航空機内モバイルバッテリー使用禁止はいつから?施行時期と新ルールを解説

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航空機内でのモバイルバッテリー使用禁止は、2025年7月8日の日本における収納棚への保管禁止・充電時の常時監視義務化と、2026年1月の韓国系航空会社による機内使用全面禁止という二段階で施行されました。リチウムイオン電池の発火リスクから乗客の安全を守ることを目的としたこれらの規制は、航空旅行における新たな常識として既に定着しています。この記事では、航空機内におけるモバイルバッテリー規制の施行時期と具体的な内容、背景となった事故や技術的な発火メカニズム、持ち込み基準の数値、そして旅行者が搭乗前に押さえておくべき実践的な対応策まで詳しく解説します。

航空機内のモバイルバッテリー使用禁止とは

航空機内のモバイルバッテリー使用禁止とは、飛行中にモバイルバッテリーによる充電行為を制限、または全面的に禁止する航空安全規制のことです。2025年から2026年にかけて段階的に導入が進み、日本と韓国では異なるアプローチが採用されました。日本では2025年7月8日から「監視下での使用」を条件とする規制が施行され、韓国では2026年1月に「使用の完全禁止」という更に踏み込んだ措置が取られています。

現代の航空旅行において、モバイルバッテリーはスマートフォンの高性能化や電子チケットの普及に伴い、パスポートや航空券と並ぶ必需品としての地位を確立しました。しかし、リチウムイオン電池を内蔵するモバイルバッテリーは、航空安全の観点からは危険物として扱われています。上空約1万メートルという逃げ場のない密閉空間で発火事故が起これば、それは乗客全員の命に関わる重大事態に直結します。こうした深刻なリスクを背景に、各国の航空当局と航空会社は規制の強化に踏み切りました。

モバイルバッテリー規制の施行時期はいつからか

航空機内のモバイルバッテリー規制は、2025年7月と2026年1月の二つの時期に大きな転換点を迎えました。それぞれの施行時期と規制内容を整理すると、以下の通りです。

施行時期対象地域・航空会社規制内容
2025年7月8日日本(国内定期航空運送事業者)収納棚への保管禁止・充電時の常時監視義務化
2026年1月22日チェジュ航空機内でのモバイルバッテリー使用全面禁止
2026年1月26日大韓航空・アシアナ航空・ジンエアー・エアプサン・エアソウル機内でのモバイルバッテリー使用全面禁止

まず日本が「管理しながら使う」方向で規制を設け、その後韓国が「一切使わせない」という更に厳しい方向へ舵を切った流れです。日本の規制は乗客を安全運航のパートナーとして信頼する性善説的なアプローチであったのに対し、韓国の規制はヒューマンエラーの可能性を排除して物理的にリスクを断つという苦渋の判断でした。

2025年7月8日に施行された日本の新ルールの内容

日本におけるモバイルバッテリーの取り扱いは、2025年7月8日を境に大きく変わりました。この日、国土交通省航空局は国内の定期航空運送事業者に対して新たな運用指針を適用し、客室内の安全基準を強化しています。国土交通省と定期航空協会が連携して打ち出したこの新ルールの核心は、「収納棚への保管禁止」と「充電時の常時監視義務化」の二点に集約されます。

収納棚への保管禁止は、モバイルバッテリーを乗客の物理的な支配下に置くことを義務付けるルールです。2025年7月8日以前、多くの乗客はモバイルバッテリーが入ったバッグを座席上の共用収納棚に無造作に収納していましたが、この行為は明確に禁止されることになりました。バッテリーは手元や座席下など、常に状態が確認できる場所で管理しなければなりません。

充電時の常時監視義務化は、機内でモバイルバッテリーを使ってスマートフォンなどを充電する場合や、座席備え付けの電源からモバイルバッテリー自体を充電する場合に、常にその状態を確認できる状況を維持しなければならないというルールです。睡眠中やトイレに立つ際には必ずケーブルを抜いて充電を中止する必要があり、「見張れる時だけ使う」が鉄則となりました。

この規制変更の本質は、乗客を「潜在的な被害者」から「初期消火のための監視者」へと役割転換させるものです。乗客一人一人を安全運航のパートナーとして信頼し、監視の役割を委ねるという点が日本のアプローチの大きな特徴です。

収納棚が危険とされる理由

収納棚が禁止された背景には、航空機火災特有の「タイムライン」の問題があります。リチウムイオン電池が異常をきたし熱暴走に至る過程では、発火の直前に予兆が現れます。具体的には、急激な発熱、異臭、そして「シュー」という音を伴うガスの噴出です。

もしモバイルバッテリーが頭上の収納棚にある密閉されたカバンの中にあった場合、この初期段階の予兆は誰にも気づかれません。煙が棚の隙間から漏れ出し、客室乗務員や乗客が異変に気づいた時には、すでに内部で火災が拡大し、周囲の衣服や他の荷物に延焼している可能性が高いのです。さらに、満席の機内で乱雑に積み重ねられた荷物の中から、熱を発している特定のバッグを即座に特定して取り出し、消火活動を行うことは極めて困難であり、その数秒の遅れが致命的な結果を招きかねません。

一方、乗客がバッテリーを膝の上や前の座席のポケット、足元のバッグに入れていれば、異常な発熱や異臭に本人がすぐに気づくことができます。初期段階で発見できれば、客室乗務員が迅速に消火ボトルや専用の耐火バッグを使用して対処でき、大惨事を未然に防ぐことが可能になるのです。

2026年1月に施行された韓国系航空会社の使用全面禁止の詳細

韓国の航空業界は2026年1月、日本の「監視下での使用容認」よりも更に厳しい「機内での使用全面禁止」措置を実施しました。ここでいう使用禁止とは、モバイルバッテリーの機能を物理的に発揮させること、つまり電気を出し入れする行為のすべてを禁止するものです。

禁止対象となるのは、モバイルバッテリーとスマートフォンをケーブルで接続して充電する行為、モバイルバッテリーを使用してタブレットやPCを駆動させる行為、機内の座席電源からモバイルバッテリー自体を充電する行為、そしてワイヤレス充電機能を用いた給電です。コードを繋いでいるだけでも客室乗務員から注意を受ける可能性があるため、誤解を招く行動は避けるべきです。

重要な点として、これは「持ち込み禁止」ではありません。乗客は依然としてモバイルバッテリーを機内に持ち込むことができますが、搭乗した瞬間から降機するまでの間は単なる荷物として手元で保管しなければならず、電源としての役割を果たすことは一切許されないのです。

この動きを主導したのは韓進グループとLCC各社です。2026年1月22日にチェジュ航空が先行して実施し、続く1月26日には大韓航空、アシアナ航空、ジンエアー、エアプサン、エアソウルが一斉に同調して使用禁止措置を適用しました。

韓国の規制強化の引き金となった金海空港の発火事故

韓国がこれほど厳しい規制に踏み切った直接的な引き金は、2025年1月に韓国・金海国際空港で発生した航空機内での発火事故です。エアプサン機内において乗客が持ち込んだモバイルバッテリーから発火する事案が発生し、機内という密閉空間におけるリチウムイオン電池のリスクが改めて浮き彫りになりました。原因としてはバッテリーの品質問題に加え、充電中の過負荷や物理的な圧迫が疑われています。

この事態を重く見た韓国国土交通部および各航空会社は、乗客による「監視」だけではリスクを管理しきれないと判断しました。発火の主要因の一つである通電(充放電)そのものをフライト中は完全に遮断するという、ゼロリスクに近いアプローチを選択したのです。

リチウムイオン電池の熱暴走と航空機内特有のリスク

規制の厳格化を理解するには、航空当局が何を恐れているのか、その技術的な背景を把握する必要があります。リチウムイオン電池は高いエネルギー密度を持つ反面、本質的な不安定さを内包しています。

リチウムイオン電池のトラブルで最も恐れられているのが熱暴走(サーマル・ランウェイ)と呼ばれる現象です。電池内部で発生した熱がさらなる化学反応を誘発し、温度上昇が止まらなくなる連鎖反応のことで、一度始まると電池の温度は数秒以内に数百度から千度近くまで上昇し、激しい炎と有毒なガスを噴出します。熱暴走の引き金となるのは主に短絡(ショート)で、電池のプラス極とマイナス極が本来隔てているセパレータを突破して直接接触する現象です。外部からの衝撃によるセパレータの物理的破損、製造不良による金属片の混入、過充電や過放電で析出したリチウムの結晶がセパレータを突き破ることなどが原因となります。

航空機内がリスクを増幅させる三つの要因

航空機内は地上とは異なる特殊な環境下にあり、バッテリーの発火リスクを増幅させます。

第一に気圧変化の影響があります。航空機が巡航高度の約1万メートルを飛行中、客室内は与圧されていても地上より低い約0.8気圧程度(標高2,000〜2,500メートル相当)になります。気圧が下がるとパウチ型のモバイルバッテリーなどは内部のガスが膨張しようとし、老朽化や微細な損傷のあるバッテリーでは内部構造にストレスが加わってショートを誘発する可能性があります。

第二に物理的圧迫の問題があります。近年特に問題視されているのが「シートクラッシュ」と呼ばれる現象です。乗客が座席のリクライニングを操作した際、隙間に滑り落ちていたスマートフォンやモバイルバッテリーが座席の可動部に挟み込まれ、強烈な力で押し潰されることで即座に大規模な発火に至ります。

第三に充電中の発熱です。電池は充放電を行う際に化学反応熱を発生させますが、毛布の下やカバンの奥底など放熱の悪い環境に置かれていた場合、熱が蓄積してセパレータの溶融温度に達してしまう恐れがあります。韓国の使用禁止ルールは、この充放電による能動的な発熱リスクを根源から断つ措置といえます。

モバイルバッテリーの持ち込み基準と容量制限

航空機にモバイルバッテリーを持ち込む際の基準となるのは「ワット時定格量(Wh)」です。多くのバッテリーにはmAh(ミリアンペアアワー)しか表示されていませんが、「mAh ÷ 1,000 × 電圧(通常3.7V)」という計算式でWhを求めることができます。

容量区分mAh換算の目安持ち込み可否
100Wh以下約27,000mAh以下申請なしで持ち込み可能
100Wh超〜160Wh以下約27,001mAh〜43,000mAh最大2個まで持ち込み可能(事前申告が必要な場合あり)
160Wh超約43,000mAh超持ち込みも預け入れも一切不可

iPhoneを数回充電できる一般的なモバイルバッテリーの99%は100Wh以下に該当するため、容量面での心配は不要です。ただし、大型のノートPC用バッテリーやポータブル電源の最小クラスは100Whを超える場合があり、持ち込みは可能であっても最大2個までという個数制限が課されるほか、航空会社によっては事前の申告や承認が求められます。キャンプ用の大容量ポータブル電源は160Whを超えることが多く、いかなる理由があっても飛行機には持っていけません。

そして最も基本的かつ重大なルールとして、モバイルバッテリーをスーツケースなどの受託手荷物に入れて預けることは世界中のすべての航空会社で禁止されています。貨物室には乗員がおらず消火活動ができないため、万が一の発火時に機体全体を危険に晒すことになるからです。

持ち込み時に必要な短絡防止の梱包方法

容量の基準をクリアしていても、梱包方法が不適切だと空港で没収されるリスクがあります。端子部分が露出していると、カバンの中で鍵や小銭、他のバッテリーの端子と接触して短絡する危険があるためです。

短絡防止措置としては、購入時のパッケージ(ブリスターパック等)に入れたままにしておく方法、端子部分にビニールテープや絶縁テープを貼って塞ぐ方法、バッテリーを一つずつ個別のビニール袋(ジップロック等)に入れる方法、専用の布製ポーチやケースに収納する方法のいずれかを実施する必要があります。特に複数のモバイルバッテリーを持ち運ぶ場合は、バッテリー同士の端子が接触しないよう個別に分けて収納することが重要です。なお、これらの短絡防止措置はモバイルバッテリーだけでなく、カメラ用の予備バッテリーなどリチウムイオン電池を使用するすべての予備電池に共通して求められるルールです。

航空会社別の機内でのモバイルバッテリー取り扱い方法

搭乗後のモバイルバッテリーの取り扱いは、利用する航空会社によって対応が異なります。

日系航空会社であるJAL、ANA、スカイマークなどを利用する場合は、モバイルバッテリーを手荷物から出して前の座席のポケットに入れるか、足元のカバンのすぐ取り出せる位置に配置します。座席上の収納棚には絶対に入れてはいけません。充電を行う場合は、常に状態を確認できる体制を維持し、トイレに立つ際や睡眠中は必ずケーブルを抜いて充電を中止します。

韓国系航空会社である大韓航空、アシアナ航空、チェジュ航空、ジンエアー、エアプサン、エアソウルなどを利用する場合は、2026年1月以降、機内での充電行為は一切認められていません。モバイルバッテリーは電源として使うことなく手元で管理するだけの荷物となります。スマートフォンやタブレットで映画を楽しみたい場合は、搭乗前に空港のラウンジや充電スタンドで端末のバッテリーを100%まで充電しておくことが重要です。長時間フライトの場合は機内エンターテインメントの活用も検討するとよいでしょう。

世界各国の航空業界におけるモバイルバッテリー規制の最新動向

日本と韓国の動きは、世界的な規制強化の流れの一部です。国際航空運送協会(IATA)や国際民間航空機関(ICAO)も、リチウム電池に関する規定を年々アップデートしています。

IATAが発行する危険物規則書は世界の航空会社が準拠する基準となっており、2026年に発効した第67版においてもリチウム電池の規定は厳格化が続いています。旅客の手荷物に関しては「予備電池は機内持ち込みに限る」という大原則が世界共通で維持されており、これは貨物室で発火した場合の対処が困難であるという安全上の理由に基づいています。

アジアのハブであるシンガポールでも同様の傾向が見られ、スクートなどの航空会社は機内でのモバイルバッテリー使用に対して厳しい姿勢を示しており、違反者への罰則が科される可能性も示唆されています。米国のFAA(連邦航空局)や欧州のEASA(欧州航空安全機関)もリチウム電池の発火リスクには極めて敏感であり、バッテリーが取り外せない構造のスマートラゲージ(バッテリー内蔵バッグ)に対しては持ち込みも預け入れも一切禁止するという厳格な措置を講じています。

航空機内モバイルバッテリー規制の今後の見通し

2025年から2026年にかけての規制強化は、一時的な措置ではなく長期的なトレンドの始まりと位置づけられます。

現時点ではモバイルバッテリーの持ち込み自体を禁止する動きは主要航空会社では確認されていません。現代社会において通信機器がライフライン化しており、目的地到着後の移動や連絡にバッテリーが不可欠であることを航空業界も十分に理解しているためです。しかし、リチウムイオン電池の発火事故が今後も増加し続ける場合には、汎用モバイルバッテリーの持ち込み禁止や、航空会社が認定した安全基準を満たす製品のみ持ち込み可能といった更なる規制強化が行われる可能性も否定できません。

航空会社側の取り組みも進んでいます。最新の機材では全座席にUSB Type-CポートやAC電源を装備することが標準化しつつあり、機体から直接安全に電力を供給できる環境が整いつつあります。航空会社としては「電源は機内で提供するから、自前のバッテリーは使わないでほしい」という方向への誘導が今後ますます強まっていくでしょう。

バッテリー技術そのものの革新にも注目が集まっています。現在主流の液系リチウムイオン電池に代わり、発火リスクが極めて低い全固体電池の実用化が進んでいます。全固体電池がモバイルバッテリーに広く採用されるようになれば、現在の厳しい規制が緩和される可能性がありますが、その普及にはまだ数年から10年単位の時間が必要と予測されています。安全な空の旅を守るために、旅行者は最新の規制動向を常に確認し、搭乗前にしっかりと準備を整えることが大切です。

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