庭であれば約7万6千円(さらに住民税約3万8千円)の大幅な税負担増となっていたことでしょう。
この改正の実務上の影響として、まず押さえるべき重要な事実は、「2025年以降、16歳から18歳の子どもは原則として従来の扶養控除の対象外となる」という点です。給与計算システムのロジックとしては、この「控除の削除」がベースとなり、その上で後述する補填措置が適用されることになります。この変更は、基礎控除の見直しという言葉で語られることが多いですが、実際には扶養控除という別の控除制度の変更であり、基礎控除48万円自体は変わらないという点を正確に理解することが重要です。
所得制限付き「児童特別控除」の創設
前述の38万円控除の原則廃止による急激な税負担増を緩和するため、政府は「補填」措置を講じました。しかし、この補填措置こそが、2025年の年末調整を複雑にする最大の要因となっています。この補填措置は、既存の扶養控除の枠組みとは別に、新たに「児童特別控除」(仮称)として創設されます。そして、この新しい控除の最大の特徴は、普遍的なものではなく、納税者本人の「合計所得金額」に応じて控除額が変動する、またはゼロになるという点にあります。
実務担当者がこの新しい児童特別控除を理解する上で最も重要なのが、所得階層による4段階の控除額の違いです。2025年以降、16歳から18歳の子ども1人あたりの控除額は、納税者本人の合計所得金額に基づき、4つの階層に分類されることになります。
まず、納税者の合計所得金額が900万円以下の場合、新たに創設される児童特別控除の額は38万円となります。これは廃止される扶養控除38万円と同額であるため、合計所得金額が900万円以下の納税者にとっては、実質的な税負担の変動はありません。失った控除と得られる控除が同額となる形です。
次に、納税者の合計所得金額が900万円を超え950万円以下の場合、児童特別控除の額は25万円となります。2024年までは38万円の控除が受けられていたため、実質的に13万円(38万円から25万円を引いた額)の控除額が失われることになり、課税所得が13万円増加します。これにより、所得税率に応じた税負担増が生じることになります。
さらに、納税者の合計所得金額が950万円を超え1,000万円以下の場合、児童特別控除の額は13万円に縮小されます。2024年比で25万円(38万円から13万円を引いた額)の控除額が失われ、課税所得が25万円増加することになります。この所得層の納税者にとっては、より大きな税負担増となります。
そして最も重要な変更点として、納税者の合計所得金額が1,000万円を超える場合、児童特別控除の額はゼロ円となります。つまり、合計所得金額が1,000万円を超える納税者は、2024年まで受けていた38万円の扶養控除が、2025年からは完全に失われることになるのです。この「1,000万円の壁」の出現は、令和7年の年末調整における最も大きな変更点の一つと言えるでしょう。
新たな「1,000万円の壁」が及ぼす影響
税制にはこれまでも「103万円の壁」や「130万円の壁」など、様々な所得の壁が存在してきました。今回の改正により、新たに「1,000万円の壁」が強固にそびえ立つことになります。この壁の特徴は、その影響が非常に急激である点にあります。たとえば、合計所得金額が999万円の納税者は13万円の控除が受けられますが、合計所得金額が1,001万円の納税者は控除額がゼロ円となります。所得がわずか2万円違うだけで、控除額が13万円も変動するという極めて急峻な崖が形成されるのです。
この新たな壁の出現により、年末(特に11月から12月)になると、「残業を調整して所得を1,000万円以下に抑えたい」といった相談が従業員から寄せられる可能性が非常に高くなります。これは単なる税務計算の問題にとどまらず、人事労務管理や就業規則の運用にも関わる新しい課題となるでしょう。基礎控除の見直しという表現で語られることの多い今回の改正ですが、実際には扶養控除制度に新たな所得制限が設けられることで、このような複雑な問題が生じることになります。
さらに深刻な問題として、「合計所得金額」と「給与収入」の乖離があります。上記の所得制限はすべて「合計所得金額」で判定されますが、年末調整の実務担当者が確実に把握できるのは、自社が支払った「給与収入」だけです。給与収入のみの従業員であれば、合計所得1,000万円は給与収入1,195万円に相当するため、計算は可能です。しかし、もしその従業員が副業による雑所得や不動産所得、あるいは株式の譲渡所得(特定口座源泉徴収ありを除く)など、自社以外に所得を持っていた場合、年末調整の時点では会社側はその従業員の他の所得を知ることができません。
具体例を挙げると、自社での給与収入が1,000万円(合計所得約805万円)の従業員がいたとします。会社は「所得900万円以下」と判断し、児童特別控除38万円を適用して年末調整を完了させるでしょう。しかし、もしその従業員が副業で200万円の所得を得ていた場合、真の合計所得金額は1,005万円(805万円プラス200万円)となり、本来の控除額はゼロ円です。この結果、年末調整の計算は「誤り」となり、従業員は38万円の控除を過大に受けたことになります。この修正は、従業員本人が翌年に確定申告を行うことでしか解消できません。これは、年末調整という「ワンストップで納税を完結させる」制度の根幹を揺るがす重大な問題と言えます。
月次源泉徴収と年末調整の乖離問題
令和7年の年末調整において実務担当者が直面するもう一つの重大な課題が、月次の源泉徴収と年末調整との乖離です。2025年1月からの毎月の給与計算では、源泉所得税は「源泉徴収税額表(月額表)」に基づいて計算されます。この税額表は、給与額と扶養親族等の数という2つの要素で税額が決定される比較的シンプルな仕組みです。
ここで問題となるのは、2025年1月時点では従業員の年間の合計所得金額が確定していないという点です。そのため、国税庁が発行する源泉徴収税額表が、この新しい複雑な所得制限(900万円、950万円、1,000万円の各ライン)を反映したロジックに変更されることは現実的に困難です。仮に税額表が改正されなかった場合、どのような事態が生じるでしょうか。
たとえば、合計所得1,100万円(給与収入1,300万円超)で17歳の子どもが1人いる従業員の場合、2025年の年末調整では控除額がゼロになることが確定しています。しかし、毎月の給与計算では、システムがこの所得制限を判定できないため、従来通り扶養親族1名としてカウントし、税額を計算し続ける可能性があります。この場合、この従業員は2025年の1年間を通じて、毎月「本来よりも少ない税額」しか天引きされていない状態が続くことになります。
そして、その1年分の納税不足額が、2025年12月の年末調整の最終計算で一括精算されることになるのです。合計所得1,000万円超の納税者(所得税率20%以上)が38万円の控除を失うということは、単純計算で7万6千円以上の所得税(プラス住民税3万8千円)の追徴が、12月の給与(または1月の給与)で発生することを意味します。これは従業員にとってまさに「ショック」であり、経緯を知らない従業員からは「給与計算のミスではないか」というクレームが発生する事態が容易に予想されます。このような事態を防ぐためにも、年末調整の変更点について事前に十分な周知を行うことが不可欠です。
申告書様式の変更と実務への影響
2025年の秋(10月から11月)に行う年末調整の書類配布・回収業務において、実務担当者は大きな変化に直面することになります。すべての計算の起点となる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が、2025年(令和7年分)から様式変更されることは確実です。この新しい申告書の変更点を事前に把握し、対策を講じることが重要です。
予想される様式変更点として、まず「特定扶養親族」欄の変更が挙げられます。現行の様式では19歳から22歳が特定扶養親族として区分されていますが、16歳から18歳の子どもの扱いを明記する欄が変更されるか、注意書きが追記されることが予想されます。従業員は「昨年までと同様に」17歳の子どもを扶養親族として記入してしまう可能性が極めて高く、記入ミスの多発が懸念されます。
また、新設される「児童特別控除」の申告欄が設けられる可能性があります。16歳から18歳の子どもがいる場合、扶養控除とは別枠で、この児童特別控除を申告するための新しい欄が設けられることが想定されます。さらに重要なのが、「本人の合計所得金額の見積額」の記入欄です。従業員は、この申告書(通常11月に提出)の時点で、本年(2025年1月から12月)の合計所得金額の見積額を自ら計算し、記入することを求められる可能性が高いです。なぜなら、その所得額によって控除額(38万円、25万円、13万円、ゼロ円)が決まるからです。
これらの様式変更により、実務への影響は甚大なものとなります。従業員の記入ミスが多発することは避けられず、習慣的に旧様式と同じように記入してしまうケースが増えるでしょう。また、「合計所得金額の見積額」を正確に計算できる従業員は限られているため、不正確な申告が増える可能性があります。
検算業務の負担も大幅に増加します。これまでの扶養控除申告書のチェックは、子どもの年齢と生年月日が合っているか程度の単純なものでした。しかし2025年からは、従業員が申告した合計所得金額の見積額と、実際に会社が支払った(または支払う予定の)給与額から計算した合計所得金額と、その従業員が申告している児童特別控除の額が、法的に整合しているかを、全従業員分について一件ずつ突合・検証する必要が発生します。もし合計所得1,100万円の従業員が、誤って「所得900万円以下」として38万円の控除を申告し、実務担当者がそれを見逃して計算を完了させた場合、それは誤った年末調整となり、税務調査等で指摘されるリスクとなります。
給与計算システムの対応と確認事項
今回の令和7年度税制改正は、税率や控除額の数値変更ではなく、納税者の所得に応じて控除ロジックそのものを分岐させるという根本的なロジックの変更です。したがって、給与計算システムのアップデートが必須となります。実務担当者は、自社が利用するシステムのベンダーに対し、いくつかの重要な点を確認し、厳密なテスト計画を立てる必要があります。
まず確認すべきは、令和7年度税制改正(扶養控除改正)に対応するアップデートのリリース予定日です。具体的に何月何日を予定しているかを明確にしておく必要があります。次に、新システムにおいて16歳から18歳の扶養控除(38万円)が廃止されるロジックが組み込まれていることを確認します。さらに、新設される児童特別控除の計算ロジックが実装されているか、具体的には所得額に応じた4階層(38万円、25万円、13万円、ゼロ円)の分岐ロジックが正しく動作するかを検証することが重要です。
特に重要なのは、その所得判定に使う合計所得金額がどのデータを参照しているかという点です。自社の給与データだけを使用するのか、それとも従業員が申告書に記入した見積額を入力するフィールドが新設されるのか、この点を明確にしておく必要があります。ベンダー側は「自社の給与データのみで判定する」という仕様で開発している可能性が高いですが、実務担当者はその仕様上の限界を正確に認識した上で、運用(従業員への周知)でカバーする体制を構築しなければなりません。
また、従業員が副業などで他所得を持っていた場合、システムがどのように対応することを想定しているかについても確認が必要です。新しい扶養控除等申告書の様式に対応した、電子申告(Web年末調整)の画面レイアウトの変更点とそのリリースタイミングについても、事前に把握しておくことが望ましいでしょう。
具体的なケーススタディによる影響分析
今回の改正の影響を正確に理解するために、具体的な計算例を見ていきましょう。全員が17歳の子ども1人を扶養している3名の従業員(A氏、B氏、C氏)の、2024年(旧制度)と2025年(新制度)の計算がどう変わるかを比較します。
ケース1:A氏(合計所得金額800万円)の場合を見てみましょう。2024年の年末調整(旧制度)では、A氏の所得は800万円で、17歳の子どもがいるため扶養控除として38万円が控除されます。2025年の年末調整(新制度)では、A氏の所得は同じく800万円です。まず、17歳の子どもの扶養控除38万円が廃止されますが、A氏の所得は900万円以下のため、補填措置である児童特別控除が38万円適用されます。結論として、失った控除(38万円)と得た控除(38万円)が同額のため、A氏の課税所得は変わらず、税額への影響はありません。
ケース2:B氏(合計所得金額920万円)の場合を考えます。2024年の年末調整では、B氏の所得は920万円で、17歳の子どもがいるため扶養控除として38万円が控除されます。2025年の年末調整では、まず扶養控除38万円が廃止されます。B氏の所得は「900万円超950万円以下」の階層に該当するため、児童特別控除は25万円しか適用されません。結論として、2024年比で控除額が13万円(38万円マイナス25万円)減少し、B氏の課税所得は13万円増加して、実質的な増税となります。
ケース3:C氏(合計所得金額1,100万円)の場合が最も深刻です。2024年の年末調整では、C氏の所得は1,100万円で、17歳の子どもがいるため扶養控除として38万円が控除されます。この時点では、基礎控除の所得制限はありますが、扶養控除自体に所得制限はありませんでした。2025年の年末調整では、まず扶養控除38万円が廃止されます。C氏の所得は「1,000万円超」の階層に該当するため、児童特別控除はゼロ円となります。結論として、38万円の控除が完全に失われ、C氏の課税所得は38万円増加して、最も大きな税負担増となります。さらに、C氏のようなケースでは、月次の源泉徴収が不足しているため、2025年12月の年末調整で数万円単位の追徴が発生する可能性が極めて高いのです。
従業員コミュニケーションの重要性
ここまでの分析で明らかなように、2025年の年末調整は、特に所得900万円超や1,000万円超の従業員にとって、「会社による一方的な増税」あるいは「給与計算のミス」と誤解される危険性が非常に高いです。実務担当者にとって、システムの改修や申告書のチェックという技術的側面以上に重要かつ困難なタスクが、この「人的側面」の対応、すなわち従業員コミュニケーション戦略です。
給与計算部門が、怒れる従業員からの問い合わせ窓口となって疲弊することを避けるためには、先手必勝の広報が不可欠です。タイミングとしては、絶対に2025年12月の給与明細配布時まで待ってはいけません。その時点では手遅れです。最初の広報は、2025年11月の年末調整書類の配布時が最適です。新しい申告書とともに、「なぜ様式が変わり、何が起こるのか」を説明する文書を添付することが重要です。
責任の明確化も重要なポイントです。「会社の方針で税金が上がった」という誤解を絶対に防ぐ必要があります。「国の税制改正(令和7年度税制改正)に基づき、法律に従って計算方法が全国一律で変更される」という事実を強調することが大切です。また、平易な言葉の使用も心がけるべきです。児童特別控除や合計所得金額といった専門用語を避け、「国のルール変更により、お子様(16歳から18歳)の税金計算の方法が変わります」「ご自身の年間の所得によって、控除額が変わる仕組みになりました」といった、わかりやすい言葉で説明することが効果的です。
従業員への周知内容としては、何が変わるのかを明確に伝える必要があります。国の児童手当の拡充(高校生年代までの支給延長)に伴い、これまで16歳から18歳の子ども1人につき適用されていた扶養控除(38万円)が2025年から廃止されること、その代わり新しい児童特別控除という仕組みが始まるが、これは納税者本人の年間の合計所得金額に応じて控除額が変わる(またはゼロになる)仕組みであることを説明します。また、2025年12月の年末調整への影響として、所得が900万円を超える(特に1,000万円を超える)方で16歳から18歳の子どもがいる場合、控除額の減少に伴い最終的な手取り額が例年より大幅に減少する(または追徴が発生する)可能性があることを明確に伝えます。これは法律に基づく正しい計算結果であり、計算ミスではないことをあらかじめ周知しておくことが重要です。
令和7年年末調整に向けた実務アクションプラン
今回の扶養控除改正は、単なる税制改正ではなく、年末調整の実務フローそのものを変革する業務改革の要求と言えます。基礎控除の見直しという誤解から脱却し、正確な実務対応計画を立てることが求められます。
要点をまとめると、まず「基礎控除」ではなく「扶養控除(16歳から18歳)」の改正であるという点を正確に認識することが重要です。従来の38万円控除は廃止され、新しい児童特別控除は所得制限付きであり、1,000万円超でゼロになります。所得1,000万円超の従業員は、月次で納税不足となり、12月の年末調整で一括追徴が発生する可能性があります。申告書の様式変更とシステムのロジック変更が、実務上の2大失敗ポイントとなります。
時系列のアクションプランとしては、まず2025年8月までの早い段階でシステムベンダーとの協議を行います。前述のベンダーへの確認リストを元に、システムの改修スケジュールと仕様(特に所得判定の方法)を確定させます。テスト環境の提供を要求し、A氏、B氏、C氏の3パターンで計算が正しく行われるかを実機検証することが重要です。
2025年9月までには、給与計算チームの内部研修を実施します。実務担当者全員が、今回の改正のロジック(特に4階層の所得制限)を暗記し、従業員に説明できるレベルまで訓練することが求められます。
2025年10月までには、従業員コミュニケーションの準備を完了させます。前述のサンプル素材を参考に、自社の実情に合わせた従業員向け説明資料およびFAQ(想定問答集)を作成し、人事部や法務部の承認を取得します。
2025年11月には、申告書の配布と広報の実施を行います。国税庁から発表される新しい扶養控除等申告書の様式(電子申告画面)を精査し、書類配布と同時に準備した説明資料を一斉にアナウンスします。
2025年12月には、年末調整の計算と特別検算を実施します。今年は、例年よりも検算のために2倍の工数を確保する覚悟が必要です。特に、16歳から18歳の子どもを申告しているかつ合計所得が900万円を超えている従業員を全員リストアップし、所得判定と控除額が正しいかを手動で再検証するプロセスを組み込むことが重要です。
2026年1月には、問い合わせ対応フェーズに入ります。給与明細配布後、予測される問い合わせ(特にC氏のような追徴が発生した従業員から)に対応します。ここでの対応は「申し訳ございません(計算ミス)」ではなく、「ご説明します(国のルール変更です)」であることを徹底します。
令和7年の年末調整は、実務担当者の専門性と準備力が真に問われる年となります。システムの限界を認識し、それを人間の知恵(コミュニケーションと検算)で補うことこそが、この未曾有の改正を乗り切る唯一の道です。年末調整 令和7年 変更点について正確な知識を持ち、基礎控除 見直しという表現の真の意味を理解することで、適切な対応が可能となるでしょう。


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