お菓子帳がブームになっている理由は、デジタル社会に暮らすZ世代後半からα世代の若者たちが、アナログな手触りや創作の喜びを求める「回帰現象」が起きているためです。このブームの背景には、平成時代のシール帳文化の継承、親子間コミュニケーションの促進、そしてサステナビリティ意識の高まりという複合的な要因が存在しています。さらに、お菓子帳の次に来るトレンドとして、タグ帳やラベル帳への拡張、デジタル技術との融合、推し活との連携など、さまざまな進化の方向性が注目されています。
この記事では、お菓子帳ブームの定義から、シール帳との関係性、ブームが起きた社会的・心理的な理由、そして今後のトレンド予測まで幅広く解説していきます。お菓子帳に興味を持ち始めた方はもちろん、子供の遊びの変化に関心がある親世代の方にも役立つ内容をお届けします。

お菓子帳とは?ブームの概要と定義
お菓子帳とは、グミやチョコレート、キャンディ、スナック菓子などの空きパッケージを収集し、ノートやバインダーにスクラップブッキングの手法で貼り付けて装飾していく創作活動およびその成果物のことです。2020年代半ばから、Z世代後半やα世代と呼ばれる若年層の間で爆発的な広がりを見せました。
お菓子帳は、単にパッケージを保存するだけのファイルではありません。自分自身の消費履歴を視覚的にアーカイブする行為であり、パッケージデザインという既存のアートワークを再構築するクリエイティブなプロセスです。かつて「シール帳」が担っていた役割を現代的にアップデートした存在と位置づけられますが、収集対象がお菓子のパッケージという身近で生活に密着した素材にシフトしている点が、最大の特徴となっています。
一見すると子供の工作や収集趣味の延長に見えますが、その深層には現代社会特有の心理的欲求や世代間コミュニケーションの変容、環境意識の高まりなど、複合的な要因が絡み合っています。お菓子帳ブームの広がりを後押ししたのがSNSの存在です。YouTubeやTikTok、Instagramでは、お菓子帳の作り方やコーディネート術を紹介する動画が数多く投稿されており、視聴した子供たちの間で「自分も作ってみたい」という意欲が連鎖的に広がりました。動画コンテンツを見て実際に手を動かすという、デジタルからアナログへの橋渡しが自然に行われている点も、このブームの現代的な特徴です。
お菓子帳ブームの背景にあるシール帳文化との深い関係
お菓子帳ブームは、1990年代から2000年代初頭にかけて小学生女子を中心に社会現象となった「シール帳」文化の直系の子孫にあたります。現代のお菓子帳は、シール帳の遺伝子を受け継ぎつつ、時代に合わせたアップデートが施された「ネオ・コレクション文化」なのです。
平成時代のシール帳文化がお菓子帳ブームに受け継がれた理由
平成時代、子供たちはシール帳と呼ばれる専用バインダーを持ち歩き、ファンシーショップや駄菓子屋で購入したシールを貼り付けていました。このとき重要だったのは、シール帳が単なるコレクションではなく、友人との「交換」を前提としたコミュニケーションツールとして機能していた点です。
当時人気を博していたのは、「タイルシール」や「カプセルシール」といった、視覚的な可愛らしさに加えて触覚的なギミックが施されたシールでした。ぷっくりとした立体感や中にビーズが入った独特の質感は、触覚に訴えるエンターテインメントとして機能しており、この魅力は現代の子供たちにとっても変わらず受け入れられています。
お菓子帳で使用されるグミやキャンディのパッケージにも、ジッパー付きの袋やホログラム加工、マット加工といった多様なテクスチャがあり、シール帳時代の「触って楽しい」という体験が形を変えて継承されているのです。
お菓子帳が親子二世代で楽しめるコミュニケーションツールになった背景
現在お菓子帳やシール帳を楽しんでいる子供たちの親世代は、まさに平成のシール帳ブームを原体験として持つ世代です。このため、お菓子帳は子供だけの遊びにとどまらず、親子が共有できるコンテンツとして機能しています。
平成レトロなデザインは、親にとっては「懐かしさ」を、子供にとっては「新しさ」を感じさせるものです。この感覚の交錯が家庭内での会話を自然に促進し、親子の絆を深める触媒となっています。
このように平成レトロブームが社会全体に広がる中で、「平成女児売れ」という言葉がトレンドワードとして浸透したことも、お菓子帳人気を後押しする大きな要因となりました。2025年の女子高生トレンドランキングでは「平成ギャル」や「平成女児」といったキーワードが上位にランクインしました。株式会社with tの調査レポートでも、シール帳は定番アイテムとして確固たる地位を築いていることが明らかになっています。この事実は、若者たちが最新の流行を追いかける一方で、安定した価値観やノスタルジーを求める心理的バランスの表れとも解釈できます。
お菓子帳ブームが起きた理由と社会的・心理的要因
お菓子帳ブームの理由は、デジタルネイティブ世代が「物質性」や「身体的感覚」を求める心理と、交換を通じた社会性の育成という教育的価値が融合した結果です。ここでは、ブームを支える心理的・社会的な要因について詳しく見ていきます。
デジタル社会における「アナログ回帰」がお菓子帳ブームの理由に
スマートフォンやSNSが生活のインフラとして完全に定着した社会で、画面をスワイプするだけでは得られない感覚を求める動きが強まっています。SNS疲れや情報過多の反動として、手作業による「静かな創作」や「実物に触れる体験」への回帰が若者の間で広がっており、お菓子帳ブームはこの大きな潮流の一端に位置しています。お菓子帳は、紙の質感や厚み、パッケージを切るときの抵抗感といった身体的な感覚を伴う創作活動であり、デジタルでは味わえない「手触りのあるエンターテインメント」として支持されています。
さらに、お菓子帳作りは高度な専門技術を必要としません。必要なものは、お菓子の空き箱、画用紙やコピー用紙、木工用ボンド、両面テープ、ハサミ、カッター、定規といった基本的な文房具だけです。このアクセシビリティの高さがブームの底上げに大きく寄与しています。高価な画材や特別なソフトウェアがなくても、コンビニエンスストアでお菓子を買えばすぐに創作活動を始められるのです。
SNS上では作り方のチュートリアル動画も多数共有されており、空き箱の色とメモ用紙の色をコーディネートする方法や、グラデーションを作るテクニックなど、デザイン的な工夫も容易に学ぶことができます。
お菓子帳の交換ルールが育むコミュニケーション能力と社会性
お菓子帳やパッケージの交換において特筆すべきは、そこに自然発生的に設けられた「ルール」の教育的価値です。多くのコミュニティでは、シールやパッケージの交換に「おひとり様1枚のみ」というルールが存在します。
安価なシールや菓子を大量に購入することは難しくない時代に、あえて「1枚」に限定することで「選択」という重みが生まれます。限られた枚数の中から相手に渡す1枚を選ぶ過程で、子供たちは「相手が何を喜ぶか」を想像する力や、自分にとって最も価値あるものを見極める決断力を養っています。これは、無限にコピー可能なデジタルデータのやり取りでは得難い体験です。物理的な「モノ」の希少性が、教育的なリソースへと転化されている好例と言えます。
シール交換やパッケージの交換は、高度な交渉の場でもあります。互いのコレクションの価値を認め合い、対等な条件で交換を成立させるプロセスは、初期的な商取引のシミュレーションとも言えるでしょう。互いに価値を尊重し合う文化が根付いており、お菓子帳は単なる遊び道具を超えて、他者との関係性を構築するためのメディアとして機能しているのです。
お菓子のパッケージが収集対象に選ばれる理由とデザインの魅力
お菓子のパッケージが収集対象として選ばれた理由は、日本のお菓子産業が到達したパッケージデザインの圧倒的な質の高さと、環境意識の変化によるアップサイクル志向の2つです。
日本のお菓子パッケージデザインがお菓子帳ブームを支える理由
日本のお菓子メーカーが市場に送り出す製品のパッケージは、極めて洗練されています。「ピュレグミ」や「カンロ飴」に代表されるように、色彩、フォント、素材感に至るまで計算し尽くされたデザインは、それ自体がポップアートとしての強度を持っています。
子供や若者たちは、お菓子を食べ終わった後に残るパッケージをゴミとして処理することに抵抗を覚え、その美しさを保存したいという純粋な欲求から収集を始めています。現代の子供たちにとって、身近なお菓子のパッケージは「コレクションしたくなるレアカード」のような感覚で受け止められており、特に期間限定パッケージやコラボデザインは希少価値の高い存在として人気を集めています。特にグミやキャンディのパッケージに見られるジッパー付きの袋、ホログラム加工、マット加工といった多様なテクスチャは、「触覚的な楽しさ」を刺激する要素となっています。これらを切り抜いてノートに貼ることで、視覚的にも触覚的にもリッチなページが完成するのです。
パッケージデザインが持つ記号的価値にも注目すべきです。お菓子のパッケージは、色彩やキャラクター、ブランドロゴなど、さまざまな視覚情報が凝縮された「小さなアート作品」です。これらを切り抜いてレイアウトし直すことで、既存のアートワークを再解釈するコラージュ作品が生まれます。お菓子帳は、消費文化の中に埋もれたデザインの価値を再発見する行為でもあるのです。
サステナビリティとアップサイクルの実践としてのお菓子帳
お菓子帳ブームを現代的な現象として特徴づけているのが、アップサイクル(創造的再利用)の文脈です。カンロ株式会社も、パッケージを単なる包装資材ではなく、雑貨や文房具へと生まれ変わらせる素材として捉え直す取り組みを進めています。
株式会社ペーパーパレードのようなデザインファームとの協働により、お菓子のパッケージをバッグやペンケースへと加工するプロジェクトが展開されています。また、明治の「プチアソート」の空き箱を利用してミニメモパッドを作る手法なども具体的に共有されており、消費者が自らの手でゴミを価値あるものへと変えるプロセスが体系化されつつあります。
お菓子パッケージをゴミとして捨てず、創造的に再利用する行為は、楽しみながら環境意識を育む実践の場となっています。SDGsへの関心が高まる現代において、お菓子帳は子供たちが身近なところからサステナビリティを体感できる貴重な活動なのです。
お菓子帳の次に来るトレンド予測とシール帳文化の進化
お菓子帳ブームが示す「アナログへの回帰」「パーソナライズ」「サステナブル」という3つの軸をもとに次のトレンドを予測すると、タグ帳やラベル帳への拡張、デジタル技術との融合、推し活との連携が有力な候補として浮かび上がります。
シール帳・お菓子帳の次に来る「タグ帳」「ラベル帳」の可能性
お菓子パッケージにとどまらず、洋服のタグやペットボトルのラベル、フルーツに貼られたシールなど、生活の中に溢れるあらゆる「商業的意匠」が収集対象へと拡大していく可能性があります。これらは「日常の断片」をアーカイブする活動であり、ライフログとしての側面を強めていくと考えられます。
特に注目されるのは、輸入食品や海外ブランドのタグなど、デザイン性の高い素材です。海外のパッケージデザインは日本とは異なるテイストを持っており、コラージュの幅を広げる新たなアイテムとなる可能性を秘めています。日常生活のあらゆる場面に転がっている「紙ごみ」が、クリエイティブな素材として再評価される流れは、お菓子帳ブームが切り拓いた道の延長線上にあります。
デジタルとアナログのハイブリッド化がお菓子帳ブームの次の段階に
現在のお菓子帳はアナログ完結型ですが、今後はデジタル技術との融合が進むことが予測されます。例えば、切り抜いたパッケージを専用アプリでスキャンすると、そのお菓子のCM動画が再生されたり、キャラクターがAR(拡張現実)で飛び出してきたりするような仕組みが考えられます。
これにより、「物理的に保存する楽しみ」と「デジタルで遊ぶ楽しみ」が統合され、コレクションの価値が多層化していきます。アナログの手触り感を大切にしながらも、テクノロジーを活用して体験を拡張するこのアプローチは、デジタルネイティブ世代にとって自然な進化の方向性です。物理的なお菓子帳がデジタルの入り口となり、デジタルコンテンツがアナログ収集のモチベーションを高めるという好循環が生まれる未来が見えてきます。
「推し活」とお菓子帳の融合が加速する背景と理由
Z世代の消費行動の中心にある「推し活」と、お菓子帳の融合がさらに進む兆しが見えています。メンバーカラーに合わせたお菓子のパッケージだけを集める「色別お菓子帳」や、推しのアクリルスタンドを収納するためのカスタムお菓子ポーチの制作など、コレクションの目的が「自己表現」から「推しへの愛の表現」へとシフトしていく傾向が表れています。
推し活との融合により、お菓子帳は「好きなものを集める」だけでなく「好きな人やキャラクターへの想いを形にする」ツールへと進化しています。この変化は、コレクションに感情的な深みを与え、作品としての価値をさらに高めることにつながっています。
平成レトロの再燃とお菓子帳ブームのトレンド変化
2025年のトレンドキーワードとして注目された「ラブブ」や「アサイー」といった要素は、お菓子帳の中身の変化を示唆しています。キャラクター性の強いパッケージや、健康志向・カフェ志向の食品パッケージが新たな「レアアイテム」として収集対象になりました。
また、「平成ギャル」の再燃に伴い、当時の派手なデコレーション文化がお菓子帳のデザインにも波及しています。ラインストーンやラメを多用した華やかなお菓子帳が登場する可能性もあり、デコ電に代表される平成の装飾文化がお菓子帳という新しい器の中で復活する兆しが見られます。
高度なハンドクラフトへ昇華するお菓子帳の未来
お菓子帳作りで培われた工作スキルは、より高度な手芸へと発展する道が開かれています。パッケージをビニールでコーティングして縫製する「お菓子パッケージポーチ」や、レジンで固めてアクセサリーにするなど、平面のノートから立体的な実用品への移行が進んでいます。
カンロ株式会社が展示販売したアップサイクル雑貨は、このトレンドの先駆けです。今後は個人レベルでも同等のクオリティを目指すクリエイターが増加すると予想されます。お菓子帳で「貼る」ことから始まった創作活動が、「縫う」「固める」「組み立てる」といったより多彩な技法へと広がり、一つの本格的なクラフトジャンルとして確立されていく未来が見えています。こうした立体作品の制作過程もSNSで共有されることで、新たな挑戦者を刺激し、クラフトコミュニティの裾野がさらに広がっていく好循環が期待されます。
お菓子帳ブームの理由と背景のまとめ
お菓子帳ブームは、単なる子供の遊びの流行にとどまらず、現代社会における「消費」と「所有」の意味を問い直す文化的実践です。
第一に、デジタル社会における「身体性の回復」を象徴する現象です。スマートフォンの画面では得られない紙の質感や厚み、切るときの抵抗感といった身体的感覚が、子供たちにとって新鮮なエンターテインメントとなっています。
第二に、世代間コミュニケーションの架け橋として機能しています。平成のシール帳文化が形を変えて子供世代に継承されることで、親子の間に共通の話題と価値観が生まれ、世代間の対話が促進されています。「平成女児売れ」に代表されるレトロブームの波に乗り、親世代の懐かしさと子供世代の新鮮さが交差する独自の文化圏が形成されているのです。
第三に、サステナビリティ教育の実践の場です。お菓子パッケージを創造的に再利用する行為は、楽しみながら環境意識を育む草の根活動としての側面を持っています。
そしてお菓子帳の「次」に来る未来では、この文化がより個人のアイデンティティと結びつき、デジタル技術や推し活文化を取り込みながら独自の進化を遂げていくでしょう。お菓子帳は、消費されたモノの終着点ではなく、思い出と創造性が詰め込まれた世界に一つだけの宝物なのです。身近な幸せを見つけてそれを形に残すこと、手間をかける喜びを思い出させてくれるこのブームは、効率とスピードが重視される現代社会に向けた大切なメッセージを投げかけています。お菓子帳のページをめくるたびに蘇る甘い記憶と、工夫を凝らしたデザインの数々は、日常の中に隠れた小さな宝物を見つけ出す楽しさを私たちに教えてくれるのです。

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