2026年4月1日から、自転車にも自動車と同様の「青切符」制度が導入されます。自転車の青切符制度とは、信号無視やながらスマホといった交通違反に対し、刑事罰ではなく行政上の反則金を課す仕組みのことです。気になる反則金の金額は違反内容に応じて3,000円から12,000円の範囲で設定されており、最も高額な「ながらスマホ」は12,000円、信号無視や逆走は6,000円となっています。
この記事では、2026年4月に施行される自転車の青切符制度について、対象となる違反行為や反則金の具体的な金額、手続きの流れ、免許への影響の有無まで詳しく解説します。自転車を日常的に利用されている方にとって、知っておくべき情報を網羅的にお伝えします。

自転車の青切符制度とは
自転車の青切符制度とは、正式には「自転車に対する交通反則通告制度」と呼ばれる制度です。2024年5月に成立した改正道路交通法に基づき、2026年4月1日から施行されることが確定しています。
これまで自転車の交通違反に対する処理は、現場の警察官による口頭注意や「指導警告票(警告カード)」の交付か、刑事手続きの対象となる「赤切符」の交付かという、極端な二者択一の状態にありました。赤切符は起訴されれば前科がつく重い処分ですが、信号無視や一時不停止といった比較的軽微な違反に対して刑事手続きを行うことは実務上の負担が大きく、実際に起訴される割合は極めて低い状況でした。その結果、検挙されても実質的なペナルティがないという「処罰の空白」が生まれ、違反者の遵法意識を低下させる原因となっていたのです。
青切符制度の導入により、軽微な違反には反則金という行政上のペナルティで処理を完了できるようになります。違反者には金銭的な負担による心理的な抑止力が働き、同時に刑事手続きという重い負担も回避できます。警察側にとっても事務処理が簡素化され、より効率的かつ積極的な取締りが可能になるという利点があります。
自転車の青切符が導入される背景
自転車の青切符制度が導入される最大の背景は、自転車関連事故の増加と、その多くが防ぎ得た事故であるという事実です。
警察庁の統計では、全交通事故に占める自転車関連事故の割合は増加傾向にあります。特に深刻なのは、自転車乗車中の死亡・重傷事故において、約4分の3にあたる約75%に自転車側の法令違反が認められている点です。この数字は、ルールの遵守が徹底されていれば救えたはずの命が数多く存在することを意味しています。
自転車は環境負荷が低く利便性の高い移動手段として推奨される一方で、加害者として重大な結果を招く「車両」としての側面が改めて注目されています。通勤や通学、買い物、フードデリバリーなどあらゆる場面で使われる自転車に対し、適切な法的責任を課すことが社会的に求められるようになりました。
青切符の対象者は16歳以上
青切符制度の対象となるのは、16歳以上の自転車運転者です。この年齢は原動機付自転車の免許取得が可能になる年齢であり、義務教育を修了して交通ルールへの理解度が一定水準に達していると見なされることが根拠となっています。
16歳未満の場合は青切符の対象外となり、従来どおり警察官による現場での指導や警告が中心です。地域によっては「自転車安全指導カード」が交付され、保護者に対して家庭での指導を促す仕組みが運用されます。ただし、反則金の対象外であっても事故を起こした場合の民事上の損害賠償責任は免除されず、監督義務者である保護者が責任を負うことになります。
なお、多くの方が気になるであろう自動車の運転免許への影響ですが、自転車の青切符による違反は自動車運転免許の点数制度には影響しません。自転車の違反には点数制度が存在しないため、反則金を納付しても免許の点数が加算されたり、ゴールド免許がブルー免許に変わったりすることはありません。
自転車の青切符における反則金の金額詳細
自転車の青切符で最も関心が高いのは、具体的にいくら支払うことになるのかという点です。青切符の対象となる違反行為は113種類に及びますが、反則金は違反の危険性に応じて3,000円から12,000円の範囲で設定されています。ここでは主要な違反行為とその金額を詳しく解説します。
携帯電話使用等(ながらスマホ)の反則金は12,000円
全違反行為の中で最も高額な反則金が設定されているのが、ながらスマホです。自転車を運転中にスマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機などを保持して通話したり、画面を注視したりする行為が対象となります。
片手でスマホを操作する行為はブレーキ操作の遅れや片手運転によるバランス崩壊を招き、画面の注視は前方不注意を引き起こします。歩行者の飛び出しや信号の変化に気づくのが遅れ、死亡事故に直結する極めて危険な行為です。
12,000円という金額は原動機付自転車の反則金と同等の水準であり、他の一般的な自転車違反の倍額に設定されています。さらに、スマホ操作によって実際に交通の危険を生じさせた場合は青切符ではなく赤切符の対象となり、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という刑事罰が科されます。
信号無視の反則金は6,000円
赤信号を無視して交差点や横断歩道に進入する行為には、6,000円の反則金が課されます。
注意が必要なのは、「歩行者・自転車専用」の信号機がある場合です。車道の信号が青であっても、自転車専用信号が赤であれば停止しなければなりません。点滅信号や黄色信号での無理な進入も取締りの対象となり得ます。交差点における出会い頭の衝突事故は自転車事故の中でも致死率が高い類型であり、基本的なルール違反として6,000円が設定されています。
通行区分違反(右側通行・逆走)の反則金は6,000円
道路交通法上、自転車は「軽車両」に分類されるため、車道の左側端を通行する義務があります。車道の右側を通行する「逆走」に対しては、6,000円の反則金が課されます。
自動車のドライバーから見て、右側から逆走してくる自転車は発見が遅れやすく、正面衝突のリスクが大幅に上がります。自転車同士の正面衝突の原因にもなるため、重大事故を防止する観点から6,000円が設定されています。路側帯を通行する場合も、道路の左側にある路側帯を通行しなければなりません。
歩道通行違反の反則金は6,000円
自転車は原則として車道を通行しますが、標識で許可されている場合や、運転者が13歳未満・70歳以上の場合、車道の通行が著しく危険な場合に限り、例外的に歩道を通行できます。その場合でも歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければなりません。歩行者の進行を妨げる場合は一時停止する義務もあります。
歩行者をベルで威嚇して退かせたり、歩行者の間を縫ってスラローム走行したり、猛スピードで歩道を走り抜ける行為は明確な違反であり、6,000円の反則金が課されます。
一時不停止の反則金は5,000円
「止まれ」の標識や赤色の点滅信号がある場所で、停止線の手前で一時停止しない行為には5,000円の反則金が課されます。ここでの「停止」とはタイヤの回転が完全に止まることを指し、減速してゆっくり進む「徐行」では一時停止として認められません。足を地面につけるなどして確実に停止する動作が求められます。
無灯火の反則金は5,000円
日没後やトンネル内、濃霧の中などで前照灯や尾灯を点灯せずに走行する行為には、5,000円の反則金が課されます。ライトは自分が前方を確認するためだけでなく、自動車や歩行者に自転車の存在を知らせる重要な役割を担っています。前照灯の装備は必須であり、無灯火の自転車は発見遅れによる重大事故を招く危険性があります。
制動装置不良(ブレーキなし・整備不良)の反則金は5,000円
ブレーキが装備されていない自転車や、ブレーキが故障して効かない状態で公道を運転する行為には5,000円の反則金が課されます。道路交通法では前輪と後輪の両方にブレーキを備えることが義務付けられており、片方のみの場合やブレーキパッドが摩耗して制動力が著しく低下している場合も対象となります。
傘差し運転・イヤホン使用等の反則金は5,000円
各都道府県の公安委員会が定める遵守事項に違反する行為にも、5,000円の反則金が課されます。代表的なものとしては、雨天時に傘を差して片手で運転する「傘差し運転」や、音楽を大音量で聴いて周囲の音が聞こえない状態で運転する「イヤホン・ヘッドホン使用」があります。これらはいずれも安全な運転操作を妨げる要因です。
二人乗り・並進禁止違反の反則金は3,000円
運転者以外の者を乗せる二人乗りや、「並進可」の標識がない場所で2台以上が横に並んで走行する並進には、3,000円の反則金が課されます。ただし、16歳以上の運転者が幼児用座席に小学校就学前の幼児を乗せる場合など、法令で認められた例外は対象外です。
主要な違反行為と反則金額の一覧
| 違反行為 | 反則金額 |
|---|---|
| 携帯電話使用等(ながらスマホ) | 12,000円 |
| 信号無視 | 6,000円 |
| 通行区分違反(右側通行・逆走) | 6,000円 |
| 歩道通行違反(徐行義務違反等) | 6,000円 |
| 指定場所一時不停止 | 5,000円 |
| 無灯火 | 5,000円 |
| 制動装置不良(ブレーキなし等) | 5,000円 |
| 傘差し・イヤホン等(公安委員会遵守事項違反) | 5,000円 |
| 二人乗り・並進禁止違反 | 3,000円 |
青切符の交付から反則金納付までの流れ
青切符を交付された場合の手続きの流れについて、現場でのやり取りから納付完了まで時系列で解説します。
現場での告知と青切符の交付
警察官が違反を目撃すると、その場で自転車を停止させます。違反の事実が告げられた後、運転免許証やマイナンバーカード、学生証などによる身分確認が行われます。違反者が事実を認めると、警察官はその場で「交通反則告知書(青切符)」と「納付書」を作成し交付します。
反則金の仮納付は原則7日以内
交付された納付書を使い、原則として青切符交付日の翌日から7日以内に反則金を支払います。2026年の制度開始時点では銀行や郵便局の窓口での納付が基本とされており、将来的にはコンビニエンスストアやキャッシュレス決済への対応も期待されています。この期間内に全額を納付すれば、警察署や裁判所に出頭する必要はなく、前科もつかず手続きは完了します。
期限を過ぎた場合の対応
7日間の納付期限を過ぎると手元の納付書は無効になり、各都道府県警察の「交通反則通告センター」への出頭が求められます。通告センターで改めて事実確認を受け、新しい納付書で反則金を納めます。この際、通告書の送付費用が加算される場合もあります。通告を受けた日の翌日から10日以内に納付すれば刑事手続きには移行しません。
納付を拒否した場合は刑事手続きへ移行
それでもなお納付しない場合や、当初から違反の事実を否認した場合は、行政手続きから刑事手続きへと切り替わります。事件は検察庁へ送致され、起訴されれば裁判を経て罰金刑が科されます。この場合の罰金は反則金とは異なり、「前科」として記録に残ることになります。
青切符では済まない赤切符対象の重大違反
すべての違反が反則金で処理されるわけではありません。悪質性や危険性が極めて高い違反は、従来どおり赤切符が適用されます。
酒酔い運転は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、酒気帯び運転は呼気中アルコール濃度0.15mg/L以上で3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。2024年11月の改正道路交通法により、自転車の酒気帯び運転にも罰則が新設されました。自転車を提供した人や酒類を提供した店、同乗者にも罰則が及びます。
他車の通行を妨害する目的で行うあおり運転(妨害運転)も赤切符の対象です。執拗にベルを鳴らす行為、急な進路変更、急ブレーキ、車間距離を極端に詰める行為などが該当します。
また、信号無視や一時不停止といった本来は青切符で処理される違反であっても、その結果として交通事故を引き起こした場合は原則として青切符の適用外となり、過失傷害罪や重過失致死傷罪などの刑事責任が問われます。
違反を繰り返すと自転車運転者講習の対象に
反則金を納付すればそれで終わりではなく、違反を繰り返す運転者には「自転車運転者講習」の受講命令が下されます。
2026年の改正以降は、青切符の対象となる違反も講習の受講要件にカウントされるようになります。具体的には、3年以内に2回以上反則行為や危険行為で検挙された場合、都道府県公安委員会から受講命令が出されます。
講習は3時間にわたり、交通ルールの再確認や危険予測の学習、ディスカッション、筆記テストなどが実施されます。手数料は約6,000円で、受講命令に従わなかった場合は5万円以下の罰金という刑事罰が科されます。つまり反則金に加えて講習手数料と3時間の拘束が発生するため、常習的な違反者に対する抑止力が大幅に強化される仕組みです。
青切符制度が社会に与える影響
自転車の青切符制度は、個人の利用者だけでなくビジネスや教育現場にも大きな影響を与えます。
都市部で不可欠なインフラとなったフードデリバリーサービスにとって、配送効率を優先するあまり散見される信号無視や逆走、ながらスマホは、制度導入後即座にコストとなります。ながらスマホ一発で12,000円という金額は、配達員にとって数時間分の稼ぎが失われる水準です。事業者には配達員への法令遵守の教育が急務となっています。
通勤・通学の場面では、朝の時間帯に起きやすい逆走や歩道の高速走行が6,000円の反則金対象となります。16歳以上の高校生も対象であるため、違反した場合の反則金を誰が負担するのかという家庭内の教育的課題も浮上します。学校現場でも「事故に遭わないための指導」から「法を犯さないための実践的指導」へと交通安全教育の質的転換が求められています。
自転車通勤を認めている企業にとっても、業務中に従業員が青切符を受けた場合の使用者責任やレピュテーションリスクを考慮し、就業規則の見直しやヘルメット着用の義務付け、自転車損害賠償責任保険への加入確認といった対策が必要です。
近年普及が進む電動キックボード(特定小型原動機付自転車)にはすでに反則金制度が適用されています。今回の自転車への導入により、歩道や路側帯を行き交う免許不要の二輪車すべてに包括的な法的網がかかることになり、モビリティ全体を通じた交通秩序の標準化が進みます。
取り締まりが重点的に行われる場所と時間帯
青切符制度の導入にあたって気になるのが、実際にどこで、いつ取り締まりが行われるのかという点です。
各都道府県の警察は、自転車関連事故が実際に発生している、あるいは発生の恐れがある地区や路線を「自転車指導啓発重点地区・路線」として個別に指定しています。具体的には、駅周辺や大型商業施設の周辺、学校の通学路、交通量の多い幹線道路との交差点付近などが対象となるケースが多く、重点地区の情報は都道府県警察のウェブサイトや地域の広報紙などで公表されています。
時間帯については、自転車関連の事故が午前8時前後と午後5時前後に多く発生していることから、朝の通勤・通学時間帯と日没前後の薄暗い時間帯を中心に重点的な指導取締りが実施される見通しです。特に15歳から19歳の死亡・重傷事故は午前7時から8時、午後4時から5時に集中しており、高校生の通学時間帯における取り締まり強化が予想されます。
なお、青切符の交付方針としては、警察官の指導警告に従わず違反行為を継続した場合や、違反行為によって通行車両や歩行者に具体的な危険を生じさせた場合に交付されるとされています。重大事故につながる可能性が高い違反や、悪質性・危険性の高い違反については、特に厳しい対応がとられます。
まとめとして2026年4月の施行に向けて準備すべきこと
2026年4月1日から施行される自転車の青切符制度は、日本の交通社会における大きな転換点です。これまで「少しぐらいなら」「みんなやっているから」と許容されてきた自転車の危険運転に対し、明確なペナルティが科されることになります。
最も大切なのは、「車道が原則、左側を通行」「交差点での信号遵守と一時停止」「夜間のライト点灯」「飲酒運転の禁止」「ヘルメットの着用」という自転車安全利用五則を日常的に実践することです。これらを遵守していれば、青切符を受けることはありません。
罰金が怖いから守るのではなく、なぜ右側通行が危険なのか、なぜ一時停止が必要なのかという理由を理解することで、自然と安全な行動が身につきます。また、万が一事故を起こした際の民事賠償は億単位になることもあるため、自転車保険への加入も忘れずに検討してください。2026年4月の施行を前に、自転車のハンドルを握る責任の重さを改めて認識し、安全で快適な交通社会を築いていくことが求められています。

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